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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
本能寺の変

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ミツヒデの願い

 翌朝早々ミカ本部長に亡命の件を相談してみると、既にギルドとして手を回しているとのこと。ミチコと二人、胸を撫で下ろしているところに、ミツヒデが訪ねて来た。


「初めましてルナ殿。この度は当方の無理無体なお願い、お聞き届けいただき恐縮至極に存じます。おおお、ミチコ姫、お懐かしゅうございます!」


 彼はミチコを(Lady)と呼んだ。まぁ、諸説あるのだけどね。本来はこの国の王の正室となるべき存在だったのだから。


「ミツヒデ、その節は大変お世話になりました。ご恩一生涯忘れるものではありません。あれから、貴方が殿のお咎めを受けていないか、とても心配しておりましたが」


「ああ、こう見えても、私は殿の覚えめでたいといいますか。少々、叱責された程度でございます」


 それから、私たちは明日の作戦について話し合った。夜明け前に、私がホンノウ寺に侵入。加速の技を常時使っていれば、警護の者に見つかることはないだろう。


 密かに寝所に侵入し、一次感染者であるノブナガを暗殺。ただちに本隊に戻る。暗殺の報を受けたミツヒデ本隊は、頭痛を生む結界が解けたことを確認し「謀反」を敢行する。


「殿、ノブナガ様はミチコ姫へのなさりよう、その他、目にあまる所業もございましたが、それはあくまで個人レベルのお話。天下国家を論ずるに、王としての資質をお持ちのお方でありました。それが、あのような。ノブナガ様に反旗を翻したとはいえ、石山合戦でのなさり様は」


 ミツヒデによると、ある日を境に、ノブナガは自らに反抗的な勢力を戦略戦術もなく惨殺するようになってきたらしい。この世界での石山合戦は、ノブナガが和睦に応じず本願寺に与した者全て、子供に至るまで惨殺したのだという。次第に狂気に走るノブナガを諫めようとする忠臣は、結界により彼の側に行くことすらできなくなったという状況のようだ。


「ミツヒデ殿。ひとつ、お聞かせ願えますか?」


「なんでございましょう? ルナ殿」


「貴方はノブナガの臣下ですよね。今のお話からすると、貴方が二次感染しないのが不思議に思えるのですが」


「これは、私の憶測でしかありませんが。今でも殿の近くに行ける者は、その信望者というか。有り体に申せば主君に全く無批判な平目どもでございます」


「なるほど。吸血鬼の眷属が二次感染したという点と符合しますね。臣下とはいえ、唯々諾々とその命に従うだけの者しか二次感染しないということでしょうか? ならば、カリスマ性の高いノブナガは、その取り巻きも多い」


「はい。今、ホンノウジ寺の守りは百名を超えております。ですが、ご安心ください。私には千名を超える賛同者がおります」


「でも、気をつけて。このウイルスに感染した者はその攻撃力、魔力が格段に上がる。バーサーカーを相手にしていると考えた方がいいわ」


「心得ました」


(とき)に、ミツヒデ、なぜに、謀反の体裁にこだわるの?」


 ミチコにもミツヒデの拘りには理解しかねる部分があるようだ。


「当然でございます。一国の王たるものが狂気に走り民を虐殺したなど、歴史に残してはならぬこと。私が敢えて反逆者の汚名を着ることで、これは、ただの謀反となります」


「ミツヒデ殿、ですが、このまま貴方が反逆者となってしまえば、ノブナガの他の側近が許しはしない。私の前世の記憶。この国と似た歴史の国のお話なのだけど、貴方は後にヒデヨシという人に討たれる」


「な、なんと! では、ルナ殿の前世でも、私とヒデヨシが謀略をめぐらせていたと?」


「謀略?」


「はい。皆様に隠し事などするつもりありません。今回の謀反は、私とヒデヨシの(はかりごと)。ヒデヨシこそが、ノブナガに代るこの国の王に相応しい。私は、反逆者として彼に討たれる所存です」


「ま、待って! 大恩ある貴方をむざと討たせる訳にはいきません。どうか、逃げてください」


 ミチコが悲鳴のような声を上げる。その言葉を受けてミカ本部長が続けた。


「そうでございます。ギルドとしても通報者の身の安全を図るは最優先事項。コホクの港に亡命用の船を手配し、早馬も準備いたしました。どうか御身大切に」


 本部長によれば、すでにユーロ連邦にミツヒデ亡命の根回しは済んでいるとのこと。フヨウをはじめ東側諸国にユーロ連邦大使館というものは存在しないため、なんとかして、領内まで逃げる必要はあるのだが。


 ちなみに、コホクとは、日本の舞鶴に当たる。早馬を飛ばせば、京都から半日程度で到着できるだろう。


「身に余るありがたきお言葉なれど、これは、私、武士(もののふ)としてケジメにございます。私のみ逃げたとしても、我が家臣に災禍が及ぶやもしれません。私がヒデヨシに討たれる。そのシナリオこそが、万事を丸く収める唯一の方法かと思います」


「ミツヒデ、ダメよ。そんな。いいじゃない。貴方はよくやっている。だから、今は自分のことだけ考えて」


「ミチコ姫のお気遣い、身に余る光栄に存じます。我が事を考えよと? ならば、ならば、お願いがございます。我が娘。タマコをユーロ連邦にお連れ願えませんでしょうか? 私が討たれるということは、一族郎党も同じ運命でしょう。娘可愛さの愚かな父の願い、叶えてもらえませんでしょか? それに、あの子には魔法があります。将来、皆様のお役に立つやもしれませぬ」


 ミツヒデが謀反に拘るのはノブナガの名誉もあるかもしれないけど、自ら主君を「売った」ことへのケジメじゃないかしら? 武士ってメンドクサイ生き物ね。前世の山崎の戦いもあっさり方が付いている。この世界でも彼は勝つ気もないってこと。でも、タマコって珠子?


 ということで、いろいろ謎も多い本能寺の変〜山崎の戦いですが、この世界では光秀&秀吉の策謀とギルドの暗躍となっておりますw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 148/148 ・んおー、ヒデヨシー! まじっすか。そうなるかぁ [気になる点] 父の覚悟、ブシドー、うーむ。なるほどそうなりましたか。 [一言] んで娘さん、どんな人なのかな? 次回に…
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