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第4話 妹の想い

 お兄ちゃんから話を聞いた後、私は自室で独り考え事をしていた。


「お兄ちゃん、ほんとに幸せそうだったなあ」


 長年お兄ちゃんの相談に乗って来た身としても、妹としても喜びもひとしおだ。


 この3年間、琴ちゃんと恋仲になりたいお兄ちゃんの恋愛相談にずっと乗ってきた。本音は、「さっさと告白しろや二人とも」だったのだけど、さすがに言わないでおいた。というわけで、女の子的に良いファッション選びや、デートの時の気遣いの仕方、デートスポットなどなど、色々な事を助言してきた。彼氏が居たこともないのに、こんな事まで考える身にもなって欲しい。


 そして、お兄ちゃんが琴ちゃんを遊びに誘ったことは数え切れない程だけど、琴ちゃんがお兄ちゃんを誘ったことも数え切れないくらいある。思いつく限りで場所を上げてみると、遊園地、水族館、動物園、初詣で神社、博物館、美術館、などなど。これで、仲の良い友人止まりなんて、あるわけなかったのに、お互い臆病なんだから。


「ま、それも今日までか」


 しかも、明日から琴ちゃんが迎えに来ると来た。ちゃんと聞いては居ないけど、あの調子だと、他にも色々言ってそうだ。


 でも、告白してその日に、琴ちゃんからとはいえ、もうキスまでしているなんて少し驚きだ。これまで延々と、お互いに告白も出来ないでいたのに。誰かが背中を押してあげたのだろうか。そもそも、キスだけじゃなくて、もっと大胆なことをしたのかも。


 根拠はと言われるとお兄ちゃんのあの反応だ。心ここにあらずと感じで、にやけたりどこか遠くを見ているような表情をしたり、ところころ表情を変えていた。告白されただけであそこまでなるとは思えない。それに、お兄ちゃんは臆病ではあるけど、最後の一歩で勇気が出なかっただけで、別に脈がないと思ってたわけじゃないだろうし。


「琴ちゃん、一体、何したんだろう」


 琴ちゃんは昔から天然というか、夢見がちというか、ちょっと独特なところがある。女の子なんていうのは、中学生にもなれば、男子の前での顔と女子同士の間での顔を使い分ける事が多い。たとえば、ちょっと前まで普通に話していた男の子の陰口を言って盛り上がったり。琴ちゃんは良くも悪くも、そういうノリが理解できない方で、ことさら女子グループの間だからと合わせることがすくなかったように思う。


 そういう所が、「いい子ぶりやがって」とか一部女子に嫌われたりする原因にもなっていたりしたのだけど、反面、その裏表の無さを慕っている女子も多くいたように思う。私が知っているのは、中学に入ったばかりの1年間だけだけど。


 だから、普通の女の子ではいきなりやらないような何かをかましちゃったのじゃないだろうか、と思う。憶測だけど。


 そこで、ちょっとした悪戯心が湧いた。せっかく、ここまで相談に乗ったのだ。もうちょっと、出歯亀をしてもいいのではないだろうか、と。


「よし!」


 明日の朝、琴ちゃんが来るだろうから、色々聞いてみよう。恋愛経験がまだない私としても、二人がどんなことをするだろうかというのはちょっと興味がある。


 ずっと見守ってきたのだし、それくらいの約得はあってもいいよね。

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