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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
二年の春に

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ミチコとの決勝

 リベカもミチコも順調に勝ち上がってきた。準決勝はリベカと対戦することになる。二人用の秘密兵器は一つずつ。これがダメなら負けることは、もちろん覚悟している。


 いずれにしても、ボクシングと違い一ラウンドが長い。長びかせるほどに、体力不足の私。少しは改善したようだが、リベカの基礎体力とは雲泥の差。どんどん不利になっていく。


 いきなりラッシュをかける。リベカは、アレ? という感じで戸惑っているようだ。パンチで応じてくるが、私の意図をはかりかねているようで、いつものキレがない。体力があるうちで、素早さだけに限れば、私はリベカと互角の勝負が可能だろう。いずれにしても先手必勝。


 チャンス! カウンター覚悟で、思い切って、右ストレート。彼女も私を見ていて学んだのだろう、スウェー気味に躱す。後ろにステップした彼女の体重が引いた足にかかる。しめた!


 一瞬の隙をついて襟を掴んでの大外刈り。一本とはいかなかったが足は掛かった。要は、単なる足掛けになってしまった。大外「掛け」みたいな;; でも、片足立ちの彼女は、よっ、よっ、よっ……という感じでふらついてくれた。胸を合わせて、なけなしの全体重を預ける。


 リベカは、バランスを崩して尻餅をついた。柔道初心者がやる大外刈りといった具合だ。技のキレなんて全然ない。かなり情けない勝利だったが、ルールを上手く研究したということで勘弁してほしい。リベカも。


「ああ、やられたわ。この競技会のルールを研究しつくして、頭の勝利やな。おめでとう!」


 彼女を助け起こしながら二人はガッチリ握手した。


 決勝戦は、いよいよミチコとだ。ここまで来ると、私が虚を衝くことをお見通しだろう。彼女なら私がやってきそうなことは、だいたい想像がつくはずだ。もちろん、普通に戦って勝てる相手でもない。


 超トリッキーな必殺技をルツと練習していた。彼には土属性の防御魔法がある。上手く使ってもらって怪我をさせないようにしていたが、まともに決まれば、コレ、かなりヤバイ。


 競技会の規定で、防御魔法がかかっているので、できる技と言って良い。普通にやると首を骨折して死んでしまうことだってある。


 例によってミチコは装備も和風。着物と袴姿。凛々しい感じがカッコいい❤︎ って、そういうことを考えている場合ではない。今日は対戦相手なのだから。


 今までの相手と同じように、私を捕まえれば勝ちという点は彼女も承知している。襟を掴めないのは彼女にとって不利だが、超軽量の私をレスリング風に投げ飛ばすのは容易だろう。私は、他の対戦者と同様に距離をとりながら、ジャブで牽制する。


 少し、距離を稼いだのを確認して、私は、クルリと後ろを向いた。彼女に背中を見せる。ここでいきなりタックルされたら終わりだが、さすがの彼女も、私の意表を突く行動が理解できなかったのだろう。一瞬、攻撃が緩む。


 これも事前に許可を得ている。ここでちょっと魔法を。私はバク転の要領で大きく彼女を飛び越えた。よしバック取った! 彼女の腰に手を回して、ガッチリと両手を固定する。


 何をするのかですって? 決まってるでしょ。ジャーマン・スープレックスよ。ルツを相手には何度も成功していた。だから、彼より軽いミチコ、これで勝ったと思ったのだが。


 ありゃ。ミチコ、軽過ぎ!! 結果、固めたハズの腕がすっぽ抜けて彼女上方へ投げ飛ばしてしまった。いわゆる原爆投げになってしまう。彼女にとって想定外中の想定外だろうが、そこは、心身ともに鍛えているミチコ。冷静な判断で、猫のように空中で姿勢を立て直し、見事に着地してしまった。


 一方、彼女を抱き上げ、そのまま後ろへ落とすつもりで、思いっきり力を込めていた私は、完全にバランスを崩した。うわぁぁ〜。もう! 穴があったら入りたい。ドスン、と尻もちをついてしまい万事休す。


「うぉぉぉ〜」


 優勝したミチコに親衛隊が大声を上げる。前回より数を増やしたオタどもめ! 今回は、鉢巻、横断幕付きの大応援団となっていた。どうも、男の野太い声は癇に障る。うるさい! うるさいって!


 もう。どうせ負けるにしても、もうちょっと、キレイに負けたかった。リベカには勝ったけど、アレだって惨めったらしい勝ち方だ。本当に恥ずかしい。恥し過ぎる。だけど、アレ? 快勝では、どこか違った空気が会場を支配し出していた。


「ルナさん。ナイス、ファイトです!」


 あの、ナオミが大声を上げて手拍子をとる。敗者を称える拍手が会場に広がって行った。私は、数々のハンデを克服したと評価されたらしい。結果論だが、何か恐ろしい存在だと思われていた私が、自分の弱点を晒しながらも、乗り越えようとする姿を見せたということに、観客は感動してくれたのだろう。


 努力すれば、ちゃんと、それを理解してくれる人もいたのだ。一、二回戦で、完璧に勝った私に、みんなは恐怖しか感じなかった。そういうことだ。


「おみごと。もう少しでやられるところだったわ。ルツとの秘密の特訓ってコレだったのね」


「最後の最後で、この醜態。恥ずかしいけど。ま、これが私の限界かな」


「誇っていいわよ。体力のハンデを考えれば、とんでもない努力をしたのはよく分かる」


 手を貸されながら、ミチコとはそんな会話を交わした。また、ちょっと涙が出てきた。

 某少年誌の三大原則は、友情、努力、勝利らしい。さすがに、最後の一つは無理だったけど、私って、最初の二つは満たせた? なんだか嘘みたい。さすがに、プロレスの大技は、誰も知らなかったという点は、良かったんだけどなぁ〜。


 いずれにしても、実戦では応用不可能な練習をしていたと言えばそう。だけどね。貴方だってそうでしょ? 「人はパンのみにて生くるにあらず」。パン目的じゃない努力で、私は、貴重な何かを得た気がするわ。


 格闘技はキライではないですが、文字でバトルシーンを描くのは、かなり難しいです。明日は剣術なんですが、うーーん。今日から謝っておきます。ごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 94/94 ・ああこの駆け引き。自分、脳筋バトルばっかりで、勘が鈍ってる。  ありがとうございました。 [気になる点] そうか。完璧だとそれはそれで問題なのか。 [一言] バトルは難しい…
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