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異端の白球使い  作者: R.D
ブロック大会編
337/674

決意

「今度こそ、完勝してあげますよ」


 私の、その、一点の、感情も、ない、しかし、絶対的な、勝利への、意志だけが、込められた、言葉。


 私の言葉は、冷たい、鋭利な言葉。


 それを、聞いた、仲間たちは、それぞれの、表情で、私の、その覚悟を、受け止めていた。


 私たちは、全員で、トーナメント表が、張り出されている、壁から離れ私たちの、控え場所である、観客席の、一角へと、戻った。


 そこからの、時間は、静かだった。


 だが、それは、これまでの、休憩時間とは、全く、質の違う、静寂。


 誰もが、口には、出さない。だが、その、胸の内で、これから、始まる、二つの、大きな、戦いに、向けて、精神を、研ぎ澄ませているのが、肌で、感じられた。


 部長は、黙々と、ストレッチを、繰り返している。その、表情は、いつになく、真剣だ。


 あかねさんは、その、隣で、新しい、ドリンクを、用意したり、タオルを、畳んだり、マネージャーとしての、仕事に、集中することで、自らの、緊張を、紛らわしているようだった。


 葵は、私の、隣に、座り、ただ、じっと、私の、顔を、見つめている。その、瞳には、強い、祈りのような、色が、宿っていた。


 私は、ラケットケースから、ラケットを、取り出し、ラバーの、表面を、丁寧に、磨き始める。


 思考を、クリアにするための、儀式。


 その、静寂を、破ったのは、私の、向かいに、座り、タブレット端末を、操作していた、未来さんの、静かな、声だった。


「…皆さん」


 彼女の、その、声に、私たちは、一斉に、顔を、上げた。


 未来さんは、その、深淵のような、瞳で、私と、部長を、交互に見つめ、そして、事実だけを、淡々と、告げた。


「この、今から、始まる、第四回戦。これを、突破すれば、次が、決勝となります」


 彼女は、そこで、一度言葉を、切り、そして、続けた。


「…つまり、あと、二回、勝てば…。この、ブロック大会を、突破し、いよいよ、全国大会、です。」


 全国大会。


 その、言葉の、響きに、その場の、空気が、ぐっと、密度を、増した。


「ぜ、全国…!」


 あかねさんが、息をのむ。その、瞳が、信じられない、といった、輝きと、そして、極度の、緊張で、潤んでいる。


「しおりなら、部長さんなら、絶対、行ける…!」


 葵が、祈るように、拳を、強く、握りしめた。


 そして、部長は。


 彼は、それまで、続けていた、ストレッチを、ぴたりと、止め、そして、ニヤリと、あの、不敵な、笑みを、浮かべた。


「…はっ!上等じゃねえか!面白くなってきたな!」


 その、声には、プレッシャーなど、微塵も、感じさせない、絶対的な、自信が、満ちあふれていた。


 私は、そんな、仲間たちの、様子を、冷静に、観測していた。


 そして、ゆっくりと、顔を、上げ、未来さんの、瞳を、真っ直ぐに、見つめ返した。


 私の、口から、こぼれたのは、たった、一言。


 しかし、その、一言には、私の、今の、全ての、意志が、込められていた。


「…全員なぎ倒すだけです…、…そして、行きましょう。全国へ。」


 その、言葉を、合図に、私たちの、本当の、戦いが、始まろうとしていた。

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