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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
誓いの指輪

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龍王の指輪

 これで、龍王とのテレパシー通信ができるはず。私は語りかけた。


「龍王様、申しわけありません。このピアスはエルフの守り。全ての魔法が私に影響を与えることを拒むのです。今、龍王様をその対象外として登録しました」


「なるほど。エルフの守りか。お主ほどの魔力を持つものなら、魔法からは不可侵ということなってしまうのだな。まずは礼からだ。学園長から聞いたと思うが、火龍はどうしたことか気が触れてしまった。あのままでは、王都を襲い大変なことになっていた。龍族と人族の危機を未然に防いでくれて、感謝の言葉もない。ところで、手間をかけるが、お主の魔力、我に見せてくれぬか? それを見た上で続きを話したいのだ」


「分かりました」


 ここで、魔力を開放するとあの兵士達にも感づかれてしまう。だが、学園長から信頼のおける二人だと言われていた。兵士としての守秘義務は守ってくれるだろう。私は、また、あの情けないやり方、ああ、そうか服の上からペンダントを引っ張ればいいだけだった。


「なんと! お主の魔力は、間違いなく、我ら龍族をも凌ぐな。いや、凌ぐなどといえば拮抗するように聞こえる。お主からすれば、我らなど赤子同然。我すら手に負えなかった火龍が一瞬で命を絶たれたのも納得がいく。だが、お主の魔法。学園長から聞いたモルスなどではなかろう」


「え? どうして? なぜ、そのように?」


「龍族はな。完全即死耐性を持っておるのだ。だから、お主が使ったのは『死の魔法』がであるはずがない。我ら、そこのミチコを含め、心の中で会話しておる。お主は言葉を語らずとも概念を示せば、二人に通ずる。お主は『真実』があまりに荒唐無稽であることを恐れているのではないか? この方法ならお主の気は確かで、嘘偽りのない真実を語っていると二人には分かるはず。どうじゃ? 話してみないか? 真実を」


 神にも等しい龍王、そして、最も信頼すべき親友。それに何を語っても、私の気が狂ったとは思われないらしい。ならば、いいだろう、全てを話そう。


 私は、自分の魔法が重力を操れる非常に特殊な魔法であること、火龍は心臓を重力場、ミニブラックホールにより消し去り、屠ったこと、そして自身、転生者であることを包み隠さずに話す、というか、龍王の言うところの概念を直接心に概念を投げる形で説明した。


 通常、人は頭の中で「言葉を話す」ことにより思考を行う。少々、慣れないことでもあったが、龍王が投げてくるイメージを参考にしたら、意外にあっさり、その方法は習得できた。


 ネットのデータ通信に例えれば、テキストデータを送っていたのが、回線速度の飛躍的な向上で、画像や動画も送れるようになったという感じだ。言語で語るより、数倍、いや数千倍の情報量を短時間でやりとりできる。


「なるほど理解した。お主が伝説の御使であることに間違いはないが、皆の言う通り、我も救世主の側の人、いや、エルフか、だと思う。だから案ずるな」


「はい。ありがとうございます。ですが、龍王様、もう一つ、お教えください。なぜ、火龍様はあのように?」


「我は全知全能などと、人族から買いかぶられておる。だが、それは真実ではない。我にも分からぬことがあるのだ。アレは正義感に溢れた素晴らしい龍だった。だが、ある日、突然、狂ったのだ。そして、狂い出したアレの力は常軌を逸しておった。制止することすら敵わなかった。ただ、その原因は我にも分からぬ。しかし、これは終末の前触れ。何か良からぬことが引き続き起こると考えて間違いないだろう」


「龍王様でも敵わない?」


「火事場の馬鹿力という言葉があろう。アレの狂気は本来出してはならぬ『力』が、(たが)が外れたように溢れ出たようだった」


 龍王は言葉を切り、魔法を使った。すると、私たちの目の前に光の球体で包まれた指輪が二つ出現した。ホワイトオニキスだろう。真っ白な宝石が埋め込まれたプラチナ製のシンプルな指輪だ。


「そこで、迷惑ついでに、この指輪を受け取ってくれぬだろうか?」


 指輪を手にした私たちを見ながら、龍王は続けた。


「お主らは高い防御力。ルナは破格だが、を持ってはいる。だが、お主らがこの世界を救う重要人物になればなるほど、敵も増えるだろう。人族の世界というのはそういうものだ。だから、毒を盛られるなどという卑怯な手段も警戒すべき、ということだ。この指輪は敵意を持つ何かが接近したら、宝石が赤く光って知らせてくれる。お主らが寝ている時は、震えて起こしてくれさえする。どうか持っていてくれ」


「そのような貴重なものを私にまで」


 ミチコが遠慮がちに答えたが。


「今回の礼ということもある。実はな、もう一つ指輪には役割がある。そちらが核心なのだが、これを介して、我とどこにいても、話すことができるのだ。我ら三人、終末に立ち向かう運命にあるのだろう。万一の場合に備えて持っておいて欲しいということだ」


「分かりました」


 二人が答える。


「ああ、そうじゃ。この指輪はな左手の薬指に嵌めぬと効果がないぞ」


 アレ? どういう意味? なぜか龍王がミチコにウインクした気がしたのだが、気のせいだろうか? 妙な違和感を感じながら、私はその指輪を薬指に嵌めた。この種の宝具は指のサイズに合わせてくれる。ちょっと薬指が締まる感じがした。え? もしかして? コレ、外せない??


「良きかな、良きかな。では、世話になった。ルナ、ミチコ、また会おうぞ!!」


 龍王はスッと高度を上げ、空に消えた。

 私は「概念」を話したのよ。ああ、後で考えてみれば迂闊だったわ。心の中のものを洗いざらい知られてしまったってこと。そう指輪には3つ目の「役割」があったのよ。


 そうなのです。言葉ではなく、概念を通信しあってしまえば、全部、全部、バレバレになるということです。ミチコは、ルナの全てを知って……。それは次回! イメージは、ハニワ(HoneyWorks)ですw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 40/40 ・仲間が増えるのはいいものです。 [気になる点] バレバレですか。でも概ね予想通り……なのではないでしょうか? [一言] ここで危険察知なのがまた。毒無効ではないから緊張感あ…
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