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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
【外伝】Amazing Grace〜タマコの物語

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学園のマラソン大会

 さて。さて。ああ、聞きたいでしょ? 学園生活といえば、出会いよね! あはは。私はね。ここは二人のママとは違うのよ。ハリス君っていうのだけど、パラディンメインのイケメンではなくてハンサムな男子。そういうクラシカルな言い回しが相応しい、金髪碧眼の偉丈夫だったわ。


 聖騎士は、クラスの性質からか「君たちは僕が守る!」みたいな、ちょっと肩に力が入ったというか、悪く言えば、上から目線な人が多いのだけど、彼は、違った。とても紳士的で優しい。って、なんだか、フィルター入ってるかな?


 強い敵と戦うのなら盾は必須だけど、冒険者にはあまり向かないという点も自覚した上で、一緒にパーティを組むことを提案された。もちろん「告白」じゃないわ。この時点ではね。


 彼の防御力、私の火力と治癒があれば、最悪、二人っきりでもパーティが成立してしまう。さらに、聖騎士は私と同じ光属性、自分で自分を治癒することもできる。練達した聖騎士は、ボス戦で敢えてダメージを貰い、自己回復する時のヘイトで、タゲをとる技も使うこともある。これからの冒険者を考えると、お互い実用的と考えてのパーティ結成だった。


 でも、これも運命なのだろうか。彼はドルム領の出身。卒業後のミュルムバード行きも、自然な形で暗黙の了解となっていた。ちなみに、生徒数減により、パーティ五人縛りというルールは既になくなっていた。


 そんなこんなで、ママと同じように結果、将来的にではあるけれど、生涯の伴侶を得てしまった私。順調に学園生活を楽しく有意義に過ごしていた。そして二年の春。卒業を前にした競技大会。中止と聞いていたのだが、ちょっとしたサプライズがあった。


 ルナママが学園長に掛け合ったらしい。競技大会は無理だが、思い出作りということで、森と学園を往復するマラソン大会が催されることになった。言い出したからということだろう。ルナ、ミチコママはオープン参加することになっていた。


 結果? まぁ、みなさんの予想通りかな。オープンだから順位はないけど、ルナママは学生より大きく引き離されてビリ。ミチコママはビックリの三番目。私はちょうど真ん中、五位ということになった。


 午前中で競技は終わり、お昼は学園の校庭にグランドシートを敷いて、みんなでいただく。ママたちは、職員合わせて十五名分のライスボールを二人で握ってきていた。形を見るとどちらが作ったのかは一目瞭然。綺麗な俵型はミチコママに違いない。不得意なのに頑張るルナママ謹製のを、私は選んで頬張った。


 ルナママの思い出への拘りは、病的とも思えるくらい強い。それは。そうだろう。彼女には千年の寿命がある。彼女にとって楽しく、充実した今を(よすが)に九百年の「余生」を過ごすしかないのだ。もちろん、今回のイベントは、我がことのため、というような狭量な気持ちではないだろう。


 千年の寿命を持つエルフだから、死線を彷徨った彼女だからこそ、分かる、人の生涯の儚さ。飛花落葉の私たちの生。だからこそ、一日、一日、いや、一秒、一秒を大切に、大事にしていかなければならない。一見、たいした意味もないように思えるマラソン大会、そして、昼食は、彼女たちの心からの贈り物(gift)だったのだろう。


 あっという間の二年間だった。私は無事、学園を卒業し冒険者となった。ミュルムバードに戻りギルド登録する。いきなりの高待遇でシルバーランクをもらった。親の七光なんだろう。実力が伴わない気もして、キラキラの認識票が恥ずかしい。


 パーティはハリスと私、そして、ベルフラワーのみんながメイン。と言っても、エドム、ジャム伯父さんを交えた四人という構成が多かった。


 ルナ、ミチコママは前述のように、研究者中心だったし、リベカお姉ちゃんもナプリへ行って、ジャン叔父さんと行動することが増えていた。二人で冒険者をしていたのでない。ジャン叔父さんの海運業を事業拡大し、魔法なき世界への新たな流通に対応する仕事を手伝っていたようだ。


 さらに、二人が子宝に恵まれて以降は、年の半分くらいしか、ミュルムバードにいなかった。少しずつ、家族がバラバラになって行く。


 四人でやっていても、冒険者ミッションをコンプしていくのは、とても充実していて楽しかった。もちろん、両ママ、リベカお姉ちゃんの行動は全て、世界の未来のためだ、ということは理解していた。


 でも、良し悪しは別として、私がこちらに来た直後、家族みんなとの濃密な日々を思えば、寂しい思いがなかったと言うと、嘘になるだろう。

 ああ、なるほど! ここで、ハリスと出会ったのね。うーーん、確かに、ゲルマン系のイケメンだったなぁ〜。金髪のクラーク・ケント? 私、そっちは興味がないのだけど。


 マラソン大会は、自ら言い出したので仕方なく。お恥ずかしい次第だったけど、とってもいい思い出になったわ。そして、タマコったら、いつも私のこと、こんなに心配してくれていたなんて。なんだか、涙が出そう。


 ミチコ、ルナが作るお握り、三角と書いていたのですが、俵形に改めました。ふと思い出したのです。三角が全国デファクトになったのは、コンビニが普及して以降のお話。それまでは、各地方で独自の形でした。


 ミチコが暮らした京都、関西では、おそらく俵形だったと思われます。幕の内弁当に入ってるようなヤツですね。海苔は江戸時代以降の物ですが、関西ではお握りに、味付け海苔を巻くことがあります。味付け海苔のサイズと、柔軟性に欠ける性質を考えると、俵形は好適です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 俵型おにぎり。。。 握るの難しいんですよね。 素早く握れるのは三角かな。 大河ドラマでは、見事な丸で、 丸って食べにくそう。。。 と思いながら見てた。 タマコはカッコイイ系かぁ。 いいです…
[良い点] 183/183 ・まさかのハンサム! これは意外。 [気になる点] ルナさんの笑顔が両目の奥に映っております。ニコニコしながら娘のほうを見ているに違いない。 [一言] おにぎり考察おもし…
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