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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
皇帝の狂乱

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タマコのアルバイト

 まだ少し、無理はしているが、なんとか海豚亭で歌えるくらいには回復したのだろう。その夜。ミチコと二人部屋の中。


「もう。渡しても大丈夫かな。これを」


 それは綺麗な和紙に包まれたブロンドの髪だった。


「マリアの?」


「ええ。そうよ。あの時のルナは普通じゃなかった。遺品なんて考えもしなかったでしょ?」


「ありがとう。ミチコ。私が死んだら、ミチコの髪といっしょに棺に入れてね」


「バカ。貴女が先に死ぬとは限らない」


「ダメよ。ミチコ、絶対、絶対、貴女のお葬式は出してあげないんだから」


「今のその言い方。ルナ。少し、元気になったのを感じるわ」


「みんなのおかげよ。ひとまず、ミチコにお返しをしておくわ。Hしよ?」


「ええ」


 少しずつ、薄紙を剥がすように私は、前に進むことができるようになっていた。少し前から冒険者としての仕事には復帰していたが、簡単なものを選び、一、二泊で戻れるものばかりだった。


 だが、私の回復具合に合わせてくれたのだろう。リリスパーティとのアライアンスで、久々、大規模なミッションが決まった。ミッションに行くと二週間以上、帰れない。今までは、私が引き篭りだったこともあり、タマコのご飯はなんとかなっていた。さて、どうしたものか?


「大丈夫です。タマコは一人でお留守番できますから。今までだって……」


「うーーん。そやけどなぁ〜。一、二泊やったら、食事も作り置きできるけど、今回は長いしなぁ」


「海豚亭のマスターに頼んでみたら?」


 エドムは、目の付け所が違う。


 相談してみると、マスターから意外な提案があった。


「なぁ、タマコちゃん、いっそのこと、ウチでアルバイトしないかい? 食事は賄いってことにして。夜、遅くならないうちに誰かが送るから」


「え! いいんですか?」


 タマコの目が輝いた。


「あ、ああ。こっちもね。実は、ありがたいんだよ。この間、タマコちゃん来ただろ。冒険者の間で評判になってて、今夜はいないのか? ってあれから毎日言われてるしな」


「おお、看板娘かぁ〜。ほんなら、お給料いっぱいもらわんとなぁ」


「あはは。時給銅貨二枚でどう?」


「え! それは。ちょっと多い? ま、タマコ、貯めておけばいいわ。後で制服買ってあげる。あ、これも、貸与だよねぇ〜 マスター」


 時給約二千円って、マク●ナルドの倍じゃん。タマコにはエプロン付きのメイドさん風ドレスを予備含め、二着買って、請求書をマスターに回しておいた。


 てか、ラテ●ナじゃんね。そう思って、ピンクのリボンも買って、髪をツインテにしてあげた。メッチャ似合う。やっぱ。ロリロリはツインテが定番。って、なんか、昔、ウザイメイドを批判していた気が。うーーん。私がそっちに流れたかも。


 ね。タマコって可愛い❤︎でしょ?


 でもね。「戦国時代」の武家の女の子って、政略結婚はもちろん、敵方に人質として預けられることだってある。だから身についているのよ、(こび)の売り方。ちょっと男にちやほやされたいとか、そういうんじゃなくて、彼女らの媚は命がけ。何とか敵にバッサリやられるのを思い留まらせたい一心。


 最初は、媚の「イタさ」が無性に愛おしかった。だけど、今は普通に素直に気持ちが出るようになってきている。彼女だって、あの小さな体に余る重荷を抱えているに違いない。でも、一生懸命、前を向いている。私も見習わないとね。


 ミッションは貴重な光の魔導石のダンジョンだった。雑魚狩りは順調に進んだのだが、ボスに手間取った。マシン系の巨大なボスで。硬い。硬い。大きいので上の方には剣が届かず、加速の技を使った高速剣で、バラバラにすることもできず。再生はないようなので、少しずつ、足から切り飛ばして行ったが、倒すまでに一時間近くかかった。


 RPGのバトルフィールドと違って制限時間があるわけではないが、思い出した。確か、いたっけ、超硬い敵。前世ではネトゲのPS(プレイヤースキル)はそれなりにあったのだけど、あのミッション、制限時間の四十五分で削り切れるかが勝負だった。懐かしい。ああBGMが頭を回る。


 ということもあり、冒険者としての日常を取り戻していった私。秋が過ぎ冬が来て、また、私とミチコの誕生日。去年はそれどころではなかったが、今回は、タマコ用に、ホイップクリームを絞ったイチゴケーキを作った。正確にいうと手を下したのは、ほぼミチコ。それは、いつものこと。


 とにかく楽しくやろう。パーティのみんなで、年末は温泉へ行こうということになった。翌日、休暇届を出しがてら、ギルドに顔を出したのだが。ああ、嫌な予感。アロン本部長がお呼びだそうだ。


「ルナ君。ミチコ君と伴に王都に飛んでくれないか?」


「王から直接のミッションですか?」


「そういうことだ。ミッションの内容は、私にも知らされていない」


 一年ほど、私は機能不全に陥っていた。その間、世界の異変がどう動いていたのかは知らない。情報がない。だが、王からの直接の呼び出しで、かつ、本部長にも教えられない案件。とても嫌な予感がした。


 本日はミッションを伝えるのみのようなので、日帰りできるだろう。荷物の準備は不要と判断し、私はサラでセラを呼び、ミチコにギルドに来てもらった。


 二人で旅の渦へ。久々に会うギルドマスターは、かなり緊張した面持ちだった。しかも「詳細は王宮にて」と言われてしまったのだ。ますます嫌な予感がする。

 冒険者酒場でアルバイトと聞いて、前世で観た「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。」を思い出したのよ。ね。ツインテでしょ? 後者は前に言ったわよね。「うちのメイドがウザすぎる!」よ。2期まだぁ〜 私、誰に言ってるのかしら?


 冗談はこれくらいにして。そして、そして、平穏な日々は続かない。王から直接の呼び出し。嫌な予感しかしないわ。


 マリアの遺髪の件は、エピローグにちらとだけ書いてありますので、お見逃しなく!


 で、中の人ですが、コロナ禍の本業ピンチもあって、マ●クでデリバリーのバイトしてたんですよ。時給二千円! うううーー、それくらい欲しかったよ。


 もひとつ。硬いボスというのは、FF11(昔ですねぇ。レベルキャップ75時代)のお話。アトルガンミッション「少女の決意」のAlexanderアレキサンダーをイメージしています。硬い硬い。強いというより、制限時間45分で削り切れるかの勝負。今はレベルキャップ上限が上がったので、楽勝なのかもですが。戦闘BGM「Ragnarok」が耳に残ります。なかなかの名曲ですよ。「Fighters of the Crystal」も好きだなぁ。って、誰も知らない予感。

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― 新着の感想 ―
[一言]  バイト二千円は美味しい。。。  ちなみに私はロッテリアでバイト経験あり。  今はバイトないですよねぇ? ( ;∀;)  東京はあるのか??  メイドがウザすぎる。。面白かった!  なか…
[良い点] 159/159 ・追い詰められる感じ。  立ち直ってからのまた。  ゆるやかなのが返ってよい [一言] んで、やっぱり元ネタ分かる率がアレでした。ラティナはわかった
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