プロローグ〜辞世の句
〜 散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ 〜
これは異世界、パラレルワールドでの「私」の辞世の句だという。花のように散るべき時を知る。死への憧憬を示した句なのだろう。私は、幸いにして、自死を図るような人生を歩まずに済んだ。ただ、私の家族、父母も私を養女としてくれたママたちも常に「死」を見つめるような責務を負って生きていたのだと思う。そう、だから、死はいつも私の隣にあった。
ああ、そうか。ママの一人、ルナママにはエルフとしての天寿があり、おそらく、傘寿を迎えた私より、遥かに長い人生を過ごすのだろう。昨年、ミチコママが卒寿を超える生涯に幕を下ろし、私が、彼女の最後の家族となってしまった。
何か、なんでもいい、ルナママの心の支えとなるものを残したい。そうだ!! 彼女の、私の大切な大切な第二の家族の物語。この世界を救い、人類史が持続可能となることを約してくれた英傑たち。その物語の一端を自伝として、記録することにしよう。
そう思い立った私は、原稿用紙と魔法の万年筆を準備した。いざ、原稿を前にするとなかなか文章が浮かんでこない。初めての自伝、ああ、少し誇張を加えて小説風にしようか。その方が、書き易い気がする。




