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アラクネさん家のヒモ男  作者: 花黒子
呪われた群島編
162/226

162話「ミミック島のダンジョン探索」


 ミミック島。別名ダンジョンの巣窟。町一つ分ほどしかない島内には50を超えるダンジョンがひしめき合っているらしい。島に海竜が5頭も来ると、半分以上のダンジョンの入り口が崩壊し機能不全に陥るとのこと。


「ただし、住民はダンジョンの奥に逃げ込めばいいので魔物への被害は少ないとのことです」

 島内を回ったアーリャが報告してくれた。

「ダンジョンに誘い込んで海竜を仕留められないのか?」

「入口が大きいダンジョンではそういう対応も可能だそうですが、海竜を仕留めても質の悪い魔石くらいしかこの島では役に立たないそうで、皮や肉は安く買いたたかれてしまうと酒場の店主が言っていました。島の住民のほとんどがミミックで、従業員や労働力として泥人形や職人のブラウニーなんかがチラホラいましたね」

「ダンジョン内に召喚罠を仕掛けているため、あらゆる種類の魔物を呼び出せると言ってましたけどね」

「召喚術でダンジョンの魔物を呼びよせてるってことか?」

「ええ。ただ、強い魔物を召喚するには魔力も資金力も必要だそうです」

「へぇ。じゃあ、やっぱり召喚される側はいろいろ条件を決められるんだな」

「そうですね。ちゃんと召喚する側との契約があるみたいです」

「その契約さえ結んでしまえば、俺はいつでも『奈落の遺跡』に行けるわけだろ? コタロー、召喚術を習得してくれ」

 リオは、俺とロサリオで『奈落の遺跡』に潜ったことを根に持っているらしい。一緒にレベル50を超えた仲だ。俺もリオがいた方が頼もしい。


「じゃあ、ミミック島のダンジョンに潜りながら、召喚術を調べるか」

「それってつまり……?」

「召喚された魔物を殴って聞き出そう大作戦だ」

 ロサリオが笑いながら言うと、ツアー参加者たちが呆れていた。

「どうせ倒されるのだから、召喚される方法くらい吐くだろう」

 リオも乗り気だ。


「俺は一応、近くにいるミミックに聞いてみることにする。教えてくれなかったら、まぁ……、うん、作戦は変えるけど……」

「それじゃあ、皆、それぞれ適当にダンジョンに入っていこうぜ。攻略が難しそうなら、宿に戻ること。明日準備をしてから、皆で行こう」

「海竜はどうするんです?」

 目的を逸脱している俺たちに、リイサが思い出させてくれた。

「海竜が出たら、ふん縛って逆鱗を掴みながら鳴かせよう。仲間が来たら、芋づる式に討伐していけばいいさ。今のお前たちなら大丈夫だ。この島にいる間にできるだけ多く魔物を倒し、レベルを上げてくれ。それが最終試験だ」

「「「了解」」」

「やりますかぁ!」

「やりましょう!」

 すでにレベル40を超えた彼らに、こちらから言うことはない。それぞれの方法で自分の能力を最大限活かししてほしい。


「コタローさんはどんな罠を持って行くんです?」

 リイサが重そうな荷物を背負って聞いてきた。

「罠の素材は基本、現地調達だよ。スコップとアラクネの糸を撚った紐とバールくらいかな」

「なるほど、そうか。私もそうしよう」

 リイサが宿のロッカーに荷物を半分詰め直していた。

「大丈夫。これまでの旅で起こったことと身につけたことを思い出せば、自然と自信がついてくるさ」

「そうですね」


 俺とリイサは宿を出て反対方向へ歩き出した。

 一番最初に目についたダンジョンに入ることは決めていた。あまり情報は入れたくない。せっかくなら冒険をしたい。


 ミミックの防具屋とアクセサリーショップの間に細い通路を見つけた。


「ここってもしかして……?」

 泥人形の店員にゴーレム族のジェスチャーで聞いてみた。

「ああ、ダンジョンの入り口だよ。よく見つけたなぁ」


 薄暗く通りを歩いている魔物のほとんどが見向きもしない。


「明りは持っているのかい?」

「松明を買ってきた方がいいですかね?」

「いや、このランプを持って行くといい。中に魔石を入れると明かりが灯る。魔物を倒した分だけ潜っていられるよ」

 泥人形の店員が何も入っていないランプを渡してきた。

「借りていいんですか?」

「ああ、吸血鬼なら最初の関門くらいは突破できるだろう」

「いや、自分は吸血鬼ではなく人間ですよ」

「本当か!? だったら……」

「待ってください。最初の関門も全部体験したいんで」

「そうか。なら何も言わない」

「ちなみに召喚術を学ぶ方法は知りませんか?」


 俺がそう聞くと、泥人形の店員は奥のミミックを呼んだ。


「この人間のお客さんが召喚術を学びたいそうです!」

 泥人形は普通に喋れるらしい。今まで俺の拙いジェスチャーに付き合ってくれていたのか。


「人間だって!? 何の魔物を召喚したいんだ? 魔王は無理だぞ」

 ミミックの店主が大きな口で答えてくれた。

「一緒に働いているスライムを召喚したいんですけど……」

「ああ、スライムぐらいなら、いくらでも召喚できる。でも、固有のスライムとなると契約をしないといけないぞ。あいつら手形もないから、そっちの方が難しいくらいだ。ハンコでも作ってやればいい」

 契約にハンコが必要なんて、やはり召喚術はちょっと面白そうだ。


「えっと、俺はこう見えて使役スキルを持っているんですけど、今、召喚されたスライムを使役してハンコを持たせれば、召喚契約が可能ってことですか?」

「ややこしいことを聞くなぁ。でも可能だ。スライムに知能が付くまで育て上げることができればの話だけどな」

 それは割と得意な方だと思うんだけど……。


「今、スライムを召喚させることってできます?」

「できるけど……、ダンジョンに入った方が早いぞ」

「なるほど、ありがとうございます!」


 俺はそう言って防具店とアクセサリーショップの間を通って、ダンジョンへと入った。

 入った瞬間に、ふわっとした膜のようなものを感じた。空気の湿度や温度が変わったようなので、ここからダンジョンだろう。


 中は真っ暗だ。魔石がないのでランプは使えないが、五感のスキルを上げて探索を開始する。通路には罠もたくさんあるようだ。足下を確認すれば罠も突破できる。すべて解除して、素材にさせてもらう。リネントラップという織物に描かれた魔法陣から、炎や氷の槍が飛び出す罠なんかもある。

 珍しいのでリュックに詰め込んでいった。

 

 通路を出て、広めの部屋に辿り着くと、ようやく魔物に遭遇した。血を吸う蝙蝠の魔物がさかさまの状態で天井にぶら下がっている。投げナイフですべて倒し、腹の中にある魔石を回収し、ランプの中に放り込む。


「これが最初の関門だったのかな……?」


 明かりが灯ると、眼鏡をかけたような模様の熊が通路を逃げていくのが見えた。


「あれが水先案内人かな?」

 メガネグマを追いかけて通路に進むと、壁からぬるっとスライムが次々と出てきた。スライムが嫌いなら、このまま抱き着かれて魔力切れを起こすかもしれないが、こちらはスライムの使役が目的だ。

 出てきたスライムをすべて使役して、先ほどの部屋に戻り蝙蝠の死体を食べさせる。戦ってもいないのでレベルは上がらないが、なかなか便利なスライム軍団を使役できたようだ。

 ランプの光でできた俺の影に隠れるように隊列を組ませ、隠密のスキルが発生しないか早速試してみる。


 水先案内人のメガネグマが戻ってきて、様子を見に来た。


「ああ、悪い悪い。今行くよ」


 どういう契約ができるのか楽しみだ。


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