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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ジャンとの出会い

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ジャンの配慮

 皆が心配そうに私の顔を覗き込んでいるが、まずは、ジャンが口火を切った。


「ルナさん、ご無事で何よりです。いや。はや。最後、肝を冷やしましたが、作戦は完璧でしたね。私はこれから採掘隊の指揮がありますので、失礼しますが、また夜に」


「申しわけありません。とんだ不注意で心配をおかけしました」


「いえいえ。お気になさらずに。では、私はこれで、ひとまず」


 ジャンを見送って私たちは下山を開始した。降りる速度は速い。夕刻までには宿に戻れるだろう。


「いや。いいから。肩を貸してもらうくらいで十分だから。いいからって」


「いえいえ。今、倒れられたばかりで、また、炎天下を歩くのです。万一の場合がありますから」


 エドムとジャムが馬車のところまで、私を背負うと言って聞かない。彼らに嫌悪感はなく、男性だからという理由ではない。だが、私には、ちょっとオンブされたくない理由がある。ミチコに視線を送ると、もういいんじゃない? という顔をしている。


「じゃぁ。でも、びっくりして落とさないでよ」


と言って、私は、まず、エドムにおぶられた。


「えっ!!!」


 エドムが一瞬ふらつく。


「だから。気を付けてって」


「どうしたんや?」


「か、軽すぎるのです」


「え?」


「うん。多分、五キログラムくらい」


 ちなみに、この世界の度量衡はグラム、メートルだ。メートル法は、地球の大きさや重力から考えて、扱い易い普遍的な単位なのか、あるいはパラレルワールドとしての何かなのかは分からないが、私にとっては、とても計算しやすい。


 実は、人族の進化形としてのエルフは、外見はヒューマノイド型だが、筋肉も内臓も非常に特殊なもののようなのだ。さらにいえば、魔法的なもの、あるいは魔法を持った生物は、この世界「だけ」の存在ではないのではないか? という仮説がある。


 学園の書物にも記述があった。あくまで仮説、予想といった類だが、魔法の力が強ければ強いほど、その存在は、この世界ではなく神界内にあり、この世界で見えている実態は、一種のマンマシンインターフェスに過ぎないのではないか? という仮説だ。特に私のように魔力の強い者は、その存在実体が、ここではないどこかにいるのでは? ということだ。


 もちろん、いろんな理由、恥ずいから具体的に言わないわよ! で、ミチコは私が異常に軽いことを知っていた。また、「人ではない私」を知られるのが嫌だったのだが、パーティメンバーへの妙な隠し事はやめた方がいいのだろう。エドムはジャムと交代することもなく、リュックより軽い私を馬車のところまで運んでくれた。


 私は馬車に乗ると、安堵してしまったのだろう。気がつくと眠っていた。でね。起きると日は落ち、ないのだ。このあたり、夏の夜は八時くらいまで明るい。ああ、もちろん夏時間で八時よ。だが、日の光はずいぶんと弱まっており、私たちは無事、宿に戻ってきた。シャワーを浴び、少し休んだ後の、遅めの夕食。宿の食堂に五人が集合した。


 夕食までにジャンも宿に帰ってきており、同席してくれていた。採掘は徹夜で行われるようだが、経過が順調なところを見届けて、彼は宿に引き揚げたようだ。昼間の疲れで若干の倦怠感はあるものの、ほぼ回復した私は、旺盛な食欲でピザを頬張っていた。


「いや、ルナさん、体調が戻られたようで何よりです。回復されたようですので、一つお願いがありまして」


「私に?」


「ええ。ルナさんは剣術の名人と聞いております。一度、お手合わせいただきたく」


「なに、そんなこと? うん? 何か? 裏でもあるんじゃないの?」


「あらら。お顔に似合わないツッコミですねぇ〜。確かにありますよ。でも、今、ネタバレしたら、私の深謀遠慮が無になりますので」


「自分から深謀遠慮って言っちゃうヤツ! まぁ、いいけど。じゃ、貴方の(はかりごと)も気になるから明朝にでも」


「私は、いいですが、お疲れでは?」


「大丈夫よ。一瞬で片付けてあげるから」


「おお、怖い。その目で見ないでくださいよ」


 むぅ。もちろん、害意はないだろうが、確かに何か企んでいることだけは確かだ。ジャンは、剣の腕も立ちそうな気はするが、加速の技を使わない勝負ということか。うーーん。よく分からない。そもそも、私と立ち会う事に意味があるのだろうか?


 まぁ、明日になればはっきりする。今、あれこれ悩んでいても仕方ないだろう。今日はいろいろあって疲れてしまった。早めに寝るとしよう。

 体重が軽すぎることを気にする人は、あまりいないと思うけど、私の場合はちょっと常軌を逸してるわ。いかにも人外って感じがするから、恥ずかしいの。


 魔法的な存在ってなんなのかなぁ〜と。きっと、今、明らかになっている物理法則とは、違う何かなんだろうと思ったりします。


 西洋風ですので、この世界は全世界的に夏時間があります。本州に住んでいる中の人だけの感覚かもしれませんが、ヨーロッパは意外と北です。ローマ、ミュンヘン、ロンドンなどは北海道と同緯度だったりします。あくまで夏時間でということですが、夏至近辺の夜は九時近くまで明るくて、なんだか変な感じです。


・・・あ、それで、明日、意外な展開がっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 71/71 ・驚きの軽さ! まさかのリュックでしたか。自分でも持てそう←ドゴォ [気になる点] 単位を変える小説けっこうありますけど、上手い事機能してるのは2種類しか知りません。 んで、…
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