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学園の授業

 式典が終わりいよいよ翌日から授業が始まった。この世界でも一週間は七日。月曜から水曜は座学。月年別一クラスなので九十分授業が午前に一コマ、昼食二時間を挟んで、午後に二コマというのんびりした感じだ。


 内容は魔法学が主で実習もある。理論と使い方ということだ。その他、前世の学校でいうところの一般的は授業、座学も多数ある。数学、物理学、化学、生物学、地学、天文学、医学、薬学、経済学、法学、歴史、文学……。かなり広範囲に学ぶことになる。


 文化系の科目については、家庭教師に習ったものと大差はないし、数学については前世の記憶が「半端なく」蘇ってしまったので、既に知っていることが多い。目新しいのは物理学。魔法を前提とした場合、ニュートンも、アインシュタインも想像し得なかった理論が展開される。


 さらに、生物学は驚嘆に値する。魔法による進化を遂げた動植物はトンデモなものが多数存在する。前世の記憶にあるSFやファンタジーの想像を凌駕していると言っていいだろう。


 天文学も面白い。この世界では宇宙開発が進んでいるというわけではない。どちらかといえば占星術なのだが、これも前世の常識を上回る奇想天外さだ。


 経済学はかなり前世とは違う。冒険者が資源を「独占」している社会なのだ。冒険者ギルドは、全世界的な組織であり、領土を持たない国家というのが行政的な観点からの見方だが、前世の知識から見方を変えると、全く別の様相が浮かび上がる。


 すなわち、冒険者ギルドは、石油メジャーであり、世界銀行であり、国連である。敵対しているわけではないが、各王国に対して同等、いや、それを上回る財力と権力を持った巨大組織ということになる。


 そんなこんなで、前世との相対比較で考えると各学問はとても興味深い。さらによいことに、この学校ではテストは存在しない。レポートや感想文の宿題はあるものの、持ち帰っても一時間もあれば済んでしまう程度のボリュームだ。


 特権階級の子弟と超ハードな選抜試験を通過したエリート。すでに「選別」された生徒のみが通う学校だ。座学においては、なんらかの振るいにかける必要はないということだろう。


 木曜、金曜は魔法を使った実技指導ということになる。魔法はそれぞれの個性があるため、一学年、一クラスを四つに分割しての指導が行われる。


(1)攻撃、弱体型魔法講座

(2)回復、防御、強化系魔法講座

(3)魔法剣、弓などの武術講座

(4)体術講座


 また、この四分割とは別に、五人十組のパーティを作りサバイバル技術を教える実技講座も、二ヶ月後から随時開催されるようだ。パーティについては、数ヶ月で親しくなった友人同士で申請すればいいことになっている。ううう、ミチコ以外の友達もいない私は、誰とパーティを組めばいいのだろうか?


 実技指導について、私はもちろん(3)を選んだ。(1)を選ぶと私の魔法の何たるかが、バレてしまうだろうし、私の魔法は、攻撃も何もただ人を殺すだけのものだ。制御についてはだいたいの勘は既にあるし、座学で学んだことをこっそり自習ということにした。


 剣は北方貴族の嗜み、楽器じゃないのよ!、としてかなり習ってきたが、女の子が正式に学べるのはフェイシング。いわゆる突き剣だけだ。愛剣オベロンは片刃ではあるが、突くことが主体の剣であることは前に説明したわよね? レイピアはそういうものなの。だから、私がこれで「切る」というは自己流のアレンジということなのだ。


 模造刀で「切る」技を学ぶのはとても有用だった。今まで、力任せに剣を振るっていたが、無駄な動きも多かったようだ。二ヶ月も形を学んだら、剣先にマーカーを付けての模擬戦では、十名の受講者の中で負けることなどなくなっていた。もちろん、魔法を使って加速するなんてしてないからね!


 ジョギングで少しは体力がついてきたことと、技を学んで余分な力が入らなかったことあり、長く戦っても息が上がることはなくなっていた。だが、一点だけ問題はある。鍔迫り合いだ。剣を組んだら最後、一瞬で突き飛ばされてしまう。こればかりは、如何ともしがたいと思われた。


 力のなさはそう簡単に鍛え直せるものでもないが、我ながら学習能力の高さは異常なのではないか? と感じ始めていた。前世の記憶がある、魔力も高いなどなどの好条件もあるのだが、私がエルフだという点が大きく影響しているようだ。人族には受け入れがたい真実かもしれない。エルフは人が進化した新人類(ニュータイプ)ということなのだろう。


 剣術が一段落したこともあり、弓術も学ばせてもらうことにした。当然、エルフなんだから得意、というわけにはいかなかった。力がなさすぎて強い弓を引くことができないという盲点があったのだ。


 なので、少しズルをさせてもらっている。矢を魔法による空間操作で誘導してしまうということだ。「見える(まと)」なら百発百中なのだが、そこまでやっても、十人の中で二番目の成績だった。とはいえ上位二人は上級コースの教練を受けることを許された。

 学園は前世でいうところの大学。意外に一般教養が多いのよ。生徒数からみても研究機関としての位置付けが強いのかもしれないわ。


 で、そう。あなた方には受け入れがたい「真実」よ。私たちエルフは人類から見てニュータイプなわけ。悔しい? それはね「坊やだからさ。」


 魔法学校の科目って何だろう? な感じで考えてみました。やっぱり、普通の大学風に一般教養多いですよぇ〜。みたいな感じです。魔法が前提の文明ですから、学問もかなり異質なんだろうなぁと。冒険者ギルドの権力についても少し補足しています。


 で、ラストは弓の名手(すいません! 弓ってだけで、類似点ないですから……誰に言ってる?)が次回出てくる予告です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 26/26 ・設定がワクワクします。なかなかお目にかかれません。 [気になる点] 確かに、魔法ばっかり習うわけじゃないですよね [一言] エルフすげえ
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