龍の王
無事学園に到着したが、すっかり日は暮れてしまった。帰るといきなり学園長からの呼び出し。どうやら、火龍の件は学園長も既に知っていたようだった。私たち五人は荷物を片付ける間もなく、学園長室に向かった。
「五人とも無事でなによりです。実はさきほど、龍王より連絡があったのです。彼は『王都を救い、龍族と人族の争いを未然に防いだ五人に感謝』としたのち、事の子細を説明してくれましたが、あなた方の口からも経緯を教えてもらいたく思います」
「分かりました」
私は迂闊に魔力を見せてしまった件も含めて、包み隠さず学園長に報告した。
「そうですか。迂闊だったかもしれませんが、結果的にその行為が王都を救ったのです。龍王が言っていました。火龍は真っ直ぐに王都を目指していたと。聞いた火龍の荒れようでは、そのままだと、王都に甚大な被害がでていたでしょう。そうなれば、人的被害に止まらず、龍族と人族の戦争になっていたかもしれません」
学園長は続けた。
「なぜ火龍があのようなことになったのかは、龍王も詳しく聞かせてくれませんでした。明日朝、火龍が落ちた場所に来るので、ルナさん、ミチコさん、彼と会っていただけますか? あなた方二人だけに話したいことがあると。他の三人には申しわけないですが、まだ、龍王も当事者以外には話したくない内容のようです」
「それは。私が終末の御使であるかもしれないといことと関係するのですか?」
「おそらくそうでしょう。私もアレはただの御伽噺と思っていましたが、貴女の強大な魔力、さらに今回の件です。あの予言には無視できない何かがあると思います。ですが、私はルナさんの心根を良く存じ上げています。終末に関係するとしても、むしろ、救世主ではないかと考えています。いや、そう信じております」
「私たちも、もちろんそうです!」
他の四人も同意した。
「今日は疲れたでしょう? 夕食を済ませて早めにお休みなさい。明日朝、ルナさんとミチコさんには入れるところまで馬で行ってもらいます。護衛もつけますから。ああ、馬、乗れますよね?」
私は首を縦に振ったが、ミチコは乗れないようだ。
「私とミチコは二人乗りで行きます。軽いですから」
「分かりました。準備しておきます」
さすがに皆、疲れたみたいだ。夕食を食べたら三々五々解散となった。私もシャワーを浴びたら睡魔が襲って来た。ベッドに倒れ込むように横になって、気がつけば、夜が明けていた。
次の朝、私たちに大きな馬が用意されていた。アイアンハートという名の青毛の馬だ。退役した軍馬だという。私はひらりとまたがり、ミチコに手を貸して後ろに座らせた。普段とは役柄が反対のようだ。
護衛は二人。学園にも治安維持のための小さな軍隊がある。学園長近衛師団といえばいいだろうか。それぞれ、槍と剣で軽武装した二人の兵士が先導してくれた。
森の入り口までは速歩で駆けることができたが、森の小道を進むにしたがって速度を落とさざるを得ない。最後は常歩となってしまったが、一時間ほどで火龍の落下地点から歩いて、三十分くらいのところまで来た。
木に馬をつないで、私とミチコの二人で龍王に会いに行く手筈になっていた。兵士二人はここで待機していてくれると言う。
森を少し行くと空に浮かぶ龍王の姿が見えて来た。日の光が反射して眩しい。輝くような純白の龍だ。彼は七柱の最高位という位置づけだが、全知全能とも千里を見通すとも言われている。光属性の魔法を持ち、力も知恵もこの世界一の生物、という意味のようだ。
魔法的ではあるものの、龍も生物であるには違いない。だが、人族から見れば、前世でいうギリシャ神話のプロメテウス。知の神として畏怖の念をもたれる存在でもある。
森の少し開けた場所に出て来たが、龍王は十メートルほど上に浮かんでいる。頭から尾までの長さ百メートルはあるのではないか。大きすぎて降り立つスペースがないのだ。彼がここを指定したのがよく分かる。こんな巨大な者が学園に直接飛んでくるわけにもいかないだろう。
私たちはスカートを摘んで会釈した。
「ねえ。ルナ、龍王様が貴女と話すことができない、と言っているわ」
とミチコ。
「ああ、そうか。精神感応も光魔法か。このピアスのせいだと思うの、尻尾を私が触れるくらいまで、下げてもらえるように言ってくれるかしら?」
龍王は頷いたような表情をして尻尾を木々の間に垂らしてくれた。私はそれに手を当てて「allow」。龍の尻尾は硬い鱗に覆われ、金属に触れたようにひんやりとしていた。
判断遅過ぎの自分が情けない。ミチコがいなかったら大変なことになっていたわ。あの状況ではどうしようもなかったけど、火龍をヤッチまったから、どうなることかと思ったのだけど、意外な方向にコトは進むの。公的にも私的(キャッ!)にも。
この事件は人間関係にも影響を与えます。ミチコとだけではなく、周りのルナへの評価も含めて。ですが、この世界、善人が多いので、むしろ、彼女を守ろうとする方向に。「中の人らしさ」は、多分、来年くらいにw この感じはアニメでいうと「こばと。」かな。
とはいえ、何か不穏な雰囲気というか、良からぬことが起こっている感じで、それも少しずつ明らかになってきます。こっちでイメージしていたアニメは「がっこうぐらし!」だったり。
・・・という流れのネタバレです。




