仲間への告白
私はミチコと恋人になることを望んだ。でも、それは見果てぬ夢だと思っていた。それが、突然、現実となっても、やっぱり夢のよう。でも、彼女の一言一言が心に染みていく。前世の記憶があったとしても、私の心はまだまだ子供だ。恋愛そのものが未踏の領域だ。今は、彼女の言う通り、少しずつ、ゆっくり進めよう。
「でも。一つだけ、断っておくわ。生まれ変わりかもしれないけれど、私は私、三蝶子さんじゃない。だからね。今生はちゃんと向き合いましょう」
「そして、幸せに『なる』」
ここではっきりしたことがある。ミチコはミチコ、三蝶子ではない……ということ。たとえ生まれ変わりで、同じ魂を持つ者だったとしても、ミチコは三蝶子とは違う人格。前世の想いが変わることはなくとも、そこは、区別して行く必要もあるだろう。
何より、私は、女の子として彼女を好き、いや、愛しているのだから。キャッ! 言っちゃった。
「そうね。でも、こうやって、貴女と話しているだけでも私は幸せよ」
今度は、抱きしめられた。ミチコはいつも伽羅の香りがする。幸せというのは、とても単純なものだったのだ。私は理屈が先行して、難しく考えすぎてしまっていたのだろう。抱きしめられ、彼女の体温を感じると、なんだか頭がフワフワしてきた。体の力が抜けていくようだ。嬉しい。涙が溢れてきた。あ、今度こそ、される?
とその時。
コン、コン。
ドアがノックされる音がした。二人はパッと離れ、私は急いで涙を拭った。キス、なのかな、に水を差されたわけだが、妙に安堵している自分がいる。ミチコが望むのなら、何をされても構わないとは思う。でも、彼女の言う通り「好き」という言葉に囚われ無理をするのはやめた方がいいのだろう。いいタイミングの水入りだったかもしれない。
「ええか?」
リベカ、と、エドム&ジャム兄弟だった。龍王との会見について気になったので、部屋に尋ねて来たということらしい。まもなく夕食の時間だが、みんなに紅茶を入れることにした。
故郷から薔薇の花のジャムが届いていたので、ロシアンティーにした。こちらの世界では、東方の大帝国、オステン帝国の一部ということになるが、インド相当の地域ではやはり紅茶の栽培が盛んだ。前世の呼び方ではアッサムティー、渋みが少なく、味わいが濃厚なので、甘いものを入れた時のバランスがよい。
「どうぞ」
私とミチコは紅茶を勧めながら、龍王との話をかいつまんで話した。学園長への報告と同じ内容だ。私の魔法が宇宙をも滅ぼせること、前世のこと、などについては、あまりに突飛で常人の理解を超えてしまうだろう。
さすがにもう、秘密にすることでもない気がするが、それらについては上手く避けながら、森で三人に打ち明けたこととの整合性はとる形で説明した。
「そうか。あの火龍が狂った理由は龍王ですら分からんということか?」
「そのようね。彼とて全てを見通せているわけではないみたい。でも、何か悪いことが起きており、世界の終末が近いのは確かだと言っていた」
と私。
「ああ、終末と言っても、必ず人が滅ぶという意味ではないと思うわ。最後の審判の時が来るけれど、まだ絶望には早い。だって、ここに救世主がいるでしょ?」
とミチコ。
「あのぉ〜。それは持ち上げ過ぎかな。でも、私には何か役目があることは確か。少しでもマシな未来になるよう頑張るとしか言えないけれど」
「ルナさん、お分かりかと思いますが、一人で抱え込むのはよくないことです。僕たちも及ばずながらお手伝いしますから」
双子は同じことを言った。
「もちろん、私もや。けどぉ〜。二人、その指輪どうしたんや?」
「え、これは龍王からもらって。毒を検知する守りの指輪らしいわ」
「ちゃう。ちゃう。指輪の機能を聞いてるんやない」
「さすが、リベカ、よく見てるわね。お察しの通り、私たち、もう親友はやめにしたの」
ええええ!!!
ミチコ、そんなあっさりと。顔の火照りが止まらない。ああ、龍王のヤツ、私の心を読んでこうなることを知っていたのか。全く……。というか、あの段階でこの展開を想像できない私は鈍いというか、恋愛素人も甚だしい。
「ええん、ちゃうか? 今更感あるけどな。そうかぁ〜。このパーティでボッチは私だけになったかぁ」
あっさり。こんなに、あっさり行くなんて、思いもしなかった。けどねぇ〜。
このあたり、TSモノではあるんですが、ルナは普通に女の子で、そういう方向でミチコを好きという感じです。前世の想いは想いとして……。