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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
皇帝の狂乱

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破滅の予感

 王宮では、ギルドマスターや王と、初めて話した隠し部屋に通された。オンライン会議には、龍王、魔王も参加しているようだ。これは、魔法世界の幹部勢揃いというところか。


 ノルデンラードの時よりメンバーが絞られているのは、むしろ事の重大さを示している。まず、王、オリル十四世が口火を切った。


「ルナ君、ミチコ君、お疲れ様。実はとても悪い知らせだ」


「ええ。この雰囲気、覚悟はしておりますが」


「オステン帝国のこと、なのだが」


「ま、まさか!! オステンの皇帝が感染したと?」


「そうか。ルナ君ならノブナガの件から容易に類推できるのだな。残念ながら、ご明察だ」


 オステン。東の大国。この大陸は、大雑把にいえば、ユーロ連邦、魔族領、オステン帝国で三分割されていると思ってよい。しかも、人口、領土という点ではオステン帝国が群を抜いている。


 人口はユーロ連邦の約十倍。領土も優に四倍はある。東方の国なので、魔法の恩恵はあまり受けてはいないが、その分、火薬の利用など物質文明を発展させている。


 人口も領土も遥かに他の二国を凌いでいるオステン帝国。魔法によるユーロ連邦の発展があり、今は経済的な遅れをとっているものの、将来は世界の盟主になるに違いない国だろう。であるが故に王、皇帝と称している、は盟主となるに相応しい人物だったようだ。


 内政を重んじ、経済発展に尽くす。この国は中央集権色がとても濃いが、むしろ皇帝の統率、指導力は国の発展にプラスに働いていた。しかも「金持喧嘩せず」ということなのだろう。これだけ広い国土を有しているオステン帝国の国境紛争は、現国境が確定した千年以上前から皆無だった。


 魔族対現ユーロ連邦の争いが生じた際も、中立を保っている。歴代皇帝には脈々と平和主義の血脈が受け継がれてきたはずだ。だが、あのウイルスは正邪を逆転させる。


 皇帝とて人間だ、将来的な優位を信じつつも、今のユーロ連邦の繁栄を妬ましく思う気持ちが、全くないとは言い切れまい。感染してしまえば、異常な領土拡大妄想に取り憑かれても、いたしかたないということだろう。


 さらに、現在の皇帝は傑物だという点も、逆に事態を悪くしている。カリスマ性が高い人物であればあるほど、二次感染者も多いと考えられる。


 ギルドマスターが続けた。


「オステン帝国は、ユーロ連邦と若干の交易はあるものの、政治的には鎖国体制を敷いている。大使館もなく、唯一、最近できたマーレ本部からの情報が頼りだ」


「皇帝の感染はどこまで確度が高い情報なのでしょう?」


「うむ。オステン正規軍が西に向かい進軍を開始した。まもなく、ユーロ連邦領に到達する。それだけだ」


「西にある主だった国はユーロ連邦のみと考えられますが、それは、国対国の戦乱がありそうだという意味でしかないのでは?」


「問題は、その進軍の方法だ。自国領内を略奪と虐殺を繰り返し進んでいる。もう一点、我が方のスパイが諜報活動を行おうとして、例の頭痛に襲われた。三名の内一名が命からがら逃げ帰り分かったことだ」


「なるほど。そういうことですね。では、今からオステン領内に入り、進軍を止めるということですか?」


「いや。それでは内政干渉になる。西への進軍。意図は明白とはいえ、戦線布告されたわけでもない」


「しかし、指を咥えてみているだけでは、オステンの罪もない市民が次々と殺されていきます。私が呆けていて対処が遅れたのです。ですから一日も早く!」


「ルナ君。気持ちは分かる。他国領での武力行使などできぬ相談だ。それは侵略行為になる」


「ならば。私一人で」


「すまない。どうか。どうか。自重してくれ。この件は、市民が虐殺されたという事実は、君のせいではないことは明言しておく。我々とてどうすることもできなかったのだ」


「ルナ。無茶を言ってはダメ。分かっているでしょ? それがどんなに無謀なことなのか。そして、お願い。お願いだからもうやめて。正義のため、より多くの人命のためでも、人を殺すのは。貴女は、また壊れてしまう」


 私がマリアの件以来、この一年近く世界の異変に関われなかったために、沢山の人死(ひとじに)を出してしまった。だが、もっと早くこの事態を知ったところで、できることなどなかったという、ギルドマスターの指摘はもっともかもしれない。


 進軍といっても、最初からまとめて、ひとかたまりで進んでいる訳でもないだろう。各所から合流地点目指していると考えるべきだ。私にはレーダーもソナーもない。土地勘もない広い大陸を飛び回って、目視だけで敵を見つけて撃破する? 不可能だ。見つけたとしても本当に敵だとどうやって見分ける?


 再び、オリル十四世が受けた。


「我らとて、彼らが大きくなりすぎぬうちに叩いておきたかった。だが、それは、できぬ相談だった。もはや、正面戦争を覚悟しなけれならない」


 魔王が割って入った。


「だが。ルナ。正面戦争になったとして、我々、なぜ余が我々( We)というか分かるな?、に勝ち目はない」

 嫌な予感は見事に的中したようね。世界一の大国の皇帝、フヨウの件とは、全く規模が違う気がするわ。


 一年の間に、トンデモな自体が持ち上がっていたようです。魔法がなくとも、銃器がある軍隊はこの世界では、強力です。果たして?

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― 新着の感想 ―
[一言]  金持ち喧嘩せず……は初めて聞きましたが、  よくよく考えてみれば、  少し、冷たい感じも受けますね。  「利益」にならないことにかんしては、  割れ関せず……って意味でもあるし。  ふむ…
[良い点] 160/160 とりあえず銃器はやばいですね。弱点すぎる [気になる点] ラスボス感ですよ。一気に転落していく〜 [一言] 我々、なんでしょうね。お互いに死屍累々ってこと?
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