表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
男の娘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/187

葉っぱのペンダント

 さてさて。高価な買い物は終了。ちなみに、金貨何枚などと書いたけど、前世でよく観るアニメのように、袋にジャラジャラ金貨を詰めて持ち運んで、払ってる訳ではないわ。魔法のある世界でアレはないと思わない? 無用心極まりないじゃない。


 前に書いたように、ある程度以上のお金は、キャッシュではなく小切手支払いってわけ。先を見越してベルフラワーとしての「法人口座」は開設済みで、ミッション報酬などをストックしている。エドムとジャムの武器は、この口座から支払うことにしたということだ。


 最初は遠慮されたが、卒業後に居を構える際、各自から出資しようという、いわば出世払いで納得してもらった。彼らはああ見えて、失礼、大貴族の子弟。独立の際には、それなりの援助を受けられると思う。リベカの実家も裕福らしいし、実家からも出資してもらう前提だけど、卒業と同時にシェアハウスを買うくらいのことはできそうだ。


 ついでながらの蛇足だけど、報酬に関しては、もちろん所得税がかかる。一般的には、冒険者のように報酬を貰うタイプは源泉徴収、農家や商家は、年貢というか年末に確定申告する形だ。パーティを「法人化」したからといって、経費で落ちる、控除枠が広がるなどといった特典はないけどね。


 警察的な機能を含む兵士、冒険者など特定の職業以外、一般人の武装は、原則禁じられている。武器をぶらぶらさせて街を歩く訳にもいかない。例の縮小袋は、ちゃんと準備済み。エドムは、花・鳥、ジャムは、風・月、ルツがデュランダルを包んで背中に背負う。みんな、クリスマスプレゼントを貰った子供のように、目がキラキラ輝いている。


 なんだろう、人の表情を見て、幸せな気持ちになれる自分がいる。小春日和の天気のせいばかりではない。私の心もずいぶんと(ぬる)んで来ているようだ。


 お昼を少し回ってしまったが、市街地の露天商でB級グルメを探した。あった! ココレチ。ケバブをスパイスで炒め、温めたバゲットをさらに鉄板で焼き目をつけていただく。香ばしい香りがして美味しそうだが、私は遠慮した。


 私のわぁ〜。ミディエ・ドルマス。松の実、レーズン、玉ねぎを炒めを入れたご飯とムール貝! 海産物なら大丈夫。五つほど食べてしまった。別腹のジェラードを舐めながら、さらに王都をぶらぶらする。


 と、あ! あのアクセサリーの露天。一度っきりだったが、店主は上客だった私たちを覚えていたようだ。


「お、お嬢様方、また何か買っていってくださいな!」


 ああ、そうだ。みんなには、あげたけど。


「この、ハート型のもらえるかしら、それから、文字を書くペンを貸してくださいな」


 私は例によって身代わりの魔法を込めたペンダントを作った。


「ルツ、これ、今日の記念にあげるわ」


「えっ、師匠、いんですか?」


「うん。みんなには形は違うけど、同じ物プレゼントしてるから。貴方の分。身代わりのお守りよ」


「う、嬉いっす。一生の宝物にします」


「大袈裟ね」


「師匠のその葉っぱのも身代わりのですか?」


「いいえ。身代わりの呪文は、自分自身には有効ではないの。それに、呪文を書けるのは、闇属性魔法を持つ者だけ。これは、ただの飾りのペンダント」


「そうっすか。でも記念品っすよね」


「うん。一昨年、ミチコとリベカで王都に来た時のね」


 と言って、私はペンダントの裏を見せた。


「ああ、確かにイニシャルが。ああ、そうだ。お礼にもならない些細なことですが、僕たちに、イニシャルを加筆さてもらえませんか? 今日の記念に」


「いいこと言うね。ルツ、僕たちも書きたいな」とエドムとジャム。


「ありがとう。さりげない気遣い嬉しいわ。おじさん、もう一回、ペンを貸してもらえるかしら」


「はい、喜んで!」


 ということで、エドム、ジャム、ルツが私のペンダントにイニシャルを追加してくれた。M & R の下にE & J & Rと。次第に仲間が増えるって心が沸き立つ気がする。魔法としての意味はないが、この葉っぱの何気ないペンダントは、さらに嬉しい記念品となったように思う。


 各自、ウインドウショッピングを楽しみながら、どうでもいい雑談。ミチコに合理主義者と言われたけれど、意味のない会話の楽しさは、ちゃんと理解できる。


 今日は晴れた冬の日。平穏な日常。こんなに沢山の仲間と、こんな日々を過ごせるなんて夢にも思わなかった。今、私は幸せだ。また、目頭が熱くなってきたが、なんとか堪えることができた。そうだ。あのゼンの修行が少しは役にたっているのだろうか。

 ね。おかしいと思わない? 魔法があるのよ。帳簿だって遠隔で共有できてしかるべきじゃない? ここは中世はなくて中世風世界。それなりに、文明が進んでいるのに、銀行のない経済構造って変だと思う。税金もあって然るべきよね。だけど、この世界は優しい世界。悪代官の取り立てとかは、存在しないわ。もちろん、自警団も不要よ!


 冒頭でネタバレさせていますが、千年の時を生きなければならないルナ。学園〜冒険者の日々は彼女にとって貴重な、貴重な時間だったようです。


 ああ、それから、ちょっとだけイスタンブール名物書いておきました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 90/90 ・すっごくいい感じ。友情? 友情を感じます [気になる点] なんだろう。そ平和すぎてろそろ事件が起こりそうな? 謎の不安というか焦燥感というか… [一言] やっぱりド◯クエの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ