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異端の白球使い  作者: R.D
県大会準決勝
114/674

熱血漢vs変化球(3)

 部長のサーブ2本目。

 彼は、先ほどのスマッシュの勢いをそのままに、再び強烈なトップスピンサーブを、今度は尾ヶ崎選手のフォアサイド深くへと叩き込んだ!しおりの「思い出せ」という言葉が、彼の迷いを断ち切ったかのようだ。

 尾ヶ崎選手は、そのサーブに対し、先ほどと同じように冷静なブロックで対応しようとする。しかし、部長のサーブのコースと回転が、先ほどとは微妙に異なっていた。尾ヶ崎選手のブロックは、僅かにネットを越えず、自身のコートに力なく落ちた。

 部長 2 - 4 尾ヶ崎

「よっしゃあ!」部長が小さくガッツポーズをする。

(…部長、冷静さを取り戻しつつある。そして、サーブのコースにも工夫が見られる。尾ヶ崎選手のブロックの癖を、無意識のうちに分析し始めているのかもしれない。)

 サーブ権は尾ヶ崎選手へ。

 ここから、まさに一進一退

 尾ヶ崎選手は、その独特のモーションから繰り出される、回転の読みにくいサーブ(時にはバックハンドから、時にはフォアハンドから、同じように見えるモーションで異なる回転をかけてくる)で部長を揺さぶる。そして、ラリーになれば、粘り強いブロックと、相手の力を利用した巧みなカウンター、そして時折見せる厳しいコースへの鋭い攻撃で、部長のパワープレイを巧みにいなしていく。

独特のバックサーブでエースを取ったかと思いきや、返す刀で部長が尾ヶ崎のブロックを読んで強烈な回り込みフォアドライブを放ち強引に点を奪う

 部長は、私のアドバイスを意識し始めたのか、力任せの攻撃だけでなく、時には回転量の多いループドライブで相手の体勢を崩し、時にはネット際に短いストップを混ぜて、尾ヶ崎選手の予測を外そうと試みる。

 尾ヶ崎選手もまた、その部長の変化に対応し、一進一退の攻防が続く。

 部長がループドライブからのスマッシュを決めれば、尾ヶ崎選手は、部長のストップを読んで鋭いカウンタープッシュを放つ。

 部長が仕掛けた粘り強いラリーの末、尾ヶ崎のブロックがアウトしたり、尾ヶ崎選手のサーブからの3球目攻撃が炸裂する

部長の気迫のフォアハンド連打でポイントを取れば、部長の強打を絶妙なブロックでネット際に落とす

 スコアは7-9、尾ヶ崎選手が2ポイントリード。第一ゲームの終盤、苦しい展開が続く。

 私は、ベンチから、部長の表情、そして尾ヶ崎選手の僅かな動きの変化を見逃すまいと、全神経を集中させる。

 サーブ権は部長。絶対に落とせない。

 部長は、汗を拭い、大きく息を吸い込んだ。そして、放ったのは、渾身の力を込めた、回転とスピードを両立させたロングサーブ!

 尾ヶ崎選手は、それをバックハンドで強引にドライブしてきたが、ボールはネットを大きく越え、オーバー!

 部長 8 - 9 尾ヶ崎

 続く部長のサーブ2本目。今度は、先ほどとは逆に、ネット際に短く、しかし強烈な下回転をかけたサーブ。

 尾ヶ崎選手は、それをツッツキで返すが、回転量が多く、ボールは少し浮き気味になる。

 そこを、部長は見逃さない!一歩踏み込み、フォアハンドで強烈なスマッシュを叩き込んだ!

 部長 9 - 9 尾ヶ崎

 ついに同点!体育館のボルテージが一気に上がる!

 ここからが、本当の勝負。どちらが先に、この均衡を破るのか。

 サーブ権は尾ヶ崎選手へ。

 彼は、静かに、そして深く息を吸い込み、集中力を高める。その瞳の奥に、このゲームを絶対に取るという、強い意志が宿っている。

 放たれたサーブは、これまでのどのサーブよりも鋭く、そして回転も複雑だった。部長は、なんとかそのサーブをレシーブするが、返球は甘くなる。

 尾ヶ崎選手は、そのチャンスボールに対し、フォアハンドで強烈なドライブを叩き込んできた!

 部長 9 - 10 尾ヶ崎 (ゲームポイント、尾ヶ崎)

(…まずい。ここでゲームポイントを取られたのは大きい。)

 私の分析が、警鐘を鳴らす。

 しかし、部長は諦めない。その瞳の奥の炎は、まだ消えていない。

 尾ヶ崎選手のサーブ2本目。

 緊張の一瞬。

 そして、放たれたサーブを、部長は、まるで何かに導かれるように、信じられないほどの反射神経で、バックハンドのチキータでレシーブエースを決めた!



__________________________

 …部長、今日は二球目攻撃の有効性を確認します。厳しいサーブを出していくので全てチキータでのカウンターをお願いします。



___________________________


 それは、しおりとの練習で、いやあるいは彼女の試合を見て、無意識のうちに彼の体に染み付いていたのかもしれない、まさに「異端」の一打!

 部長 10 - 10 尾ヶ崎

 デュース!!

 体育館の興奮は、まさに最高潮に達しようとしていた。

 この第一ゲーム、どちらが取るのか。全く予測できない、壮絶な戦いが続く。


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