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異端の白球使い  作者: R.D
ブロック大会編
343/674

再戦(3)

 


 静寂 4 - 2 青木


 ネットの向こう側で、青木桜が、初めて、その、完璧な、ポーカーフェイスを、信じられない、といった、驚愕の、表情に、歪ませていた。


 私の「実験」は、まだ、始まったばかりだった。


 サーブ権は、私。


 私は、ネットの向こう側で、静かに、しかし、その、瞳の奥に、強い、警戒の色を、浮かべる、桜選手を、冷静に、観察する。


(…あなたの、思考は、今「次の奇策は何か」という、一点に、集中している。ならば、その、裏を、かく)


 私は、再びあの大袈裟な、テイクバックの、モーションから、しかし、今度は、強烈な下回転をかけた、ショートサーブを、放った。


 青木選手は、その、サーブに対し、今度は、完璧に、対応してきた。彼女は、短い、ツッツキで、ボールを、返球する。


 ここから、台上での、テクニカルな、やり取りが、始まった。


 私が、ナックルで、止めれば、彼女は、それを、拾い上げる。


 私が、横回転を、かければ、彼女は、その、回転を、読み切る。


 一進一退。互いに、一歩も、譲らない。


 ラリーが続く、私の集中が切れかける、そんな中、放ったツッツキが、ほんの、コンマ数ミリ、甘く浮いた。


 その、一瞬の隙を、この相手が見逃すはずもなかった。


 甘いと見た彼女は、チキータで決めにくる、その軌道は、閃光のように走り、私のコートを、撃ち抜いた。


 紙一重で、この、ポイントを、制したのは、青木桜だった。


 静寂 4 - 3 青木


 私の、二本目のサーブ。

 

 ここでポイントを渡すわけなは行かない、イーブンになれば、相手も勢い付く。

 私はここで仕掛けることにした、彼女が、私を奇策使いだと信用している、その事を信じて。

 私のサーブ、天高くにボールを上げ、ハイトスサーブを、大袈裟な、テイクバックから、放つ。


 視覚的な、情報量を、最大化し、相手の、思考を、飽和させるための、セットアップ。


 私がそこから、放ったのは、強烈な、下回転の、ロングサーブだった。

 相手の土俵にのり、やってこいの、挑発ともとれる合図。


 桜選手は、そのサーブを、力強い、ドライブで、打ち返す。


 そして、ここから、私は、正々堂々、相手の土俵に、乗る。


 ドライブの、応酬。


 私が、トップスピンを、かけた、ループドライブを、放てば、彼女もそれを、上回る回転量で、返してくる。


 私が、サイドスピンを、かけた、カーブドライブを、放てば、彼女は、その、軌道を、完璧に、読み切り、カウンターを、合わせてくる。


「パァンッ!」「バァンッ!」


 壮絶な、打ち合い。


 そして、ラリーが、数回、続いた、その時。


 私は、仕掛けた。


 ドライブを放つ、直前、私はそのボールの回転量を意図的に弱くし、軌道を、ほんのわずかに、ナックルドライブのように、フラットな、ものへと、変化させた。

 看破されれば、間違いなく失点する奇策。


(…さあ、どうしますか、青木桜。私を信用して、ナックルと見るか、信用せずにドライブと見るか、…結果は見えているが。)


 案の定、青木は、私の奇策を信用し、ナックルドライブに見えた、ボールを、ナックルだと、決めうって、スマッシュを、放つ。


 彼女の、ラケットは、回転を、かけずに、ボールを、叩き潰すための、完璧な、角度。


 しかし、私のボールは、下回転ドライブ。その、ボールは、台を、大きく、オーバーする。


 静寂 5 - 3 青木


 ネットの向こう側で、青木桜が、僅かに驚いている。


 彼女の、その、完璧な卓球は、私の、相手すらも利用する奇策の前に、その、前提すらも、破壊されようとしていた。


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