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アラクネさん家のヒモ男  作者: 花黒子
呪われた群島編
145/226

145話「召喚術のヤバさに気づく」


「文化が混ざり合っているからか、島外から来た人間なのにこの町はめちゃくちゃ居心地がいいな」

「確かに……、文化は独特ですね」


 蜂蜜酒を買い込み、俺たちは集合場所の頂上へと向かった。アーリャたちも土産を買っていた。ようやくレベル上げツアーにも余裕が出てきたのかもしれない。実際、レベル30を超えて楽しい時期だ。


「でも青蛙仙人の事件、こんな山間の町でも話題になっていましたね」

「野生じゃなかったら、早々魔物同士の殺しって起きないんだな?」

「そりゃあそうですよ。文明がありますからね」

「酒蔵の人たちは皆、壺の魔物が犯人だって言ってたけど、あれって召喚術で潰したってこと?」

「そうですね。泥人形のジニーに恋をした壺魔人が、惚れ薬を開発した青蛙仙人に恨みを持って、召喚術を使って潰したんだって言ってましたね」

「そんなことできるの?」

「一応できますけど、召喚術を使う協力者が必要です」

「そうかぁ」


 魔物同士の殺しは、魔術や呪いもあるから、殺人事件よりも難しい。こっちの世界の常識にまだついていけていないと反省した。

 そもそも壺の魔物が壺魔人ということすら俺は知らなかった。

「でも、壺魔人が周囲の木々を折るくらい大きくなれるものなの?」

「酒蔵にあった樽や壺を見ていると、大きくはなれるんじゃないですか?」

 巨大な樽や壺もあったが、あれが魔物化するのだろうか。

「あの大きさの壺でも魔物になる?」

「可能性はなくはないと思います」

「でも、町で話題にはなるんじゃない?」

「確かに。そんな壺魔人の話は聞きませんでしたね」

「壺屋のところに行ってみます? ほらアルラウネの陶芸家がいるみたいですから」

「そうだな」


 ふと見上げれば大きな魔物の鳥が飛んでいた。あの鳥を召喚できるようになれば、島内も簡単に行き来できるだろう。いやそもそも召喚術で、どんな魔物も召喚できるのか。



「聞きたいことがあるんだけど、登りながら教えてくれるか?」

「構いませんよ」

「召喚術って中央の学校で知識としてしか学んでなかったんだけどさ、どんな魔物でも召喚できるようになるの?」

「ああ、信頼関係さえあれば、割と自由に出来ると思いますよ」

「種族の誰かじゃなくて魔物の個体を召喚できるの?」

「そうですね。条件を付ければ出来るはずです」

「それ、ヤバくないか? 俺がいつでもリオを召喚できるってことじゃない?」

「あ、本当ですね……」

「でも、一応呼ばれてるときに拒否は出来るはずですけどね」

「その場合って、声だけでも通じることはあるの?」

「ありますね」

「ええ!? 召喚術だったか……」


 電話は召喚術で再現可能だった。レベルとスキルのことばかり考えていたが、いよいよ発展のためのスキルを取る時が来たか……。


 俺はしばらくぼーっと先物取引所のことを考えながら、山を登り続けていた。

「大丈夫ですか?」

「いや、大丈夫……じゃないかもしれない。すまん」

 アラクネさんが情報局を作ってくれているが、基地局として使えるだろう。あとは決済方法を考えないと。約束手形くらいはあるだろうが、所有者の変更を考えるべきか。

 ブロックチェーンにおけるヤップ島の石貨の様な概念が伝わればいいのだが、難しいか。

 せっかく群島を巡っているのだから、どこかにあるかもしれない。分散型台帳の記録なんてあるのか。


「おう、ようやく来たか!?」

 山の頂上にはすでにリオ班もロサリオ班も到着して、昼食を食べていた。俺たちも買ってきたばかりの蜂蜜酒を出した。


「仕事中だぞ」

「そうなんだけどね。美味いからちょっとだけでも味見してみてくれないか」

「美味いな!」

 ロサリオはすでに飲んでいた。


「とりあえず、情報を共有しておこう。何か進捗はあるか?」

「あります。谷底の町に行ったんですけど、青蛙仙人のことは知っている魔物たちは知っているみたいで、壺魔人を召喚したんじゃないかと言う意見が多かったです」

「酒樽は大きいですし、発酵用の壺は大きい物がありました。それが魔物になったという情報はなかったのですが、可能性としては捨てきれないかと」

 ハピーとアーリャが報告していた。


「そうか。召喚術か。こちらは死霊術だった。大きな樹木の魔物を復活させることによって、潰せるのではないかというドルイドの木こりが言っていた。死霊であれば勝手に消えるしな」

「空間魔法でワープしてきたというフロッグマンもいたよ。まぁ、空間魔法なんて使える魔法使いがいれば群島で話題になっているとは思うけど、この島にもトレントのヌシがいて、もしかしたら空間魔法を使えるかもしれないとのことだったよ」


 リオとロサリオも報告していた。


「コタローさんは何かあったんですか?」

 マーラが心配そうに俺を見た。

「コタローさんは山を登り始めてからずっとこの調子ですよ」

「ああ、すまん。召喚術について、召喚魔法でもいいんだけど、ちゃんと認識をしてなかったんだ。召喚術をもっとちゃんと学んだ方がよかったのかもしれない」

「どういうことだ?」

「召喚術でいつでもリオを召喚できるようになるのか?」

「ああ……、まぁ、俺にも拒否権はあるはずだが、出来なくはないんじゃないか。時間は決まっているがな」

「だったら、奈落の遺跡に入る時に呼び出せばいいんじゃないかと思って」

「非番の時ならいけるぞ! 時間は短いが……」

「いや、数刻でもいてくれれば、俺たちの連携が使えるからかなり進める」

「召喚術だったか……。どうやれば発生するんだ。だいぶスキルポイントは余っているぞ」

「次はそれだったか」

「どこまで召喚できるんだ? 例えば大きい荷物を持っていれば、物流とかも瞬間的に移動できるだろ?」

「わぁ、本当だ」

「でも、持てる範囲だとは思うぞ」

「金貨とか魔石は大量に移送できるってことじゃないか?」

「確かに……」

「もしも巨大な壺魔人なんか召喚できたら、中に品物を詰め込めばいいんだから、一気に物流自体が変わるぞ。商人という職業自体が危うくなる」

「え!? じゃあ、青蛙仙人を殺した犯人が島の外に出たら……」

「ああ、大惨事になるかもしれない。ただ、今のところ可能性の話でしかないけどね」

「田舎の島で魔物の爺さんが死んだだけじゃなかったか……」

「時代の節目が迫ってるのかもしれないな」


 その後、青蛙仙人殺しの犯人と共に召喚術スキルの発生について調べ始めた。


「召喚術って、どれくらい重要度が高いんですか?」

 イザヤクはまだよくわかっていないらしい。

 昼からはイザヤクとマーラが俺の班に来た。

「ちゃんと召喚できなくても、声だけ届けば、物流含めて災害時の救助とか、一斉に変わるかもしれない。今はアラクネの情報局があるけど、そのタイムラグがなくなるわけだから」

「知識もってことですか?」

 マーラも突然ブレイクスルーが起こると言われても実感がわかないだろう。


「そう。学校の授業とかも遠方からでも受けられるようになるし、大司祭を召喚できるようになったら、墓地の呪いとか一気に浄化できるかもしれなくなる」

「うわぁ、ヤバいですね」

「だろ? むしろなんで発達してないんだ?」

「思考の差異ですね。コタローさんのいた世界と違いますから発展の仕方が違うんじゃないですか」

「そうなんだけど……。人間と魔物は長く戦争をし過ぎたんだよ」


 俺たちはそんな会話をしながらアルラウネたちが住む山へと向かった。



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