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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
終末の御使

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連邦の王都

 昼前に学園寮に着いたのだが、すでに王都から、迎えの馬車が待っていた。王宮の官僚が同行しているわけではなく、御者が一人という簡素なものだが、オリル王らしい手回しだ。


 これからだと王都到着は夜になるが、幸いにもノルデンラードの大使館というか、我家の別荘がある。ひとまず、馬車を待たせて、シャワーを浴び、着替えてお化粧を手早く。


 リップを引いていると、ミチコが戻ってきて後ろから声がかかった。


「あら? どうしたの? こんなに早く」


「ああ、いろいろあって、今度は、王宮から呼び出しが」


「えええ! それは大変ね」


 ドレスは、王に謁見するのだからと、母が急遽準備してくれたものだ。サイズ調整が魔法でできるこの世界では、ドレスの調達は手早くできる。


 濃紺の膝下状。襟ぐりは四角くなっていて、アクセントのクロスした紐を首にかける。袖はパフスリーブの半袖。胸とウエストにはギャザーがあって、言いたくないけど、私のナイ胸をカバーしてくれる。


 そこの人! なによ! 文句ある! これから成長するんだからね。スカートにはパニエを入れ、膨らませて、同色のパンプス。高いヒールは履き慣れてるんだから平気よ。


 ミチコとリベカに明後日、別荘で落ち合う約束だけして、早々に馬車に乗り込んだ。王都は学園から約五十キロ。馬車では一日かかる距離だが、道は綺麗に舗装され、魔法の灯りが続いているので、夜になっても行程に問題はない。


 王都には二年ほど前、私の乗馬が上達したのを見て、父が連れて行ってくれた。王都で各諸侯を集めた会議への出席のついでということだったのだが、空を飛ばないで行くとすると半月ほどかかってしまう。


 モスコからは陸路五日でドルーム川の港町スミレスクに。そこから船を乗り継ぎ、ダークシー。前世で言うところの黒海に着く。大型船に乗り換え、王都ヴァーベノーブルへは、オリル海峡経由で海路十日となる。


 オリル海峡は前世のボスポラス海峡に当たるが、あまりにもお厚和え向きな広さでもあり、王の先祖、もちろん神話の世界の先祖、が魔法で穿ったとされている。ちなみに、オリル王はその一世が三百年前の対魔族戦争での救国の英雄だった。


 当初、人族は劣勢だったが、神から天啓を受けた青年。十二歳というから少年か。地形を操る強力な土属性の魔法を駆使し、人族軍の先頭に立って戦い、ついに魔族軍を北の大地に押し込めたと伝えられる。


 もう三百年も前の話だから、ずいぶんと尾鰭もついているだろう。天啓を受けたなどというのはかなり怪しいが、もしかしたら、私と同じ転生者だったのかもしれない。


 オリル一世は、魔法使いとして優秀だったばかりではなく、人格に優れ、長ずるに政治手腕も確かだったようだ。対魔族戦で団結した人族連合軍を解散せず、間に合わせだった指揮命令系統を、次に起こるかもしれない魔族との再戦に備え整備した。すなわち連合軍はNATOのようになり、最終的には統一された軍隊となった。


 EUとの違いは、私の故郷、ロシア相当の国もこの連合軍に含まれるあたりだろうか。連合軍が一旦解散しユーロ人族条約機構として再編された際、彼の有能なブレインであった副官の草案と伝えられる「人族聯合軍解散の辞」が古い碑文に残されている。


百發百中ノ一魔砲能ク百發一中ノ敵砲百門ニ對抗シ得ル


 魔法を前提とした(いくさ)は、物量ではない。たった一人の有能な魔道士は、比喩的表現でしかないなずの一騎当千どころの騒ぎではなく、一騎当万にも値するからだ。だが、大魔道士による奇跡の起死回生を頼みにするなど愚かなことだ。


 三百年前のオリル一世の登場は偶然の産物。僥倖でしかない。ここで言っているのは、自らが救国の英雄だったという、自惚れではなく、個々が鍛錬し来るべき危機に備えよという意味だ。


 国の中枢である軍が統一されたことを契機に、ユーロ連邦となった国々は経済も融合していった。まずは、通貨の統一、関税の廃止、と徐々に統合化が進んでいく。辣腕政治家だったと言われるオリル三世の御代に、自然な流れとしてユーロ連邦王国が平和裏に成立した。


 馬車に揺られ、ミチコが急いで準備していてくれたサンドイッチ二人前を、食べ終わると睡魔が襲ってきた。うとうとしているうちに夜の(とばり)が下り、気がつくと馬車は王都の城門を潜るところだった。遠くにドーム状の王宮。ターコイズブルーの円柱形の屋根をいただいた尖塔が六本、高く天を目指し周りを囲んでいる。


 王宮へ続く道には大きな凱旋門とオリル一世の銅像、馬に跨っている、が見える。凱旋門まで馬車は行かず、海に向かって右折して十五分ほど。馬車は我家の別荘に到着した。


 大使館と言ったが、役割としての話で、実はそんな大層なものでない。老執事夫婦が管理してくれている海に面した二階建ての建物。玄関を入ると大広間になっており、一階は厨房、リビングダイニングと管理人室。螺旋状の階段から二階は父の執務室とゲストルームが三つ。といった具合だ。


 王宮用意の馬車は、明日朝迎えにくると言い残し、王宮に戻ってしまった。

 いいこと。私はエルフなの。成長が遅いだけ、いずれ、いずれわぁ〜。


 王都=ヴァーベノーブル=イスタンブールですので、中東風です。イスタンブールは気に入った雰囲気の街で、中の人は、前作でも使っています。王宮はトプカプ宮殿とかアヤソフィアをイメージしています。


 EUでも、そういう側面あると思いますが、「共通の敵」は「一致団結」を生むようです。この世界では、さらに進んで連邦国家として統一されてしまいました。統一したのは三世です。徳川家光みたいな感じ?


 ネタとして。分かりますよね。東郷平八郎/秋山真之「聯合艦隊解散之辞」を入れてみました。


 モスクワ〜イスタンブールは、スモレンスクまで陸路→ドニエプル川→黒海→ボスポラス海峡です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 45/45 ・今日は淡々とした説明回でしたね。 [気になる点] 安定のネタ分からん病。ただのアホです [一言] 筋トレして大胸筋を増やせばいいさ!!(肉)
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