表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
異変の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/187

火の龍

 それは、急速度で私たちに近づいて来ている。最初、赤い点としか見えなかったが、次第に龍の形をとり始めた。羽はないのに空を飛ぶ、魔法的な生き物だ。前世の言い方では、西洋風のドラゴンではなく、東洋風の龍、蛇に手足と角を付けたようなスタイルだ。


 ちなみに、この世界の龍は七体。火・氷・風・土・雷・水・光に対応したとてつもない魔力を持ち、神とも呼べる存在だ。だから、基数詞は「体」ではなく「柱」とした方がいいかもしれない。


 彼らは強い力は持ってはいるが、人族との平和協定が成立しており、人に余計な干渉などしない。普段は天空の城という、どこにあるのかは知らない場所で暮らしているはずなのだが。


 赤いということは、火属性を持つ火龍ということだろう。どうやら、さっきの、私の魔力を感知して、こちらに近づいて来たようだ。あれだけの魔力だ。「私たちはここにいますよぉぉ!!!」みたいな。巨大な狼煙を上げてしまったということだろう。


 呆然と見守る私たち。ずいぶんと近くに来たと思ったら、突然、火龍はホバリングし、何の威嚇動作もなくブレスを吐かんと口を大きく開いた。


ちょ、ちょっとぉぉぉ!!!! えええええええ!!!


 こんな至近距離であれを貰ったら、私以外、全員即死だ。一瞬、頭が真っ白になる。何も考えられない。と、その時。


シャーン!


 澄んだ鈴の音がした。神楽鈴、ティターニア。ミチコの咄嗟の機転だ。私たちの前には強固な魔法障壁が築かれていた。すごい。この世界最強の攻撃力ともいえる龍のブレスを防いでいる。だが、ミチコの表情を見れば良くわかる。障壁を維持するための彼女の消耗は半端ない。この障壁は持っても残り十秒程度だろう。


 ここで。こんなところで、仲間、折角できた仲間を失うわけにはいかない。いや、仲間であるかないかの問題ではない、人が不条理に死ぬのを座して待つなど、私の倫理観が許しはしない。一瞬で、私は決意した。おそらく、私の秘密の大半は彼らに知られてしまう。だが、


命の対価は命のみ!! 迷っている時間などない!


 龍の心臓がどこにあるのかは知らないし、大きさがどれほどの物なのかも分からない。だが、私の魔法はそれをイメージできれば発動するはずだ。例によって私は意味なく右手を握りしめ、龍の心臓を「消し去った」。


ぎゃぅぅぅ〜〜んん!!!


 龍は血の泡を吹き、一瞬、急上昇したが、すぐに失速、木の葉が地に落ちるようにクルクルと回転しながら、森の中に落下してきた。


バキバキ!!!!!


 木々をなぎ倒す大音声がした後、龍は森に落ちた。


「し、死んだの?」


「ええ、私が殺したのだから」


「龍を殺す力?」


「いいから、今夜のキャンプは辞めて学園に戻りましょう。お話しは道々」


「そうね」「その方がええやろ」「はい」「ですね」


「暗くなりますが、ちょっとした明かりなら僕が」


 ジャムが応じた。彼の魔法で小さな灯明を作ることができるという。私たちは来た道を引き返し始めた。まだ、二時ごろのはずなので、最後の方は暗くなるだろうが、学園に戻るのに特に問題はないだろう。道々、私は、四人の理解の範囲を配慮しながら、今のことについて説明した。


「実はね。私の魔力の属性は闇。そう、魔族だけが持つと呼ばれるもの。そしてあの魔法。たとえ龍でも一瞬で葬りされる力が私には与えられている」


「それでも、私は貴女を信頼する。だってそうでしょ? 貴女にはエルフの守りがある。もし、秘密を守りたいのなら、私たちを見殺しにして自分だけ助かればいい。貴女はそうはしなかった。私たちの友情は不変よ」


とミチコ、致死のピンチを防いだ記憶が蘇るのだろう、まだ、声が震えているが、さらに続けた。


「それに、黙っていたのを気にすることはないわ。ルナと知り合って間もないころに、もし、アレを見せられたら。私が、貴女に恐怖を感じなかったとは断言はできない。でも、今は、今なら大丈夫だから」


「そうやなぁ〜。私も誓って言う。ルナとの友情は変わらん。そやけど、アレは、これくらいのタイミングで明らかになってくれて、むしろ良かったと思う」


 ミチコより、リベカの方が平然としている。


「二度も命を助けていただいた恩義は忘れません。何があろうと、僕たちはルナさんに付いていきます。なぁ?」


「当然です。確かに、アレを見て、恐怖を感じない人はいないでしょう。でも、それと友情は別の話ですから」


「み、みんな、ありがとう」


「いや。お礼は私たちからでしょ? だって、命を救われたのよ」


「その通りや。話が前後して、ごめんなぁ〜」

 そうよ。この世界の生きとし生けるもの、全て、簡単に殺せるのよ。こんな力に恐怖を感じない人はいない。でも。でも。この時まで知らなかった。友情は恐怖を超えられるのかしら?


 えと、龍ですが、この世界のは東洋風のものです。羽があるわけでもなく、物理法則に反して飛んでいる。すなわち、魔法は物理法則外の何かです。


 ルナは、心に弱点があって、こんな事態には動揺してしまい一瞬パニックになります。それを救ってくれたのがミチコ、という具合です。


 どうでもいい細かい話ですが、今期も航空機アニメありますね。でも私の好みは少し前の「荒野のコトブキ飛行隊」。描写がガチで楽しかった。「木の葉落とし」という技をご存知でしょうか? 急上昇してわざと失速させるという。軽い機体でないとダメですし、高い技量がないと墜落します。・・・というが龍の落ち方のヒントです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 38/38 ・おお、ドラゴンがあっさり倒れましたね。戦闘シーンはこのくらいで丁度いいかもしれない。 ・ぎゃぅぅぅ〜〜んん!!! ↑ナイス! [気になる点] んで、龍を倒してどうなるか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ