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異端の白球使い  作者: R.D
県大会 男子決勝

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147/694

追い付き引き離され

  セットカウント 部長 0 - 0 朝倉


  部長 6 - 6 朝倉


 サーブ、部長(1本目)部長視点。


 まだだ!まだ、このゲーム、諦めるわけにはいかねえんだよ!


 ベンチのあかねの笑顔と、観客席のしおりの静かな眼差しが、俺に力をくれる。


 この決勝戦、絶対に勝つ!


 サーブ権は俺。スコアは6-6。


 ここからが、本当の正念場だ。


 俺は集中力を高め、ネット際に短く、そして横回転を僅かに加えたショートサーブを、朝倉のフォアサイドへと送り込んだ。


 しおりが言っていた、「時には、相手の意表を突く短いストップや、コースを変えるループドライブを織り交ぜる」という言葉が、頭の中で繰り返される。


 朝倉はそのサーブに対し、冷静にそして低い体勢から、鋭いツッツキで俺のバックサイド深くに返球してきた。


 そのボールは、まるで台の上を滑るかのように、低く、そして速い。


 ここから、息詰まるような、細かい台上の技術の応酬が始まる。


 俺も朝倉も、ツッツキやストップで相手を揺さぶり、甘いボールが来たらすかさずフリックやドライブで攻める。


 一球一球に、ものすごい集中力と神経が使われているのが、自分でも分かる。


 そのギリギリの攻防の中で、俺のツッツキが、ほんのわずかに、本当に紙一重、台から高く浮いてしまった。


「ちっ!」


 俺はミスを認めてカウンターに備える。


 だが朝倉は、鋭いフォアハンドで、俺のフォアサイドを打ち抜いた!


 俺はその鋭いドライブに、カウンターのタイミングを逃してしまう。


 部長 6 - 7 朝倉


 くそっ…!今の、完全に俺のミスだ…!


「まだこれからだよ、部長先輩…!」


 後ろから、俺を後押ししてくれる、声援が聞こえる。


 そうだ、まだだ。まだ取り返せる。


 続く俺のサーブ2本目。


 俺はもう一度、同じようなショートサーブを、今度は少しだけ回転を変え、朝倉のバックサイドへと送り込んだ。再び台上の細かい捌き合いを仕掛けるように見せかける。


 朝倉は、それを警戒し、先ほどと同じように鋭いツッツキで、俺のフォアサイドへと返球してきた。


 …来た!誘い込んだぜ!


 俺は、そのツッツキで返ってきたボールに対し、体を素早く反応させ、そして、コンパクトながらも全身のバネを使った、渾身のバックハンドドライブを、朝倉のフォアサイド、オープンスペースへと叩き込んだ!


 それは、しおりが時折見せる、あの意表を突くバックハンドの強打。俺も練習で何度も見て、そして自分なりに取り入れようとしてきた技だ!


 ボールは、朝倉の反応も虚しく、コートの隅に深々と突き刺さった。


 部長 7 - 7 朝倉


「おらあああ!!」


 俺は、力強く拳を握りしめる。追いついた!


 ベンチのあかねが、嬉しそうに飛び跳ねているのが見えた。


 観客席のしおりも、ほんの少しだけ、口元が緩んだような気がした。


 サーブ権は朝倉へ


 ここからが、本当の勝負だ。


 あいつの、あのいやらしい横下回転サーブ。


 しおりも、あれを警戒しろと言っていた。


 朝倉は静かに構え、そしてやはり、俺のフォアサイドのネット際に短く、そして強烈な横下回転がかかったあの得意のショートサーブを放ってきた。


 …来ることは分かってる!だが、それでも、あの回転は…!


 俺は、そのサーブに対し、懸命にラケットを合わせようとする。


 しかし、ボールの回転が強烈すぎて、ラケットの面から滑るようにして、ネットにかかってしまった…。


 部長 7 - 8 朝倉


 くそっ…!やはり、あのサーブは一筋縄じゃいかねえ…!


 だが、俺は諦めない。次のポイントだ。


 続く朝倉のサーブ2本目。


 朝倉は再び同じような、しかし今度はほんの少しだけコースを変え、俺のミドル寄りに、あの横下回転ショートサーブを送り込んできた。


 俺は今度こそ、その回転とコースを読み切り、体を鋭く台に入れ、フォアハンドで強烈なドライブを、朝倉のバックサイドへと叩き込んだ!


 これが、俺の四球目攻撃への布石!


 朝倉は、その鋭い攻撃に対し、驚くほどの反応速度で対応し、バックハンドでカット性のブロックで受ける。


 ボールは、回転を殺され、しかし高く、俺のフォアサイドへと返ってくる。


 想定とは違うが絶好のチャンスボール!


 …もらった!


 俺はそのボールに対し、体を大きく使い、渾身のフォアハンドドライブを朝倉のバックサイド、オープンスペースへと叩き込んだ!完璧な四球目攻撃!


 ボールは、朝倉の反応も虚しく、コートに深々と突き刺さった!


 部長 8 - 8 朝倉


 再び同点!


 この決勝戦、まさに魂と魂のぶつかり合い。どちらも一歩も譲らない、壮絶な戦いだ!


 俺の心臓は、激しく高鳴っていた。


 しかし不思議と恐怖はない。


 ただ、この強敵と戦えることへの喜び、そして仲間たちの応援を力に変えて、絶対に勝つという、強い意志だけが、そこにあった。

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