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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
運命の出会い

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運命の人

 さてさて、学園が見えてきた。ぐるりと生垣に囲まれた大学のキャンパスといった風情だ。門を入ると左右に研究棟。学園という言い方をしたが、学生の教育だけではなく、主に魔法学についての研究も行われている。


 ポプラ並木を百メートルほど奥に進むと、中央に大理石造りだろうか立派な噴水のある広い芝生の庭を囲んで、正面の大きな三階建の建物が学園、左右の二階建ての建物がコの字のようになっており、右手が教員用宿舎、左が学生用だ。


 前世の記憶によると、いわゆるルネッサンス系の建築で、燕児色の屋根と白く塗られた壁が美しい。半円状のアーチが印象的な建物だ。


 この世界では、馬と船が交通手段の主流となっている。前世との比較で、文明の発展が遅れているという考え方は当たらないと思う。魔法を前提とした独自の進化を遂げて来たということだ。


 進化の背景の中にある価値観の違いとでも言えばいいだろうか。この世界の人々は、あまり急いで移動する必然性を感じていない、ということなのではないか?


 この学園では、大都市である王都に居を構えている教員は、担当する授業のある前日に到着、教員用宿舎で二泊三日を過ごし家に帰るを繰り返すようだ。効率第一主義の前世の記憶からすれば、なんとものんびりしているが、それがこの世界の常ということだ。


 私は左翼側の学園寮に入った。特に管理人がいるわけでもないし、誰が入って来ても誰何(すいか)する者はいない。事前に教えられていた三階の七号室に向かって階段を登って行った。


 学園寮の私の部屋は二人部屋。ここでの私は一学生だ。個室を所望するような、我が儘は言えない。私の方が先に着いたと思ったのだが、既に同居人がいるとのこと。ノックをして部屋に入った。


「はい。どうぞ」


 ノックに気付いて振り向く同居人。美しいストレートヘヤーは烏の濡れ羽色。輝くような黒髪がふわりと揺れた。目が合った瞬間、私は言葉を失った。頭は真っ白になり、霞がかかったよう。一切の思考が停止してしまった。


「ミ、ミチコ」


 思わず私が口に出してしまったのは、前世の妻の名前。彼女は三蝶子(ミチコ)に瓜二つ、いや、生写しという表現の方が相応しいかもしれない。


「初めてお会いしますよね? どうして、私の名前を?」


 濁りのないメゾソプラノが答えた。声まで三蝶子にそっくりだ。


「ああ、あの、昔の知り合いに瓜二つだったものですから。失礼しました」


 少し平静さを取り戻して、私は答えた。まだ荷物を背負ったままということに気づき、少々赤面しながらこれを床に置いた。袋からボストンバックを取り出し、整理を始めながら私たちは話を続けた。


「そういうことですか? じゃ、そのお知り合いと私は同じ名前ということですの? なんだか不思議ですね。改めまして。ルナ様。こちらからは遥か東方。ご存知はないと思いますが、フヨウという島国より参りました。ミチコと申します」


と言って、スカートを摘みミチコは貴族風の礼をした。当然、彼女は「日本」から来たのだろう。今までの成り行きから想定されたことなので、もう、驚きはしなかった。


 この世界でのヨーロッパは、トルコあたりまでを含む巨大な一連邦国家となっている。日本、フヨウというのはどうやら、こちでも独立国のようだ。海に囲まれた地理的条件を考えれば、何とか独立自治は保てているということなのだろう。だが、この世界の文化の中心は、前世のヨーロッパにあたる、ここユーロ連邦王国。彼女の服装も和服などではなく、「西洋」風だ。


 例によって前世風の言い方をすれば、ロシアの姫君が極東の島国の田舎貴族など知る由もない、とした方が、不自然さはないだろう。これは悪魔が仕組んだ罠かもしれない、どこまで彼女を信頼していいのかは、慎重にも慎重を期すべきだろうし。


「ああ、私のことは学園長様から聞いたのかしら?」


「はい。さようでございます。ルナ様(Miss Luna)


「でも。ちょっと。ここでは、私たちは同級生。私も一学生にしか過ぎないの。いちいち、名前にmissとか付けるのはやめてくれるかしら? would like toじゃなくてwant toでお願い」


「そうでした。学園長にも言われました。ここでは全ての生徒は、出自に関係なく平等が原則だと。改めて、よろしく、ルナ」


「こちらこそ。よろしく。ミチコ。って。でも、嬉しいわ。同世代の子とフランクにお話しできるなんて、今まで、なかったから」


「それは光栄ね。でも。初めて貴女を見た時、私も貴女と同じ顔をしていたと思うわ。だって、噂に聞いていたイメージを、遥かに超える美貌だったのだから」


「私のは美麗というより人外ってことだから。そういう貴女も、東洋美人?」


「妙は褒め殺し合いはやめましょう。ルナに同世代の子が、気圧(けお)されていた訳は、分かる気がする。でも、私は違うと思ってくれていいわ。決して、外見だけで人を判断なんてしないから。良くも悪くもね」

 本当に、こういう出会いとは思ってもみなかったのよ。でも、だけど、悪魔が考えたイヤラシイ設定がありそう。


 あらすじに、ここまでは書いています。これから先、仲間も増えてきますが、それもゆっくり。ミチコとの関係は、全体からみれば、わりと早めに進展するかな? 主要メンバーが揃ったとこで、ある事件をきっかけにみたいな。


 ミチコの和名(この世界では英語が公用語ですからMichikoとしか書かないですが)は、三蝶子です。読みが無理無理のキラキラネームですが、蝶の文字に意味があります。


 性格については、ルナは前世の記憶もあり普段は合理的で冷静だけど、十五歳なりの幼さがあり、恋愛については奥手です。さらに、心が強い方ではないので、ちょっとしたことで動揺したり、感情を隠せなかったり……。一方、ミチコはお姉さん系。しっかりしていてバブみ(これが出てるかなぁ〜)がある感じ。だんだん、ルナというトンデモ魔道士が、自分の前では特別で、幼い女の子になってしまう状況に強く魅かれて行きます。


 ああ、そうそう。得意じゃないです。話せないです。がっ。少しだけ英語ネタも。wouid you like toはみんな知ってると思いますが、知り合いから聞いた「イギリス人って、こんな気取った言い方するんだぜぇ」なのとか。ルナが話しているのは米語っぽい英語ですが、want toをwannaという、ほどでもない、みたいな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 19/19 ・運命! ああ、こういうの書きたいぃ [気になる点] 学校内がなかなかリアルに浮かび上がりました。 [一言] 外国人が翻訳サイトを使って読む事を意識するなら、名前はカタカナが…
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