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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
二人の結婚

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誓いの言葉

 この連載はいつも20時リリースとして予約投稿しています。昨日、私の手違いで9時リリースになりました。ところ、随分と沢山の方に読んでいただけたようです。ですので、本日分は9時リリースにし、明日から20時に戻したいと思います。

 いよいよ、式が始まる!


 同性婚なので、どちらがどちらということはない。ドレスデザインによる歩き易さで、こう決めた。ミチコが玄関付近、百合の鉢植えを並べた即席祭壇に立っている。リベカが司婚者、リリス、エドム、ジャムがその両側に。


 私は階段上から、介添人役のタマコと二人。タマコ、今日は、ピンクの可愛いイブニングドレス姿だ。髪には私のハナミズキの髪飾りを貸してあげることにした。手をつないで階段を降りる。


 タマコの小さな手は、とても暖かい。


「ルナママもミチコママも綺麗!」


「ありがとう。タマコの花嫁姿はもっともっと綺麗だと思うわ。楽しみにしている」


「本当! 約束だよ! 絶対、絶対、ずっと、ずーっと、一緒だよ」


 「祭壇」の前まで来ると、タマコは離れてリリスの列に並んだ。


 ミチコのシンプルなウエディングドレス姿はとても美しい。東洋人独特のきめ細かい肌、白過ぎないというのも、私と違い健康的だし、ドレスの純白とのコントラストに映える。やせっぽちでもなく、女らしい、しなやかな姿態。ちょっと妬ましい。


 リベカが誓いの言葉を促した。


「ミチコさん。貴女は今ルナさんをパートナーとしようとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも 貧しいときも、彼女を愛し、敬い、助け合い、その命の限り、真心を尽くすと誓いますか?」


「はい 誓います」


「ルナさん。貴女は今ミチコさんをパートナーとしようとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しいときも、彼女を愛し、敬い、助け合い、その命の限り、真心を尽くすと誓いますか?」


「はい 誓います」


「じゃ、指輪はすでに交換してるから。誓いのキスを」


 二人は双方のベールを上げてキスを交わした。ああ、もしかして、人前で堂々とキスするの初めてかも。そうか! そいうことか。形式でしかないし、今更感もあるが、これは、私たちが、誰憚ることなく、パートナーだと宣言したということなのかもしれない。


「おめでとう!」


「おめでとうございます」


「おめでとうございます」


「ママたち、おめでとう」


「急に来ちゃってごめんね。でも、おめでとう! を直接言えて嬉しいわ」


で、もちろん、歌はこれ。賛美歌312番。


♪〜

What a friend we have in Jesus,


All our sins and griefs to bear!

〜♪


「ねぇ。イエスって?」


「ああ、そうか。後で説明するね。これ、前世では結婚式の定番なのよ」


 イエス、そうか。彼は神の子、私は悪魔の子、比べること自体、不敬極まりない。だけど、イエスは人類の全ての罪を背負って磔になった。私もおそらくは。十二歳の時に前世の記憶を取り戻してから、常に死は私の隣にいる。だから死ぬことは怖くもなんともない。宿命として受け入れる準備はできている。


 だけど。だけど。死んでしまえばミチコに会えなくなる。あのしなやかな指で触れてもらうこともできず、伽羅のような香りに溺れることもできない。なんだ。なんなんだ??


 私、ミチコを幸せにするハズじゃなかったの? 全然、全く、違う。依存、強い依存。


 嫌だ。絶対にイヤァァァァァアァァ!!!!


 ミチコとずっと一緒にいたい。ずっとずっと彼女のそばに。だが、私にイースターなど巡ってはこない。


 そんな考えが頭をよぎった時、私の目に涙が浮かんだ。涙腺が緩くなっているのは、いつものことだが、泣くのを止められなくなってしまった。声を上げての号泣は、生まれて初めてかもしれない。化粧崩れ防止の魔法は施しているが、ここまで泣くとお化粧がグチャグチャだ。


「ううん。違うの。嬉しいの、嬉しいから」


「うん。うん」


 ミチコは嘘をついた私の肩を優しく抱いてくれた。素肌にサテンのグローブが冷たく、心地よい。


 泣くだけ泣いたら、心が楽に? そうでもないが、落ち着きはした。


 そして、みんなで昼食会。私は着替えてシャワーを浴び、お化粧も直した。ケーキを焼いて、パスタやソーセージといったご馳走と。やっぱり、お祝いにはねぇ。Dorade、ヨーロッパ・マダイをオーブンで焦さぬよう焼いてみた。みんなで、つつく、鯛の尾頭付き。


 私たちの結婚式は、無事、終了した。


 だけど。私はこの時に至っても、気付いていなかった。いや、分かっていても、現実に目を向けられなかっただけかもしれない。ミチコはフヨウの時から覚悟を決めていたのだろう。だから、このタイミングで式を挙げよう、などと言い出したに相違ない。

 「All our sins and griefs to bear!」。罪深過ぎる私がイエスのように死ねるとは思わない。だけど……。


 賛美歌312番。結婚式の定番でもあり、Keyの名作ゲーム「planetarian(プラネタリアン)」でも、印象に残る使われ方をしていますよね? って、みんな、知らないかな。アニメにもなった名作ゲームなんですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  なんにしても、結婚式が出来て良かったです(*´▽`*)  同性婚の結婚式って、どうなんだろうと思っていたけれど、  むしろ良かった。  区切りがあって、次のクライマックス(?)に  備え…
[良い点] 166/166 ・わーお。泣いた。おわー。相当追い詰められてる。 [気になる点] サテンのグローブ。こういうとこか。妙なリアリティと情報エントロピー。 [一言] あ、気づいたけど、ベール…
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