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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
本能寺の変

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武士の嗜み

 ミチコは説得を続けようとしたが、ミツヒデの表情を見て心を決めたようだ。


「ミツヒデ、でも……。と言っても聞いてはくれないのね。分かったわ、タマコは私が責任を持ってユーロ連邦に連れ帰ります。そして、私とルナの養女にします。いいですね?」


「ミチコ姫。私のわがままをお聞き届けいただき、ありがとうございます。ですが、養女?」


「ええ、ルナは私の大切なパートナー」


「ああ。なるほど! それは、ようございました!!」


「ごめんね。女の子で」


「何を仰いますルナ殿。この国では『男色は武士の嗜み』とさえ言われております。男同士はよくて、女同士がならぬとすれば、道理が通りませぬ」


 ああ、確かに。忘れていた。(いにしえ)の日本は同性愛に対して、ずいぶん大らかだったのだ。


「ミカ本部長、よろしいでしょうか?」


「ギルドマスター経由で、国王にもお話いたしますが、説得は私にお任せください。ミチコさんはタマコさんを連れて船でお逃げください。ミツヒデ殿、今日の夕刻までにタマコさんをギルドにお連れくださいな」


「何もかもありがとうざいます。ですが、私に手を貸したとなれば、こちらも?」


「問題ございません。いかに王といえどもギルドを敵に回す愚は犯しませんよ。ここは治外法権とお考えになってよろしいかと」


 その日の夕刻、ミツヒデはタマコを連れて再びギルドを訪れた。漆塗りのような光沢のある黒髪に黒曜石の瞳、とても利発そうな子だ。将来、とんでもない美人になるであろう整った顔立ちは、どこか、ミチコに似ている? 姉妹と言っても通じるかもしれない。


 タマコは、珠子? 後の細川ガラシャではないか? だとすると本能寺の変の時点では成人近かったと思う。まぁ、思いっきり歴史は変わっている。そもそも、この世界にキリスト教は、存在しないのだし。


 彼女はまだ十歳だが、既に魔法が発現しているらしい。属性は光。それも相当強い魔力を感じる。ミチコと同じプリーストとして、とても優秀な魔道士になるに違いない。十五歳になったら、魔法学園に入学させるといいかもしれない。だが、父にいやいや付いて来たような様子だ。


「私も武家の娘。お父上が、この国のため、敢えて反逆者の汚名を着て死すると仰るならば、私も運命を共にいたします」


「ならぬ! 私が反逆者、謀反人となるのであれば、一族郎党、無事では済むまい。なれば、誰が、我が家の血筋を繋ぐ? タマコ、お前は生きて、我が血統を残すのだ。いいな」


「お父上、しかし」


「口答えは許さぬ! よいな」


「はい」


「これは我が家に伝わる伝家の宝刀。魔法を持って生まれたお前のために、受け継がれてきたものなのだろう。もって行け。我らが生きた証を」


 彼が差し出したのは鞘に螺鈿の装飾がある懐剣。刀としての実用性はない装飾品に見える。武器として使用するものではなく、光属性の魔法を補助する魔道具だろう。ミチコの神楽鈴と同じような役割ということだ。


 でも。コレって。楠木正成、櫻井の別れ? 青葉茂れる♪ まぁ、そんな感じだが、武家の娘であるタマコ。厳しい教育を受けているということだろう。父の命には、素直に従うしかなかったようだ。


 この世界の女性は、人質として見も知らぬ者に預けられる、などということも珍しくない。父の言葉は、自分を想いやる強弁ということを理解したのだろう、心を決めたようだ。


「タマコ、想いはいろいろあると思うけど、貴女はとても優秀な魔道士になれるわ。だから、私たち二人が親代わりと思ってくれていいのよ」


「あ、ありがとうございます。ミチコ殿、ルナ殿。これからお世話になります」


「殿はやめて、養子縁組をしようと思うから、これからはママ(Mum)でいいのよ」


「え! 急に言われても、恥ずかしゅうございます。おいおい、そのようにお呼びいたします」


 まだ十歳といっても戦国時代を生きる子供。なかなかしっかりしているようだ。ミツヒデはタマコをギルドに残して明朝の作戦に備え帰宅した。ミカ本部長、タマコを交えての夕食。


 いやぁ〜 やっと和食を食べれる。今回はハモの湯引き! ちゃんと骨切りをしてある本格的なものだ。そろそろ夏祭りシーズン。祭りには、ハモどすなぁ〜。


 夕食を終え、少し仮眠する。その深夜。梅雨の晴れ間。本能寺の変の史実と同じ、当日は晴れていた。六月の花、紫陽花が咲く中を私とミチコは迷彩コートを着てミツヒデとの合流点に急いだ。


 ギルド本部は、前世の京都市役所近辺の高瀬川沿い。ホンノウ寺は戦国時代と同じ堀川四条だから、少し距離がある。目立つのを避けるため逆方向、東へ。鴨川の手前、先斗町を南、四条通りはできるだけ避けて少し北、錦市場のあたりを西へ進んだ。


「日本」の気候は久々だ。特に六月は、とても蒸し暑い。到着してみると、ミツヒデ始め多数の兵士たちが世闇に紛れ目立たぬよう、集合しているようだった。


「ルナ殿、こちらの先がホンノウ寺。外壁がこのようになっており、寝所はこのあたり……」


 地面に木の枝で地図を描きながらミツヒデが説明してくれた。


「分かったわ。暗殺が成功したらすぐ、こちらに戻るということでいいわね」


「はい。ルナ殿の戻りを確認したら、我が手下は正門より切り込みます。今日は晴天。火縄銃も使えるでしょう」


「くれぐれも注意してね。バーサーカー化した二次感染者とは尋常に斬り結ばないこと。常人では勝ち目はないわ」


「心得ております。では。お気をつけて」


「ありがとう」

 珠子は前世の細川ガラシャ。前世なら既に細川家に嫁いで子供もいたはず。パラレルワールドといっても、完全一致ではないみたいね。


 「桜井の別れ」は太平記のお話ね。楠木正成が勝てぬ戦いに赴く際、息子・正行に短刀を授け故郷に帰れという逸話よ。お前は生き延びていつの日か朝敵を討て、ってことなんだけどね。戦前の教科書には必ず取り上げられていて「青葉茂れる♪」は、物語にちなんだ唱歌だっわ。


 ルナとミチコに是非子供を!という発想が中の人にあって、明智光秀の子供なら細川ガラシャだなぁ〜、みたいな流れで決まりました。波乱の生涯を送った人ですし、すごい美人だったとも伝わっていますしね。ネタバレをしておきますと、彼女が、本編終了後始まる外伝の主人公です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 149/149 ・タマコ、タマコですか。  とりあえずおめでとう!(何がじゃ) [気になる点] やっぱりですね、妊娠出産は欲しいと思っちゃうんです。 いや邪道なんですけどね。 [一言] …
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