表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢ですが、探偵業が天職でした ~皮肉と推理で人生逆転、ついでに世直しいたします!~  作者: 虹湖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/94

第39話 黒薔薇への宣戦布告と、次なる一手

『次はお前の番だ、詮索好きの小娘』


 黒薔薇と共に置かれていた脅迫状の、流麗ながらも冷酷な筆跡が、私たちの目の前で不気味な存在感を放っていた。執務室の空気は、まるで鉛のように重く、張り詰めている。


「まあ…! なんて卑劣なことを…!」

 セレナ嬢は、小さな扇で口元を覆い、恐怖と怒りにその美しい柳眉を震わせた。アンセル検事補も、固く握りしめた拳をテーブルに置き、「許しがたい脅迫だ! 我々は断じて、このような圧力に屈するわけにはいかない!」と、その声を怒りに染めている。ルークは、何も言わずに私の隣に立ち、その鋭い眼光は、部屋の隅々まで油断なく見渡していた。彼の全身から放たれる静かな闘志が、私にも伝わってくるようだ。


 私は――その黒薔薇のカードを、まるで汚らわしいものでも払いのけるかのようにテーブルの端へ叩きつけ、そして、不敵な笑みを浮かべてみせた。

「望むところよ」その声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。「これで、相手も私たちの存在をはっきりと認識し、宣戦布告してきたということね。むしろ、戦いやすくなったのではないかしら?」

 強がりかもしれない。けれど、母が遺した「希望の箱」と、そして何よりも、この頼れる仲間たちがいる限り、私は決して怯まない。


 そこへ、グスタフ騎士団長が厳しい表情で執務室へ入ってきた。彼は脅迫状を一瞥すると、深く顔をしかめた。

「…これは看過できんな。陛下にもご報告し、王宮内の警備体制をさらに強化させよう。フローレンス令嬢、貴女がたの身辺にも、近衛騎士団の者を数名、護衛としてつける」

「ありがとうございます、騎士団長」私は頭を下げた。彼の言葉には、以前のような単なる任務遂行の響きだけでなく、私たちへの明確な協力の意志が感じられた。国王陛下の特命が、彼の態度を少しずつ変えているのかもしれない。


 改めて、私たちは今後の対策を練り始めた。オルコット侯爵襲撃事件と、この脅迫状。間違いなく、「影の議会」による警告であり、私たちの動きを封じ込めようとする意思表示だ。

「相手がこれほど大胆な行動に出てきたということは」私は冷静に分析する。「私たちが手に入れた母様の報告書、そしてダドリー子爵の帳簿が、彼らにとってよほど都合の悪いものだという証拠でもあるわ」


「レイナ様、先ほどオルコット侯爵の襲撃現場で拾ったものです」

 ルークが、ハンカチに包んでいた小さな金属片――黒曜石のような黒い輝きを放つ、何かの装飾品の一部らしきものをテーブルの上に置いた。

「これは…犯人が落としたものかもしれませんわね」私はそれを指先でつまみ上げ、光にかざしてみる。「何かの紋章…あるいは、武器の一部かしら?」

「専門家に鑑定させれば、材質や由来など、何か分かるかもしれませんな」アンセルが真剣な表情で言う。


 その時、セレナが、何かを思い出したようにハッとした表情で口を開いた。

「オルコット侯爵様が出入りしていたという、『賢者の集い』…! 先ほど、現場で侯爵の側近の方々が、その集いの名前を囁き合っているのを、わたくし、確かに耳にいたしましたの!」

「なんですって!?」

「表向きは、高尚な学術研究を目的としたサークルのようですが、実際には、一部の特権階級の貴族たちが、夜な夜な秘密裏に集う、いささか怪しげな社交場だという噂も…もしかしたら、それが!」

(それよ、セレナ様!)

 私は膝を打った。社交界の噂話と侮っていたけれど、今の私たちにとっては、どんな些細な情報も重要な手がかりとなり得る。

「その『賢者の集い』こそが、『影の議会』のメンバーが密会するための、隠れ蓑の一つである可能性が極めて高いわ。次のターゲットは、そこね!」


 私たちの新たな目標が決まった。しかし、どうやってその秘密の集会に潜入し、情報を得るか…。

 皆が考えあぐねていると、セレナが、おずおずと、しかし決意を秘めた瞳で私を見つめて言った。

「あの…レイナ様。もし、その『賢者の集い』が、本当に社交の場としての体裁を保っているのでしたら…わたくし、アシュフォード家の名前を使えば、もしかしたら招待状を手に入れられるかもしれませんわ。もちろん、危険が伴うことは承知の上ですけれど…!」

「セレナ嬢! あなたがそのような危険な場所に潜入するなんて、あまりにも無謀です!」アンセルが、即座に反対の声を上げる。

「でも、他に方法が…」


 私は、セレナの申し出に少し驚きながらも、彼女の成長と勇気を嬉しく思った。

「ありがとう、セレナ様。その勇気は素晴らしいわ。でも、あなた一人を行かせるわけにはいかない」私はきっぱりと言った。「もし潜入するなら、私も一緒に行くわ。そして、万全の安全策を講じる。ルークには潜入時の護衛と脱出路の確保を、アンセル様には外部での待機と、万が一の際の法的介入をお願いすることになるでしょう」

 私の提案に、セレナはぱあっと顔を輝かせ、アンセルも(まだ心配そうではあったけれど)渋々ながら頷いた。


 こうして、私たちの次なる作戦は、「賢者の集い」への潜入と決まった。

 準備を進める間、私は母の報告書と、「希望の箱」から出てきたあの不思議な水晶石について、改めて考察を深めていた。

(この水晶石は、一体何なのかしら…母様は、これをどう使うつもりだったのだろう…? 「影の議会」の秘密を暴くための、何か特別な鍵となるもの…?)

 その輝きは、まるで母の遺志そのものが宿っているかのように、静かに、しかし力強く、私の手の中で脈打っているように感じられた。


「影の議会」からの脅迫にも怯まず、私たちは新たな戦いへと歩みを進める。母が残した謎と、この国の未来を賭けて。その先に待ち受けるものが何であれ、もう後戻りはできないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ