表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端の白球使い  作者: R.D
探し物
407/674

黒い正義の分析

 冬休みに入り、私たちは珍しく、部活以外の用事で集まっていた。


 駅前の、ファミレス。


 他愛のない会話が飛び交う中ふと、あかねさんが、思い出したように切り出した。


 その表情にはまだ、あの日の怒りと、そして困惑が浮かんでいる。


「…それにしても、やっぱり、信じられないよ!あのれいかさんって!なんであんなに、偉そうなの!?『卓球を辞めてくれたら、クラスの中心に引き立ててあげる』だなんて、何様のつもりなんだろう…!」


 そのあかねさんの純粋な怒りに、部長もまた腕を組み、力強く頷いた。


「ああ!思い出しただけで腹が立ってくるぜ!あんな上から目線の提案、よくできたもんだ!」


 だがそんな二人の反応とは、対照的に私と未来さんは、やはり、というように静かだった。


 私は、ただ黙って、シェイクのストローをかき混ぜている。


 未来さんは静かに、紅茶を一口含み、そしてゆっくりと口を開いた。


 それはまるで、難解な詰め将棋を解説する、棋士のような、落ち着き払った口調だった。


「…おそらく、青木れいかさん、という人間は」


 未来さんのその言葉に、部長とあかねさんが、彼女の方へと、向き直る。


「彼女がいる世界…つまり、教室というコミュニティにおいて、絶対的な中心人物なのでしょう。いわゆるクラスのリーダー、という、ものです。」


「そして特に、中学生という、多感な時期は、時に、分は何でもできるという、ある種の万能感を抱いてしまいがちです。世界は、自分の思い通りに、動くものだと信じてしまう」


 未来さんの、諦観も混じった、その冷静で、そして的確な解説。


「その彼女の完璧な世界に、突如現れたのが、しおりさんという『異端者』です。彼女の理解を超え、そして自分の思い通りにならない、コントロール不能な『異物』。だから彼女は、それを排除しようとした。 あるいは、自分の管理下に置くことで『正そう』とした。彼女の中では、それは純粋な、正義の行動だったのでしょうね」


 そのあまりにも的確な分析に、部長とあかねさんは、言葉を失っていた。


「…なるほどな。自分こそが正義のヒーローだと、本気で、思ってやがったのか、あいつは」


 部長が、呆れたように、呟く。


 私は、シェイクを飲みながら、静かに頷いた。


 あかねさんが、心配そうに、私を見る。


「でも、そんなのおかしいよ!しおりちゃんは、何も悪いこと、してないのに…!」


「ええ。ですが、彼女の世界では、彼女のルールこそが、絶対なのです」


 私は、静かに答える。


「そして、そのルールから外れた異物は、全て排除されるべき悪となる。…それだけのことです」


 私の、そのあまりにも冷静な言葉に、その場の空気が、少しだけ、重くなる。


 だが、部長がその、空気を断ち切るように、バン!と、テーブルを、叩いた。


「…まあ、理屈は、どうでもいい!要は、だ!しおりには俺たちが、ついてる!あいつが何を、しようが、俺たちが全員で、しおりを守る!それだけだろ!」


 そのあまりにも、単純明快でそして、力強い宣言。


 それに対し私と、未来さんとあかねさんは、顔を見合わせ、そして同時にふふっ、と、笑ってしまった。


 そうだ。


 それで、いいのだ。


 どんな複雑な悪意も、この単純で、そして温かい、光の、前では、きっと、意味を、なさないのだから。


 私たちの、戦いは、まだ、終わらない。


 でも、もう、一人じゃない。


 全国大会の直前、私たちは、静かな一体感を味わっていた。

本日も、最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。


 本日のお話は、あまり共感が得にくいものと思います、しかし、私なりに中学生のいじめの本質を紐解いた結果、れいかさんのような、歪んだ正義感が生まれるのかなと思いました。彼女たちは、悪いことをしているとは思っていないのです。中学生の彼女たちの世界は、教室が大きなウェイトをしめると思うのです。


 もしよろしければ、ページ下の[☆☆☆☆☆評価]や[ブックマーク]で、そっと応援の気持ちを伝えていただけると、この物語を続ける大きな、大きな力になります。


改めて、読みにくいお話を、お読みいただきありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ