再戦(5)
サーブ権が、再び、私へと、移る。
私の、本当の「実験」は、いつだって、劣勢、あるいは、膠着状態から、始まる。
静かに、私は、次の作戦を、思考する。
(…もう一度、試すのが最善か。)
私は、天高くに、ボールを、トスし、そして、強い回転を、かけるかのような、大きなテイクバックから、サーブを、放った。
その、視覚的な、情報量に、桜選手の、集中が、一瞬、乱れる。わかっていても反応してしまう、ミスディレクションのモーション
私が、そこから、繰り出したのは、超低空ナックルロングサーブ。
弾丸のような、早さの、そのサーブは、彼女の、バックサイド深くに、突き刺さった。
桜選手は、それでも、驚異的な、反応速度で、なんとか、反応するも、その、回転のない、ナックルボールを、持ち上げることが、できず、彼女の、ドライブは、台の下を、無情にも、通っていった。
静寂 7 - 4 青木
私の、サーブ二本目。
私は、もう一度、天高くに、ボールを、上げ、大袈裟な、テイクバックを取る。
桜選手の、思考が、再び、迷路に、迷い込む。
私が、放ったのは、そのどちらでもない。
強烈な、下回転の、ショートサーブ。
なんとか、食らいつく、青木。彼女は、ツッツキで、その、サーブを、返球してきた。
そこから、短い、台上の、やり取りが、始まる。
そして、六球目。青木が放った、ストップが、ほんの、わずかに、甘く、なった、その、瞬間。
私は、その、ボールに、踏み込み、ラケットを、アンチラバーで、相手の、逆サイドに、強引に、叩きつけるように、フリックした!
ボールは、予測不能な、軌道を描き、追い付けなかった、青木の、横を、すり抜けていく。
静寂 8 - 4 青木
ダブルスコア、私の、静かな、そして、残酷なまでの、支配は、まだ続く
サーブ権が、彼女へと移る。
彼女は、深く、息を吸い込み、そして、心を落ち着ける、彼女の瞳には爆発するような闘志が、見える。
彼女が、放ったのは、これまでの、短い、サーブとは、全く、異なる、横回転の、ロングサーブ。
それは、私を、台から、下げさせ、そして、長い、ドライブの、打ち合いへと、引きずり込む、という、明確な、意志表示。
やはり、こちらが一番困る選択肢を迫ってくる。
…相手の土俵で勝てば、流れを、大きく、引き寄せられる
私は、その挑発に乗る。
彼女の、サーブを、私もまた、力強い、ドライブで、返す。
そこから、凄まじい、ラリーの、応酬が、始まった。
彼女は、左右に、私を、揺さぶって、私の、体力を、奪う作戦だ。
私は左右に揺さぶられながら、ドライブで左右に揺さぶる。
青木のスピードを、重視したドライブと、私の、コントロールを重視する、ドライブ。
フォアへ、バックへ、と、強烈な、ボールが、何度も、何度も、私を、襲う。
一進一退の、攻防。
しかし、長い、ラリーの末、最後に、その、打ち合いを、制したのは、やはり、体力で勝る、青木だった。
私の、返球が、僅かに、ネットを、越えなかった。
静寂 8 - 5 青木
青木選手の、二本目のサーブ。
彼女は、もう一度、同じ展開から、得点を、狙う。
同じ、ロングサーブ。
私は、そのドライブの打ち合いで、相手の心を折るのを、諦めた。
私は、その、サーブに対し、今度は、台から、一歩、下がる。
そして、カットマンの如く、ボールを、返していく。
私の、アンチと、裏ソフトから、繰り出される、変化の、迷路。
桜選手は、その、私の、戦術変更に、一瞬、戸惑いながらも、それでも、強引に、ドライブを、叩き込んできた。
そして、ラリーの、七球目。
彼女は、意趣返しのように、奇策として、台上で、止まる、ストップを、放った!
私の、得意な、戦術を、模倣することで、私の、思考を、乱そうという、意図。
だが。
青木が、ラケットに、ボールを、捉えたその瞬間、私は、一気に前に出て、そして、その、甘くなった、ストップボールに、バックハンドスマッシュをお見舞いする!
ボールは、彼女の、反応すら、許さず、コートに、突き刺さった。
静寂 9 - 5 青木
パワーでは私は勝てない。
奇策ではあなたは勝てない。
後二点、第一セットはら今まさに、最終局面を、迎えようとしていた。
いつも『異端の白球使い』を読んでいただき、本当にありがとうございます!
皆様にお知らせしなければならないことがあります。不覚にも、作者がコロナに罹患してしまいました…。
熱意は十分にあるのですが、万全の状態で面白い物語をお届けするためにも、今は治療と休養に専念させていただきたく思います。
そのため、今後の更新がしばらくの間、不定期になるか、数日間お休みさせていただくかもしれません。
しおりと青木の再戦や、しおりの過去など、ここからの展開を書くのを私自身も楽しみにしています。必ず回復して戻ってまいりますので、どうか心配なさらずに、少しだけ待っていてくださると嬉しいです。
もしよろしければ、ブックマークで今後の更新をお待ちいただけると共に、ページ下の【☆☆☆☆☆】で作品の評価をしていただけると、回復後の執筆の大きな励みになります。
皆様も、どうかお体にお気をつけてお過ごしください。
R・D