春休み中に異世界に転生してくる。
異世界ものを書いてみようと思って。
私なりに真剣に書いたつもりです。
僕が高校二年生に進級した時に、同級生の友人が学校に来なくなった。
彼とは好きな漫画の話で何度か喋ったことがある。
一年生の時同じクラスになって、ある程度仲良くしていたと思う。
「俺、春休み中に異世界に転生するわ。」
コンビニ行ってくるみたいな軽い口調だった。
一年の終業式の帰り道の別れ際に、僕が彼の声を最後に聞いたのがそれだった。
僕が何か言う前にじゃあなって手を軽く上げて、歩いて行く後ろ姿がなんか格好よかった。彼は普段あまりふざけたことを言わない。
家に帰ってから自分の部屋で、彼が言っていた異世界について考えた。
あれって、自発的にするものだっけ?僕が知ってるのは大抵不本意ながらとか、偶然とかそういう勝手になっちゃうものなような気がする。
上手くつっこんであげられなくて悪かったなと。
そんなようなことを考えてその日は寝た。
二年生になってから二週間たっても彼の姿を見ることはなかった。
学校には彼の親が休学届を出したらしい。
家出をしたんじゃないかと噂になっていた。
「異世界はどう?てか学校来ないの?」
僕は彼にメールを送ってみた。
すぐ既読になり三分後には返事が返ってきた。
「とりあえず二つの街を魔物から救ったとこ。」
成功してるなら僕も安心だ。なら良かったと。
彼からまたメールが来る。
「魔物討伐は順調だけど、人間関係が大変。メンタルもたんわ。」
どこの世界も人間関係が難しいようだ。またメールするよと送ってから、僕はテスト勉強をすることにした。
僕が数学の公式を一つ理解する間に彼は世界を救っている。
それからも時々メールしていた。
夏が過ぎ秋が過ぎて、そろそろ冬が来たなという頃。
駅前の日焼けサロンから彼が出てくるところに遭遇した。
僕は久しぶりと声をかけると、こちらに気づいた彼も久しぶりだなと手を上げる。
「異世界行ってた雰囲気出すために日サロ行ってたんだ。とりあえず家まで送ってやるよ。」
駐輪場にとめてあるバイクを指さして彼が言う。
異世界の教習所で免許をとったらしい。
助かるよと言って後ろに乗せてもらった。
彼はその後高校に復学して無事卒業する。
留年した為、大学は僕と同じだったが一年後輩になった。
誰も彼が異世界を救ったことを知らない。
どうか怒らないで下さい。