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異端の白球使い  作者: R.D
決勝
146/674

男子決勝(5)

  部長 4 - 5 朝倉

「よっしゃあああああ!!」

 さっきの長い長いラリーを制した部長先輩の雄叫びが、まだ私の耳に熱く残ってる!1-5っていう絶望的な点差から、ここまで追い上げてきたんだ。部長先輩の諦めない心、本当にすごい!観客席のしおりも、きっと今の部長先輩の戦いぶりに、何かを感じてるはずだ。

 ベンチから見守る私も、祈るような気持ちで部長先輩の背中を見つめる。彼の額からは滝のような汗が流れていて、肩で大きく息をしているのが分かる。でも、その瞳の奥の炎は、少しも衰えていない。

 部長先輩の二本目のサーブ

 彼は、大きく息を吸い込み、そして、力を込めて…あれ?いつものパワーサーブじゃない。

 ふわりとした、回転の少ない、まるで置きにいくような、すごく緩いショートサーブを、朝倉選手のフォアサイド、ネット際に落とした!

 えっ!?しおりがよく使う、あの相手のタイミングを外すような…!

 朝倉選手も、一瞬だけ「え?」って顔をしたのが分かった。でも、さすがは常勝学園のエース。すぐに体勢を立て直し、その緩いサーブに対して、得意のチキータで、強引に攻めてきた!

 まるで、得意技を使わせられる、挑発にも似たサーブに、真っ向から立ち向かうように!

 鋭い横上回転のかかったボールが、部長先輩のバックサイドを襲う!

 でも、部長先輩は、そのチキータを、まるで待っていたかのように、冷静にラケットを合わせた。強打じゃない。ラケットの角度を巧みに変えて、ボールの威力を殺し、そして、朝倉選手のフォア前に、ポトリと落とすような、絶妙なブロック!

 それは、まさに泥臭い、でもすごくクレバーなプレイ!

 朝倉選手は、自分の強打が簡単にブロックされ、しかもあんな嫌なところに返ってきたことに、少しだけ苛立ったような表情を見せた。彼は、慌てて前に踏み込んでそのボールを拾おうとしたけど、体勢が崩れていて、返球はネットを越えなかった!

 部長 5 - 5 朝倉

「やったぁぁぁーーー!!」

 思わず叫んじゃった!すごい、部長先輩!今の、本当にすごかった!しおりのアドバイスを、そしてしおりの卓球を、ちゃんと自分のものにしてる!

 部長先輩も、力強くガッツポーズ!

 サーブ権は朝倉選手へ。

 さっきまでの朝倉選手の、あの絶対的な自信に満ちた雰囲気が、ほんの少しだけ揺らいでる気がする。心なしか、彼が出すサーブのコースも、ほんの少しだけ甘くなったような…。

 その、ほんのわずかな隙を、部長先輩は見逃さなかった!

 朝倉選手のサーブに対し、部長先輩は、再び体を鋭く台に入れ込み、フォアハンドで、強烈なチキータレシーブを、朝倉選手のバックサイドへと叩き込んだのだ!

 部長 6 - 5 朝倉

 ついに逆転!会場のボルテージが一気に上がる!

(いける!このまま、部長先輩なら、きっと…!)

 続く朝倉選手のサーブ2本目。

 今度は、さっきまでの緩いサーブとは打って変わって、台上で鋭く曲がりながら沈むような、すごくきつい下回転のかかったショートサーブ!

 部長先輩は、その変化に一瞬対応が遅れた。なんとかツッツキで返そうとするけど、ボールの回転が強すぎて、ラケットの面から滑るようにして、ネットにかかってしまった…。

 部長 6 - 6 朝倉

(うぅ…やっぱり、朝倉選手も強い。簡単には流れを渡してくれない…。)

 そこからは、本当に息詰まるような、細かい台上の技術の応酬になった。

 お互いに短いサーブを出し合い、ツッツキやストップで相手を揺さぶり、甘いボールが来たらすかさずフリックやドライブで攻める。一球一球に、ものすごい集中力と神経が使われているのが、見てるこっちにも伝わってくる。

 その、ギリギリの攻防の中で、ほんのわずかなコースの読み違いや、ラケット角度のズレが、勝敗を分けてしまう。

 そして、その細かい台上の捌き合いを、朝倉選手が制した。

 部長先輩のツッツキが、ほんの少しだけ台から出てしまったところを、朝倉選手は見逃さずに、鋭いフォアハンドで打ち抜いたのだ。

 部長 6 - 7 朝倉

「まだこれからだよ、部長先輩…!」

 私の心臓は、もうバクバクしっぱなしだ。でも、部長先輩なら、しおりのアドバイスと、そして何よりも自分の力を信じて、この苦しい場面も絶対に乗り越えてくれるはずだから!

 私は、祈るような気持ちで、次のラリーを見守った。


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