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春の競技会

 ということもあり、ミチコとの進展はなくとも時は流れる。


 暦は春を迎え、すでに五月となっていた。この時期は気候も暖かく、天候が安定するので、多くの学校では運動会シーズンとなっている。魔法学園でも春の競技大会が開幕される。二学年で生徒百人程度の学校だ。大会と言っても、そう大規模なものではない。


 二日に分けて開催され、一日目は魔法、弓術部門、二日目は剣術、体術部門となっており、出場しない競技は全て観戦できるようスケジュールされている。


 魔法と弓術が同じ日になっているのは、いずれも「標的に当てる」という競技であるためだ。リベカとミチコは体術で出場することになっている。私は、闇魔法で出場しようにも、弱体系のものしか使えないので、的当てという競技はちょっと難しい。ミチコの治癒、防御魔法も同様で、自分が最も得意とする分野で出場できるとも限らない。


 まずは初日、エドムとジャム。特例で二人一組で参加できるようだ。弓術と同じように、百メートルほど離れた五つの的に魔法を当てる競技が午前の部となる。彼らの火と同様に、氷、水、風、雷、土などの攻撃系魔法で、的を射抜けばよい。


 弓道と同じく内側から五つの同心円が描かれた的があり、内側から十、九、七、五、三、一点となる。的を外すのはもちろん、魔力が強過ぎて的を破壊してしまうと零点。魔力を小さく一点に収束させる技も要求される。さらに、エドムとジャム兄弟にとっては大きな問題点が。制限時間があるのだ。一分以内に全ての試技を終える必要がある。


 おそらく彼らはキャスト時間の三十秒を待って連射という技を使うことになるだろう。これは、今学期、彼らのテーマとなっていた。キャストを短くする代替策の一つとして、一気に魔力を放出して火炎放射するのではなく、小出しに連射する訓練を頑張っていたのだ。私も一つアドバイスしておいた。先月のことだ。


「あのね。魔法のエフェクトって分かるかしら?」


 前世のRPG知識から想像してみたら、その通りだったことが分かったので。やはり、この世界は、誰かの意志により操作されている気がする。操作というのは言い過ぎかもしれないが、何らかの意図をもって設計されている、もしくは、方向付けられている。そんな気がする。そしてその張本人はRPGを知っている。


 もうちょっと掘り下げると、因果関係が逆ということも考えられる。この世界を知る誰かが、私の前世に転生してRPGを創ったと。


 さらに。もっともっと壮大に考えるとね。宇宙さえも操れる悪魔なのよ。だったとしたら、私がこの世界に来ることを予期し、予め、私の前世にRPGというものを生み出させた。とかね。


「あなた方の魔法は火の線を描いて、飛んでいくように見えるわよね?」


「ええ」


「でも、あの線、触ってみても熱くないハズなの」


「小さな炎なら、すぐ作れるでしょ? 私に向かってでいいわ。魔法無効だから心配しないで。さあ、ジャムやってみて。エドムは火の線触ってみて」


「あっ!」


「でしょ。あれは、見えるけど、一種のイメージ。幻影。あなた方は、目標とする対象物の熱、私の言葉で言えばエントロピー、を上げているだけ。要は対象物を燃え上がらせているってこと。だから、的を意識して、それを燃え上がらせていると考えるとといいわ。そうすれば、的中率も魔法の制御も格段にやりやすくなるハズ」


 というか。魔法陣なども含めて魔法のエフェクトは、私たちは本当の「目」で見ているのかどうかも怪しいと思わない? 感じているだけ。脳に直接投影されたイメージなのかもしれないわ。


 ・・・そして、競技会。


 前述したように、魔法競技は弓道場で行われる。私たちは、矢道の横、矢取道の向かい側に設けられた観客席から観戦することになる。攻撃魔法自慢が技を披露していく。


 全く明後日の方向に魔法が飛んでしまう者は、さすがにいないが、どうも小さく収束させるというのは難しいようだ。五つの的の内、一つか二つはどうしても破壊してしまい、零点となる参加者がほとんどだった。


 ただ、一人、素晴らしい成績、五十点満点をマークする少女がいた。シルバーブロンドの髪、私よりは色が薄く白銀に近い。瞳はブルーで氷魔法を操るようだ。印象的で可愛い花の髪飾りは、うーーーん、どこかで見たような。


 氷のナイフを突き刺すイメージだ。的当てに適したアビリティということだが、確実に十点を挙げたのは、私が兄弟にアドバイスした点を心得ていたのではないか。突き刺すのではない、的の中心に刃を「置く」のだと。


 エドムとジャムは殿(しんがり)だった。真剣な顔つきだ。審判と観客に一礼して、射的円に二人で入る。兄が真ん中、弟は少し横からその手を握っている。三十秒のキャストタイム。彼らの緊張感が伝わったのだろう、周りは水を打ったような静けさに包まれた。


 その後、連射! すごい、一つの的を射るのに一秒も要していない。あっと言う間に的の中心は綺麗に黒焦げになっていた。

 前世ではスポーツが得意でもなかったので、格別な運動会の思い出はないわ。やることは全然違うけど、仲間が課題をクリアしていく様を見れる競技会は、とても楽しかった。でも。今年の私は、自分自身がちょっと憂鬱なのだけど。


 「恒例?」ああ、まだ2回目か。となりました、格闘技系アリの一週間ですが、この部分は、まだ学生なので、いきなりモンスター戦闘にならないですが、次の一週間で先行本番となったりします!


 的当ては日本の弓道っぽい感じ。それと、RPGは元この世界の住人で私たちの世界に転生して来た人が創ったものかも? とも考えられますよね。ただ、この世界、やっぱり、何か作為を感じるということかなぁ〜。


 白銀の髪、青い目の少女はぁ〜、氷魔法からの発想ですが、ちょっと書いてみただけで、今後、ストーリーに絡んでくることはありませんw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 58/58 ・魔力が強過ぎて的を破壊してしまうと零点。 ↑これは分かります。的に当ててナンボですからね。って弓道かぁ、アーチェリーじゃなかった。 [気になる点] ここで解説入れますか。…
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