表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
【外伝】Amazing Grace〜タマコの物語

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

177/187

タマコの決意

 「事変」の翌日、私はコホクの港からミチコママと一緒に、船に乗った。本来は父を亡命させるために、ギルドが手配したチャーター船だ。チャーター船という言い方をしたが、貸し切りという訳ではなく、護衛二名とともに、特別船室を使うというスタイルだった。


 この船で海の向こうのオステン帝国のマーレまで航海する。あとは一般の乗客に紛れて、定期船を乗り継いで行くことになる。父自身ならばいざしらず、子供を逃してしまったとしても、簒奪者を「罰する」側の者にとって大した意味もないだろう。


 私たち二人は、身の危険を感じることもなく、平穏な航海をすることができると思われたし、実際にそうだった。


 一方、父や家族の運命がとても気になった。だが、今、それを知る術はない。ミチコママは、そんな私の気持ちに気付いていたのだろう。私の魔法について、講義や実地訓練を毎日、欠かさず行ってくれた。魔法に集中している間、私は愁事を忘れていられた。


「うん。うん。タマコは、とても魔力も強いし、筋がいいわ。治癒や防御魔法なら、もう、私から教えることはないくらいに」


「とんでもない。ミチコママには及びもつかないです」


「防御魔法は、タマコも無詠唱で使えるわね。これは、高いところか落ちた時のクッションにもなるから、素早く使えるよう、練習をしておいてね」


「高いところから落ちる?」


 ミチコママは、ルナママとの冒険譚を聞かせてくれた。ルナママのことを語る時、ミチコママは、どこか嬉しそうで、とても優しい顔をする。きっと、二人は強い絆で結ばれているのだろう。


 一通り、プリーストの基礎を学んだ後、私はママと自身の魔法のバリエーションを探っていった。ところ、ミチコママのように精神干渉は難しいらしいが、私には、別の特別なアビリティが備わっていることが分かった。


 「強化」だ。ルナママに教えてもらったRPGというものに喩えると、バッファーということになるらしい。一時的に人の持つステータス、素早さ、攻撃力、防御力などを強化できるということだ。ミチコママ自身は、この魔法を持っていないので、指導は難しいらしい。強化魔法のスキルアップについては、魔法学園に行って学べと言われた。


 魔法を使えると知った日から、私は魔法学園への憧れは持っていた。この力で、どうにかして、人々の民の役に立つ何者かになりたい。それには勉強が必要だ。だが、私が生まれた環境では、望んでも得られぬ夢だと思っていた。信じられない! それが現実になるなんて!


 だが、残念なことに、この世界は「魔法なき世界」になっていくようだ。だとしても、夢を諦める気はなかった。少なくとも私が現役でいられる内は、冒険者を生業にしよう。そのための、魔法学園ということになるのだろう。


 ちなみに、この「強化」は魔道具に対しても有効だった。魔道具については、一度上げたステータスが変わることはない。すなわち、永続的な効能があるようだった。まず試しに、自分の懐刀に試してみたが、ステータス上限まで強化できてしまった。


 続いて、ミチコママのティターニアにも試したのだが、これについては、ルナママが命名した際、既に上限に達していたようで、効果はなかった。


 そんな船旅の日々、楽しいけれど、どこか後ろ髪ひかれる思いを持ちながら、船はミュルムバードの港に入った。もちろん、初めてのユーロ連邦王国。新しい世界、見るもの聞くもの全てが新鮮な世界への期待。ワクワクが止まらない。


 だけど。一族郎党の中で、おそらく私一人、命を救われたばかりか、新しい家族に巡り合え「幸せ」になってしまう。そんな自分を許せないという想いは、ずっと、ずっと、私の心の奥底にあった。


 ルナママが私のために準備してくれた部屋。豪華なだけではない、家具や装飾の一つ一つに、ルナママの愛情がこもっていた。会って数日しか一緒にいなかった「娘」のために、彼女は、考えられる全て。彼女なりの想いで女の子の憧れゼンブ詰めの部屋を作り、待っていてくれたのだ。


 素敵だった! 素敵過ぎる部屋だったので、泣いてしまった。そして「自分を許せない」ことも、堪らずルナママに吐露してしまった。だけど、そんな私を、彼女は「私は幸せになるべきだ。それが父の遺志だ」と言って抱きしめてくれた。


 ご都合主義の身勝手極まる考えだということも分かっている。だから、自己嫌悪もある。だけど、こんなに、私のことを想ってくれる人たちがいる。その芳情に応えるのは人としての義務だ。私は過去を捨てようと誓った。全てを捨ててこれからの人生、この新しい家族と共に生きよう。

 なるほど! 船の中かではこんなことがあったのね。ミチコが私の事を話す時、嬉しそうなんて、何だか聞いてて恥ずかしくなるわね。でも、良かった。あの部屋、派手過ぎるかなと気にしていたのだけど、ちゃんと気に入ってくれていたんだ。


 タマコのクラスはプリースト。ミチコのように防御、治癒以外の魔法も使えるので、この言い方としています。タマコの場合はヒーラーで&バッファーかな。バッファーは、ネトゲだと、ヒーラー以上に重用されますよね。中の人も経験あるんですが、やること超多くてメンドイ。だから人口が少なく、余計にやれる人はチヤホヤされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 177/177 >> ミチコママは、どこか嬉しそうで、とても優しい顔をする。  ここでグッときました。 [気になる点] ちょっと昔のゲームやってますけど。バッファーは神。五人中2人採用…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ