ミチコとの進展
でね。そこのHな諸氏。聞きたいでしょ? そう。じゃ特別にね。って、期待し過ぎるなよぉ〜。
ミチコとの関係は。えとね。それはね。心の繋がりはどんどん深まっている気はするのだけれど。でも、今生での私の恋愛に対する感覚が、幼すぎるのかな。全く、全然、ちっとも、進展していないわ。
彼女とキスをすることに抵抗はなくなり、少し大胆なこともできるようになった。だけど、彼女の胸に顔を当て、その香りに埋もれていると、とてつもない安堵感が生まれ、眠くなっちゃう。で、そのまま眠りに落ちる。ただ、それだけ。
もう二人が付き合っていることは周りに知れ渡っているから、特に憚ることもない。二人部屋には大きなクイーンサイズのベッドを入れてしまった。それはいいのだが、だからぁ〜。私の幼さで、二人で安眠を貪るためだけのベッドとなってしまっている。
「ねえ。ミチコ。率直に言うけど、物足りなくない?」
「うーーん。確かに貴女を思いのままにして、Hな声を聞いてみたいという妄想はあるわ。でも、それを、どうしても今やりたいかと言われると、そうでもない。答えになっているかしら?」
まぁ、大胆なことをズバリ言う。
「まぁね、だいたい」
「貴女が私に全てを委ねているということは、よく分かってる。貴女にとって、イヤなことだったとしても、私が求めれば、貴女は決して拒否しない。ということも。だから、私の方が過分に責任を感じて、躊躇っているのかもしれないわ」
「マリアの存在があったとしても、やっぱり、私は孤独だった。貴女やみんなに出会えて、私は変わった。だけど、それは、自らの弱さを再発見したということでもあるわ。ミチコへの強すぎる依存は、何かしら迷惑をかけている気もするのだけれど」
「迷惑とは思っていないわ。貴女みたいな可愛い子を、己がモノとしているというのは、私にとって性的な快楽にすら、つながっているのだから。正直、それを思うだけでお腹いっぱいかも。今は、剥き身の貴女を預かっているという事実だけで十分よ。貴女が大人になるのを見計らって、前世の記憶として聞いた、あんなことや、こんなこと、たっぷり味合わせてあげるわ」
「ダメ! あれは、ずいぶんフィクションが混じってるから」
「そうね。でも、私、こう見えても経験者よ。百合Hは知らなくても、どこまでが作り物か? くらい判断できる……かもね。だけど。私の一番の不安はね。これは確実に起きること。貴女を残して私が死ぬことかな。私のいない九百年、貴女がどうやって生きていくのか? って考えるとね。ちょっと、自惚たかな?」
「ああ、そのことについては問題ないと思っている。だって、私、世界を救うのよね。どんなものにも対価が必要って知ってるかしら? 世界の対価でしょ。それは、私の命に決まっているわ」
「悲観的に物事を考えるのは、ルナの悪い癖よ。そうと決まった訳じゃないでしょ? 少なくとも、私は、自分の命に代えても貴女を死なせはしない」
「もし、そうだとしても大丈夫。過去はどんなに後悔しても変えることはできないけれど、ちゃんとその対価があるの。起きた全てのことを固着し不変にしてくれる、という。だから、貴女を愛したという事実があれば、私は生きていける」
これはかなり虚勢を張った。私は言った通り、同世代の恋人も友人さえもいなかった。孤独だった。ミチコはその全てを癒してくれた。彼女に依存するなという方が無理な話だ。
それに、この依存は、自ら生まれつき持っていた脆弱性、弱さが表に出たに過ぎず、彼女の存在があろうとなかろうと、私のメンタルが「弱い」ことに変わりはない。
確かに彼女のいない九百年を生きるなど、想像もつかない地獄に思える。だから、だから。これは、これだけは、ミチコにも言えないのだけれど、私は潜在的に強い自殺願望を持っている。
えっ! 学校の寄宿舎にダブルベッド入れるメンタリティーのヤツが「弱い」なんて変? それとこれとは別よ。ミチコのいない世界を生きる選択肢は、今の私にはないわ。
そんなことも考えながら、その夜は、ちょっとだけ大胆なキスをして二人は眠りに落ちた。そして翌朝。
ミチコと初めて森にピクニックに行った時、採ってきた来た百合の球根。三つの鉢に分けて、窓辺に置いて育てているが、もうずいぶん大きくなった。普通の白百合、テッポウユリのような花だと思うが、妙に勢いがいいというか、何か魔法的な力を感じる。
留守中も自動給水装置、水属性の魔導石を使ったアイテムだ、で、水も肥料も欠かせてはいない。小さな蕾をつけはじめていることから、来月には、たくさんの花を楽しませてくれるだろう。
ちょっとお話が、形而上的過ぎたかしら? ご期待には沿えなかったかも。
えっと。この部分ですが広義の伏線です。このストーリー、ずっと、ずっと、日常で行くんですが、最後の方(来年以降掲載分)で……となります。そのための準備です。違和感なく、つながるといいのですが;;




