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夜明けと共に消ゆる  作者: 結城コウ
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逃げ出したはいいが


どこに向かえばいいのかわからない


廊下の角を曲がったところで


その角の装飾であるランプが高い音を上げて割れた


鉛玉が貫いたのだ


(今のはギリギリだった…!)



俺は振り返らず走り抜ける


「称お兄ちゃん!

待ってよ〜」


アリシアがいつもの口調で追ってくる


(待てと言われて誰が待つか!)


弾丸が俺の周囲に飛び交う


『く…!』


(走りながら撃ってるのか…!?

あんな華奢な体で!?

)


俺は後ろを振り向きたかったが、


それだけの勇気がなかった


(だけど…反動とか考えれば

走りながらなんか滅多に当たる訳無い…)


-バンッ-


(…よな…!?)


俺の左肩を弾丸が貫いた

『ぐッ…!!』


致命傷ではなかった


俺は立ち止まらず


そのまま走り抜けた


(数撃ちゃあたる、か…!

一体、どれだけ予備弾薬持ってんだよ…!!)


そのまま走り抜けると



ステンドグラスのある階段がある

大広間に出た


(しまった…!

ここでは…!!)


「鬼ごっこは終わりだよ

称お兄ちゃん…」


『く…!』


アリシアは引き金を引くと同時に俺は階段まで飛ぼうとした


が、


-バシュッ-


『ぐあッ…』


左足を弾丸が貫いた


「往生際が悪いね」


『ぐ…』


俺は左足を引きずる様に階段の影に隠れた


「称お兄ちゃん……せっかくだし聞かせてくれる?

どうして…私が殺したって解ったのかを…」


『…そう…だな…』


俺は階段がアリシアの死角になる位置まで動いた


『…まず…伯父さんの殺人だ

伯父さんの部屋に…入れる人間は限られてくる…


鍵を持っている詩都葉さんぐらいしか…正面からは無理だろう


鍵を…持ってない人間が伯父さんを尋ねる形で…正面から入っても


鍵を掛けられる…仕掛けか何かが無ければ不可能だ…


そして…あの部屋にはそういった仕掛けの類が見つからなかった…


て…事は、だ


伯父さんを殺せた人間は…


鍵を持っていた詩都葉さん


そして…


通気孔から入る事の出来る人間…


…俺達の中で出来るのは…アリシア…

かろうじて凜音ができるくらいだ』


「だから、私が殺した、と?」


『裏付けとしては…

まともに掃除出来ていない通気孔に

ホコリが拭き取られた痕跡があった


…誰かがそこを通ったなら…

服が汚れる…

それと、同時に通気孔のホコリも拭き取られる…』


「…へぇ…」


『…通気孔に

凶器に使った花瓶か何かをゴミ袋か何かに入れて

放置すれば

それだけで凶器は隠せる』


「やるね…」


『…君が疑われなかった理由は

"君みたいな少女"が…

と言うだけだ…

君を疑ってないなら

誰も通気孔なんて調べるとは思ってなかったからな…』


「じゃあ…称お兄ちゃんは疑ってたんだ…」


『…信じたくはなかった

けど…事実がそうだった…

仕方ない話だと思わないか…?』


「…それって動機と結果が逆転してない?」


『…かもな

でも…事実なのは変わりない』


「……ふふ、そうだね

じゃあ…隼人お兄様の時は?」


『……あれはよくあるトリックを用いたものだ

アリバイの無い人間が容疑者に持ち上がる

それに、君はあるミスを犯したから、な…』


「……ミス?」


『……あのトリックは…

簡単なものだ…

政哉さんが言ったように携帯を使ったトリックだ』


「…でも、ここは電波が届かないよ?」


『電波がなくったって

バイブレータが動けばいい…

マナーモードにでもして、

後は着信設定か何かでバイブレータを起動すればいい』


「……ふーん」


『…後は…俺達が部屋に踏み込んだ時、

携帯をすこしばかりいじればいい

だから、君はあの時、すぐに携帯を見つけた…フリをしたんだろ?』


「………うん、そうだよ」


『だが、逆にそれが俺の中の疑念を膨らませた

証拠の隠滅が疑惑の引き金に…皮肉だな…』


「……ははは!

その通りだ!」


『…凜音の時は誰にだって出来た

拳銃さえ、あれば…

考えるまでも無い……』


「……ありがとう

暇潰しくらいにはなったよ…」


-こつこつこつこつ…-


凜音が少しづつ歩みを進める


『理由…くらい…教えてくれないか…?

動機って…ヤツをさ…』


「……本当はさ…

お父様だけだった…

嫌いなのは……」


-こつこつこつ…-


『な……に……?!』


「…完全犯罪のやり方って知ってる?

本当の完全犯罪はね

完璧なトリックなんて必要無い…

要はバレなきゃいいんだよ…!」


-こつこつ…-


『!!

だから…皆を殺して…

その事実自体を…

事情を知る人間を全部…消す……つもり…だったのか…』


「……だから、そうなったんでしょ?」


-こつ…-


『…くッ…

じゃあ…なんで…伯父さんを…君は…』


「それは……ね」


アリシアは歩みを止めた

「この人のお陰…」


-バンッ-


アリシアの放った弾丸はステンドグラスを貫いた


『ジュリアさん…が…?』


「お父様はね…

私を"アリシア"として見なかった…

私に…"ジュリア"である事を強要したの!」


『え…』


「…それは…躾とか

そんなLevelじゃない…

異常だった…!!

仕草一つの事で怒鳴られ…時には殴られもした…!」


『……っ』


「……この前なんか

何て言ったか分かる?

『お前のせいでジュリアは死んだのだ!

だから、お前は…その償いをしなければならない!

ジュリアの様になれ!』

…だってさ…」


『……何だよ…それ…』


「…私のせいで母親が死んだ……ははは…実の娘に…面と向かって言える言葉…?

…始めから…ジュリアの居場所こそあれ…

アリシアの居場所なんてなかった…!

そんな状態で…どうやって生きていけと言うの…!!」


-バンバンバンッ-


ステンドグラスは穴だらけでボロボロだ


(…どうして…どうして…気付いてあげられなかったんだ…俺は…!!

じゃなきゃ…こんな事には…クソッ…クソォオッ!)


「…お喋りは…おしまいにしようか…」


いつのまにかアリシアが俺の前に居た


『くっ…!』


-カチンッ-


俺はとっさに後ろに飛びのいた


気が動転していた


後々、考えれば


腕力では俺のほうが上なのだ


そのまま押し倒しでもして


拳銃を奪えばよかったかもしれない


しかし、その時の俺は


拳銃と言う脅威の前に逃げる事しか


頭と身体が働かず


その方向へと動き出していた


-タンッ-


俺は階段の手摺りの上に乗った


乗ると同時に

その手摺りを蹴った


『うぁああああああッ!』


左足は悲鳴をあげたが


そのまま俺は跳躍して


ステンドグラスを



-バリィンッ-




突き破った




幸い、アリシアの行動により


脆くなっていたステンドグラスは


簡単に破れた




そして、俺は落下して行った…


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