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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
リリスとの出会い

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魔族とのハーフ

 でも。だけど。それにつけても闇属性魔法というのは魔族しか行使できないはず。今は冷戦状態という形で、戦闘行為はないものの、人族と魔族は長い歴史の中で敵対している。彼らが人族に協力するのなど、あり得ない話だと聞いている。私の怪訝そうな顔の意味を理解したのだろう。学園長が続けた。


「実はこの世に一人。人とサキュバスのハーフがいるのです。名をリリスと言います。今は冒険者として活躍しているようですが、ギルドマスターの推挙もあり、夏休み前まで特別講師となっていただくことになりました」


 サキュバスというのは夢魔と呼ばれるように、人の夢に入って性的な行為をする悪魔に近い魔族だ。本来、彼女ら自身に生殖する能力はないと言われている、サキュバス、すなわち女になって、人の男から搾精し、インキュバス、男にトランスし、人の女と性的行為をしてその精を受精させる。


 だが、そこで生まれるのはサキュバスの子供のはずで、ハーフではあり得ない。もちろん、この行為で受精する確率も極めて低い。魔的な存在がその数を増やすのは、かなり難しいということだ。すなわち、ハーフということは、サキュバス、あるいは、インキュバス自身が人と交わり受精したということになるのだろうか? どうやって??


 うーーん。まともにHの問題だから、ストレートには聞きにくいなぁ。さすがの私も。


 そもそも魔族は人族からのすっ飛ばし(ミッシングリンク)突然変異によって生まれた種族のはずだ。ならば、双方の遺伝子構造の違いから、理屈の上では受精しないだろうし、悪魔に近い魔族であるサキュバスともなれば、その出自すら明確ではない。うーーん。どう考えても、あり得ないことなのだが、何かこの世界の異変とつながっているのかもしれない。


「ということで、こちらが、リリスさんです」


 学園長も持って回った言い方するわよね。当然、そういうことでしょ。ああ、そうだ。先生なんだ。挨拶しないと!


「はじめまして。私がルナです。今のお話、私にとって、とてもありがたいこと。上手く魔法を学べるかどうか分かりませんが、どうか、よろしくお願い申し上げます」


 私に続いて、みんな、それぞれ自己紹介と挨拶をした。


「ああ、みなさん、私の素性を聞いて不思議に思われるでしょう? 角も尻尾も隠しているわけではないのです。私の体は普通に人族です。そういう目線には慣れていますが、少し控えめにしてくださいね。ああ、ルナさんは、仲間ですね」


「あはは。私は見た目がこうですから」


「よく分かります。私たち仲良くできそうですね!」


 ショートカットがよく似合う。フランクで活動的な感じのする女性だ。アレ? ミチコ、ちょっと嫌な顔してるような。まさか、嫉妬? なんだか、嬉しいかも♪♪


「私は本来、サキュバスとして生まれるハズだった。でも、赤ん坊としての私は、普通に人の姿をしていたってわけ。結果、私は魔族に遺棄され、私の母は知らず自分の子供として育ててくれたの。でも、私が魔力に目覚めた時、その属性が闇だと分かり、いろいろあったわ。だけど、今は、冒険者として楽しく暮らせている。ってこと。これくらいで私の説明は、いいかしら?」


 なるほど! 理解した気がする。本来、魔族、サキュバスが生まれるハズのところ、何らかの突然変異、逆進化?が起きて、人族の赤ん坊が生まれた。そう解釈するのが「科学的」なのだろう。だけど、後にリリスから聞いた話を総合すると、何か「不思議な力」の影響を感じざるを得ない。


 リリスの「父母」は禁断の恋に堕ちていた。彼女は「遺棄した」という言い方をしてはいるが、リリスの「父」は、心ならずも娘を置いて失踪したということらしい。彼女の母についても「知らず」ではなく、最期まで父が誰か? を語らなかったということのようだ。


 さすがに、そこまで深く突っ込んでは聞けないので、これから先は私の想像。リリスの「父」はサキュバス。自由に性別を変えられる彼ら? 彼女ら? をどう見るかは微妙だけど、普段は、女の子の姿だった可能性が高い。ってことは。そ、そういうことよ。女の子同士でも、子宝に恵まれるなんて! 「羨ましい」と言ったら、リリスに叱られそうだけど。


「決して奇異な目で見るつもりは、ありませんでした。ごめんなさい」


「申し訳ありませんでした」


 ミチコが代表して謝り、みんなも続いて、頭を下げた。


「そう、改まれると……。慣れてるって言ったでしょ? 大丈夫。あなた方のようにすぐに気づいてくれる人は、信頼できるわ。私の方こそ、ついつい皮肉な言い回しになってしまって、ごめんなさい」


 当日夜はリリスを含め、六人で夕食を食べることにした。学生食堂のレストラン。みんな、お肉が大好きなようだ。圧力鍋を使い、赤ワインソースでよく煮込んだスペアリブは、とても美味しそうだ。魚介のパスタばかり食べている自分からすると、ちょっと妬ましい。

 ひとまずは、闇属性魔法を教えてもらう先生なのだけど、彼女と私たちの運命はつながっていたわ。マリア、ミチコ、仲間……とは、少し違う親近感が、初めて会った時からあった人。


 もうお気づきかもしれませんが、ルナ、ミチコなどの例外を除き、この物語の登場人物は新旧聖書にちなんだものとしています。リリスはユダヤ教の「夜の魔女」ですが、関連といえばそう。脇役ですが、後半ではいろいろ活躍してくれます。中の人的には性格も気に入っているので、別の物語でも定番キャラとして登場願おうかなと、思っています。


 ちなみに「羨ましい」は、ちょっとだけ伏線で、先々、ずっと先々、ルナとミチコは養女を迎えます。やっぱり結婚がゴールじゃなくって、子供ができるまでの人生をと思ってます。「CLANNAD」みたいに。

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― 新着の感想 ―
[一言]  おっと! ここでCLANNADが出てきた(  ̄▽ ̄)  ふふふ。やはり雪さんも思い入れがあったのか。  確かにパロディ以外で、違う作品見ちゃったら  引いちゃいますね。。。  サキュバス…
[良い点] 55/55 ・『嫉妬、ちょっと嬉しい』にビビっときました。そういうもんなんですね(?) [気になる点] リリスさん、いい感じでサバサバしてますね。 [一言] なんでしょうねこの独特な雰囲…
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