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異端の白球使い  作者: R.D
ブロック大会編
332/674

部長VSサウスポー(2)

 もう、この試合、俺が、負ける、気は、しなかった。


 俺の、サーブ。


 俺は、再び、葵の、情報通り、空知の、バックサイドを、徹底的に、攻める。


 サーブで、バックを、突き、そして、返ってきた、ボールを、さらに、ドライブで、バックへと、叩き込む!


 空知は、その、俺の、執拗なまでの、バック攻めに、完全に、防戦一方だ。


 そして、最後は、彼の、ブロックが、甘くなったところを、俺が、フォアハンドで、叩き込み、ポイントを、連取する。


 猛 5 - 1 空知


(よしっ!このまま、一気に、押し切る!)


 俺は、そう、確信した。


 だが、空知は、強豪、北園中学の、三年生。


 このまま、黙って、やられるような、タマじゃ、なかった。


 サーブ権が、空知に移る。


 彼は、ここに来て、初めて、戦術を、大きく、変えてきた。


 彼が、放ったのは、俺の、フォアサイドを、大きく、横に、切る、ワイドな、サーブ。


 俺に、バック側を、攻めさせない、という、明確な、意志。


 俺は、そのサーブに、飛びつき、ドライブで、応戦する。


 ラリーが、始まる。


 その、瞬間だった。


 空知が、待ってましたとばかりに、その、体勢から、あの、フォアハンドでの、カーブドライブを、放ってきたのだ!


「なっ…!?」


 ボールは、普通の、ドライブとは、全く、違う、軌道を描く。


 俺の、目の前で、ボールが、まるで、生きているかのように、ぐにゅり、と、外側へと、逃げていく。


 俺の、ラケットは、その、予測不能な、変化に、対応できず、空を、切った。


 猛 5 - 2 空知


(…これか、葵の、言っていた、いやらしい、カーブドライブってのは…!)


 その、厄介さは、一度、受ければ、分かる。


 頭では、分かっていても、体が、反応できない。


 俺の、得意な、パワープレーが、あの、独特の、軌道の、前に、完全に、無力化される。


 空知は、その、一点を、きっかけに、息を、吹き返した。


 彼は、徹底して、俺を、フォアサイドに、集め、そして、得意の、カーブドライブで、ポイントを、重ねていく。


 猛 5 - 4 空知


 まずい。


 完全に、相手の、ペースだ。


 葵の、情報は、もはや、通用しない。


 しおりから、学んだ、「緩急」も、この、速い、ラリーの中では、使う、隙がない。


(…どうする。このままじゃ、このセット、持って行かれるぞ…!)


 俺が、焦り始めた、その時。


 ベンチの、あかねの、声が、聞こえた。


「部長先輩!自分の、卓球を、信じて!」


(…俺の、卓球…)


 そうだ。


 俺の、卓球は、なんだ。


 しおりのような、頭脳か?葵のような、分析力か?


 違う。


 俺の、武器は、ただ、一つ。


 誰にも、負けない、この、パワーだ!


 俺は、吹っ切れた。


 次の、ラリー。


 空知が、またしても、カーブドライブを、放ってくる。


 俺は、もう、その、変化に、惑わされない。


 コースを、読むんじゃない。


 変化する、その、さらに、根元を、その、上から、パワーで、叩き潰す!


 俺は、一歩、前に、踏み込み、そして、これまでの、どの、一球よりも、速く、そして、重い、カウンタードライブを、叩き込んだ!


 ボールは、曲がる、暇すら、与えられず、一直線に、相手コートへと、突き刺さった。


「なっ…!?」


 今度は、空知が、驚愕する番だった。


 そうだ。


 小手先の、戦術じゃねえ。


 俺は、俺の、王道で、お前の、その、ひねくれた、ボールを、ねじ伏せる!


 そこからは、再び、俺の、ペースだった。


 俺は、もう、迷わない。


 ただ、ひたすらに、パワーで、押す。


 俺の、その、圧倒的な、パワーの、前に、空知の、カーブドライブも、次第に、その、精度を、失っていった。


 そして、最後は、俺の、渾身の、スマッシュが、彼の、コートに、突き刺さり、第一セットは、終わった。


 俺は、拳を、強く、握りしめた。


 苦しい、戦いだった。


 だが、その分、勝利の、味は、格別だった。

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