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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
男の娘

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兄弟の剣

 なんだかんだで、少々寝不足気味の金曜日だったが。ってそういうことよ! 五月蝿いわね。


 ルツとの約束の日。エドムとジャムの剣も選んだ方がいいだろう、ということになり、ベルフラワー五人とルツで王都へ出かけることにした。


 授業、実習が終わり、夕食を食べてからの夜。王都と学園間、そう遠くはないが、陸上交通機関があまり発達していないこの世界では、馬でほぼ一日。普通なら、買い物の日を含めて二泊三日となってしまう。


 だが、よいものができたようだ。深夜馬車。馬車という名前だが、動力は魔法だ。船舶用の装置を陸上に応用したUGV。学園での研究の一環として今年からテスト運用を開始した。


 安全のため、深夜、道路の片道を通行止めにして、学園と王都を結び、各種の実証(フィージビリティ)実験(スタディ)を行っている。


 十人乗りの馬車を改造した車体で、深夜に学園を発ち翌朝王都に到着する。テスト車両は、まだ、一台しかないので、隔日運行となっているが、私たちの計画なら問題ないだろう。


 深夜零時に学園を出て翌五時王都に到着。土曜のお昼にあ買い物を済ませて、また、これに乗って日曜朝に戻るというスケジュールだ。


 六人で馬車に乗り込んだ。御者がいるわけではなく、馬の代わりに駆動車が付いているという体だ。ボタンを押すだけで、予め設定された王都へ時速十キロでゆっくりと運んでくれる。


 速度が遅いのは、未だ検証中で安全に配慮したためだ。客室内には万一に備えて緊急停止ボタンと、さらに、駆動部だけを切り離す安全レバーも付いている。


「では。お気をつけて」


 学園の担当エンジニアがボタンを押すと、馬車はゆるゆると王都に向かって動き出した。乗客は私たちだけのようだ。


 低速でガタガタという馬車の規則正しい揺れは睡魔を誘う。隣に座ったミチコの肩にもたれて、うとうとしてしまったようだ。横にはなれないが、みんなも、適宜、睡眠をとっているのだろう。


「ほんと、この警戒心皆無の寝顔。可愛いけど、少し、不安になる時もある」


 夢の中? ミチコの声が遠くに聞こえる気がする。あっ! 気づくと夜が明けていた。


「ミチコ、聞こえていたわよ」


「あっ、ルナ、ヨダレ、ヨダレ」


「はっ! ああ、ひどい、嘘ついた」


「先輩方、やけるっす」


 ルツ。男の娘、というか、お化粧もミチコのアドバイスで完璧。喋らなければ、どこから見ても女の子だ。だから、その口調はやめたほうがいいんじゃない? とも思うが、彼は彼なりのポリシーがあるのだろう。


 早朝からやっているファストフード屋で、軽くサンドイッチを頬張って、まずは武器屋を探すことにした。さすが王都、専門街に多数の武器、防具屋が軒を並べている。見てみると和風? ひときわ目出つその店は、フヨウの文化を伝える武器屋なのかもしれない。


 わざとらしく、忍者装束を着たマネキンが店の前に立っている。若干の不安もあったが、ミチコと顔を見合わせつつ入ってみた。


「おお、いらっしゃいませ。あれ、そちらの方、フヨウの人だねぇ〜。懐かしいなぁ。まけとくよ」


 うーーん。調子の良すぎる店主だが、見渡せば、品揃えは確かなようだ。エドムとジャム用に、日本刀が欲しかったのだが、ちょうどいい刀身のものが見つかった。二刀流とする関係と、彼らの体格にも配慮してやや短めのもの。


 ユーロ連邦の標準で柄には護拳がついている。いわゆるサーベルタイプで、同じものが、ちょうど、四振りあった。オベロンと同じように、魔力を込めて切るタイプの剣だ。彼らの基礎魔力からすると、かなりの切れ味になるだろう。


「これ。いいんじゃない?」


「これは、これは、お目が高い。少々、値は張りますが。名刀といえる剣だと思いますよ」


 確かに、杢目肌の(にえ)が美しい。無銘だが、名工と呼ばれる人が鍛えた刀に違いない。


「金貨四枚で」


「安いなぁ〜。四振りセットでか?」


 このあたりのリベカのツッコミはさすがだ。


「ご、ご冗談を。一振りでございます」


「セット割りはあって然るべきじゃない?」


 ミチコも黙っていない。結局四振り、金貨十枚ということで決着した。円に換算すると約百万になるが、パレモ島ミッション報酬もあるし、何とかなる額と思われた。


「ルナさん、命名してください」と二人。


「私でいいの?」


「もちろんです! ミチコさん、リベカさんから聞いています」


「じゃぁ、ねぇ〜。四振りだから、花・鳥・風・月で」


 エドムの刀が花と鳥、ジャムのが風と月。私は心を込めて剣に語りかけた。


「いいこと。あなた方は、今日から、花・鳥・風・月!」


「いいなぁ〜 師匠、僕もお願いしますね!」


 ルツが話すと、店主が驚いたような顔をして彼を見つめていた。まぁ、いいんだけど。


 見た目と口調にギャップがありすぎという点ももちろんあるだろう。だが、この世界、特にユーロ連邦では、かつてのイギリスのように法令違反となることはないものの、まだまだ、トランスジェンダーや同性愛者への偏見は強いようだ。

 UGVは、Unmanned ground vehicleの略よ。無人運転の乗り物という意味ね。この世界、中世風には見えるけど、魔法のおかげて「IT」は21世紀並みといってもいいくらいよ。そこの君。分かった? 遅れてるぅ〜とか、バカにしないでよね!


 最後にちょっと書いたけど、男性の性行為を禁じる法律は紀元前からあるのよね。聖書の影響も大きいかもだけど、主に西洋でのソドミー法。撤廃は21世紀になってからという国もあり、これが元で、悲劇を生んだ歴史もあるわ。私が百合だから言うわけじゃないけど、愛の形、そして、自分がどうあるか?は人それぞれ。余計なお節介は不要だと思うわ。


 イギリスのソドミー法は、コンピューターの祖、チューリング先生の自殺の遠因になったとも言われています。中の人的には気になることなので、各所で書いてますが、この物語では初めてだと思います。多分。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 88/88 ・ヨダレw めっちゃ仲良さそうで、なによりです [気になる点] ルツさん乙女心がすごい。んで、声は……? [一言] 刀の見分けができない奴です。何か一言あるだけでめちゃくちゃ…
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