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アラクネさん家のヒモ男  作者: 花黒子
呪われた群島編
144/226

144話「カエル島で暮らす魔物たち」


 翌日から、俺たちは重い物を捜索し始めた。そもそもどうやって青蛙仙人を潰したのかわからなければ、犯人に辿り着けない気がする。


 町のフロッグマンたちが参加する葬儀を見ても、俺たちに関係性はわからない。むしろ青蛙仙人に恨みを持つ者がいれば、衛兵たちが捜査をしているだろう。どちらにせよ犯行に使った物は見つけなければならない。


「何もない空間から物を取り出すってことはできるのか?」

「空間魔法の一種だろうけど、それは魔王クラスの魔物だけだ」

「コタローさんたちは出来ますか?」

 リイサは俺たちを魔王クラスだと思っているらしい。


「そういうスキルは取っていないね。でもあると便利だよな。アイテム袋」

「大きさ的にはアイテム袋にも入らなそうだな。ということはやっぱり召喚魔法じゃないか?」

 ロサリオは現実的だ。ロマンを追い求めた方がモテるはずだが、止めたのだろう。

「巨大化の薬ではないんですか?」

「巨大化の薬って本当にあるの? 骨まで一気に膨らむような薬で、その後、なんの後遺症もなく生きていられる魔物って……スライムくらいしか思い浮かばないけど……」

「それこそ植物系の魔物に聞いてみるしかないんじゃないか。彼らなら成長剤くらいは知っていてもおかしくはない」

「じゃあ、アルラウネやマンドラゴラに話を聞いてみるか」

「話せる魔物がいるといいけど……」


 俺たちは山に向かい、三又に分かれている山道をそれぞれ登り、昼過ぎには頂上で落ち合うことに。今日はハピーとアーリャと組む。


「翼を持つ魔物が落下したということは考えられませんか?」

 ハーピーのハピーは自分の翼を広げながら、山を登っている。飛べばいいじゃないかとも思うが、足を鍛えないと武器を振れなくなると言っていた。


「ありうるけど、事故だとしてもそんな魔物が現れたら誰かが気づくんじゃないか。あ、でもリオはそういう魔物か……」

「ロサリオさんも槍ではなくハンマーを持たせれば似たようなことができるのでは?」

 リオは竜だし、ロサリオのジャンプ力があれば、魔物をハンマーで潰せるかもしれない。

「コタローさんも罠でどうにか……」

「俺の場合は痕跡が残るよ。でも、案外、俺たちは容疑者なのかもな」


 山道を歩き続けていくと、キノコ型の家が見えてきた。


「マタンゴの集落です」

「マタンゴ? キノコの魔物?」

「ええ、菌類を育てるのが上手いので、薬学も盛んだと思いますよ」


 集落に行ってみると、確かに大きなキノコの魔物が服を着て歩いていた。麻酔薬用のキノコや酒に使う菌、廃棄された有機ゴミから油を作り出す菌などいろいろと育てているらしい。魔物のキノコ学は進んでいる。


「成長剤に使うようなキノコはないんですか?」

「それは物によるよ。結局、その個体にあった菌があるから、これさえ飲めばすぐに大きくなるというような菌はないね。でも、筋肉が付きやすくなるキノコはあるよ」

「へぇ……。見せてもらえます?」


 原木を見せてもらったら、ほとんどキクラゲだった。タンパク質の含有量が多いのだろう。料理と麻痺薬のためにいくつかキノコを購入。捜査と言うよりも観光客になってしまった。


「ちなみに、大きくて重いものと聞いて何を思い浮かべますか?」

「さあ? なんだろうね。酒樽とかかな」

「浮遊植物とかは大きいね」

「植物が空を飛ぶんですか?」

「種は飛ぶだろ。大きい品種もあるから、昔、飛んできた浮遊植物の種が落ちて竜が死んだって逸話もあるくらいだ。でもそんな種があったら山のように大きな植物があるってことだ。見てみたいもんだね」


 マタンゴのキノコ農家と分かれ、再び山道を進み続けた。山道はいつの間にか下り坂になり、木々の隙間から海が見えた。


「こりゃあ、いい景色だね」

「山賊かなにかに付けられているみたいですけど、どうします?」

 アーリャが後ろから来る魔物に警戒していた。

「ただの行商人かもしれない。慌てずに武器だけすぐ抜けるようにして、休憩しよう」

「了解」

 焚火をして先ほど買ったキノコでスープを作る。調味料は塩と山椒。山椒は山で採ったものだ。ついでにアーリャが持っていたトウガラシ袋のトウガラシも入れる。トウガラシ袋は逃走用に携帯していた。


 俺たちの後ろから来きたのは、フロッグマンの衛兵だった。


「旅の行商人か?」

「ええ、そうです。見聞を広めるために群島を回ってるんですが……。先日の青蛙仙人の依頼を請けて、遺体を発見した者です」

「ああ、君たちがそうなのか! あまり深入りしない方がいい。この島は呪われているから」

「そうなんですか?」

「ああ、山に入れば虫系の魔物が多いだろ。ここは蟲毒の本場さ。呪い過ぎて家財道具まで呪われて野生の魔物になってることもある。気を付けろよ」


 衛兵たちも青蛙仙人の事件を追って蜂蜜酒の酒樽を調べに行くらしい。事件を追っているのは俺たちだけじゃない。


「俺たちはあくまで酒場のレギュラーで、捜査協力するだけだな」

 衛兵たちを見送りながら、俺は辛めのキノコスープをすすった。

「私たちも衛兵ではあるんですけどね。地元の衛兵が捜査した方がフロッグマンたちも安心でしょう」

「ところで、あの衛兵が言ってたように、物質系の魔物を召喚すれば青蛙仙人の死因は特定できるんじゃないですか?」

「召喚した魔物は今、どこにいるんだ?」

「それは……」

「でも、それが一番可能性が高いかもな。せっかくだから蜂蜜酒も買いに行くか」

「その前にあの崖を見てください。吸血虫の魔物が、キノコ狩りをしているフロッグマンの婆さんを襲ってます」

 アーリャの言うように崖で籠を持った婆さんが、大型犬ほど大きな藪蚊の魔物に襲われていた。

「ああ、アーリャは婆さんを! ハピーは死体の回収を頼む」

「「はい!」」

 俺は投げナイフで蚊の腹を狙った。投げナイフを三本投げて、一本は羽に命中。ハピーがチェーンウィップで蚊の身体を粉砕していた。最初に見つけたアーリャも婆さんを保護していた。


「いやぁ、助かったよ。まさか吸血ガガンボに襲われると思ってなかった」

 婆さんは命拾いをしたとお礼を言っていた。あの大きな蚊の魔物は吸血ガガンボという名前らしい。


「もう虫が飛び回る時期も終わったと思ったけど、まだ暑い日が続くから気を付けなくちゃね」

「ええ、気を付けてください」

「あれ? あんた? 吸血鬼かと思ったら人間じゃないのかい?」

「そうですよ」

「いやぁ、本物の人間なんて私は初めて見たよ! エルフには20年くらい前に会ったことはあるんだけどね! どうしてこんな島に?」

「辺境の人間と魔物の町に住んでいるんですけど、見聞を広めるために群島に来ていて」

 レベル至上主義者にレベル上げツアーと言うと面倒なことになるので、なるべく言わないでおく。

「そうなのか? だったら、うちの酒蔵に寄って来ないかい? いい蜂蜜酒があるから」

「いいんですか。じゃあ、せっかくなので」


 カエル島には二つの山があるので谷間がある。

 谷底には交易村があり、フロッグマンやアルラウネが蜂蜜酒作りや木材加工などをしながら仲良く暮らしていた。


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