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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ゴブリン族の略奪

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ロードとの決闘

 リリスが突然しゃがみ込む。屈強な狼族二人も舌をだらりと出し、息苦しそうだ。伏せの姿勢でへたり込んでしまった。


シャーン!


 こういうピンチにはこの音。ミチコが魔法障壁を張り巡らしたようだ。


「あ、直った!」


「おおお」


「ミチコは大丈夫だったの?」


「少し頭痛がしたけど、おそらく、みんなほどではないと思う。若干の耐性はあるみたい」


 ウイルスに感染した一次感染者、マスターが出す特殊な結界魔法については、報告もしていたが、少々甘くみていた。バンパイヤで経験したものより、その威力も影響範囲も大きくなっているようだ。ミチコの魔法障壁で保護されてはいるものの、四人はこの場所から動けないではないか。


 そうこうしている内に、ゴブリン族が穴から出てきてしまった。大概のゴブリンは身長が一メートルくらいだ。緑色の肌、裂けた口元、人から見るとグロテスクな姿ではある。


 先頭の一人が一際大きく体格も立派だ。皮の三点止めベルトに剣を携えている。おそらくコイツが族長。ロードということなのだろう。


「ここは私に任せて。考えがあるの。一応、説得もしてみるけど、ダメだった時は、お願い」


「心得た」「分かったわ」


 私は魔法障壁バリアから進み出た。ゴブリンロードと対峙する。


「ねえ。あなた方。私たちの説得に応じてくれる気はあるかしら? 無益な殺生はしたくないの」


ガハハハハハ!!!!


 少々、癇に障る声でゴブリンたちは笑った。


「これでもかしら?」


 私は胸に手をあて、クロスペンダントを肌から離した。たちまち、私の目はルビーに輝き、白銀のオーラが天高く登っていく。彼らの哄笑は、ピタリと止んだ。


「あなた方に勝ち目はない。ここで皆殺しになるか、投降して生を掴むか。さあ! 選びなさい!」


「確かに、お前、強い。オデら殺されるかもしれない。でも、オデにも矜恃がある。オデと勝負しろ。オデ負けたら、皆、お前に従う。だけど、お前、女。オデが勝ったら、お前、犯す。犯して殺す。いいか?」


 やはりあの魔法ウイルスは人を狂わせると表現するのは間違いだろう。大局的に考えれば合理性はないものの、ゴブリンロードの理屈も一応、筋が通っている。


「分かったわ。私が負けたら好きにするといい。でも、あなた方、本能に逆らう行為だったとしても、今まで平和にやってきてたじゃない? なんで、今になって、こんな馬鹿なことを」


「女、なに言ってるか分からん。オデら人喰らう。女は犯す。なに悪い? オデらの勝手」


 だが、核心の合理性という点では、どこか狂っているというか、真っ当な判断に思考が行かないよう、何かにブロックされている、といった精神構造なのだろう。


「勝負よ!」


 ゴブリンロードは剣を抜き青眼にかまえた。無駄なところに力が入っていない。どこで学んだかは知らないが、ちゃんとした心得のある構えだ。


 ロードを助けるのは無理でも、他はなんとかしてやりたい。彼らに恐怖を与えれば素直に従ってくれるのだろうか? 少し劇場的な演出をすべきなのだろうか? 試してみる価値はあるだろう。


 私は抜かず柄に手をかけた状態で向き合い、じりじりと間合いを詰めていく。その距離、五メートル。サッと加速の技を使った私はロードの横を走り抜けざまに抜き打ちを見舞う。


 走りながらの居合い抜きだ。ロードの後方に走り去った後、加速の技を解き、剣をくるりと回す。


カシャン!!


 剣の柄と革製の鞘の鯉口に付いた補強金属が触れ合う音がして、オベロンは鞘に収まっていた。魔法で切っているのだ、オベロンには血糊すらついていない。だが。


ザッ!! シュゥゥゥウウウウ!!!!!!


 数秒後、棒立ちになったロードの首から、血が噴水のように吹き出した。きれいに頸動脈を切断されたゴブリンロードは、どう、とその場に倒れ伏した。


「うぉぉぉぉ!!!!」


「ぎゃぁぁぁ!!!!」


ダメだ。ダメだぁぁ!!!


 やはりバンパイヤの時と変わらない。残されたゴブリンたちは恐怖で萎縮などしない。制御を失った暴徒と化してしまっている。全く統制がとれない状況で手当たり次第、目に見える者に剣を振り回して襲いかかる。


 ウイルスの影響があるとすると、相当な攻撃力だと思うが、ロードが倒された今、ゴブリンは狼族の敵ではない。またたく間に喉笛を噛み裂かれ、バタバタと倒れていく。


 リリスは、モルスブリンガーを巧みに操って、近くのゴブリンを葬り去っている。私も降りかかる火の粉は払わねばならない。十人ほどのゴブリン族を切り倒した。


 できるだけ苦痛が少ないよう即死を狙う。ミチコは回復に専念しているが、この四人にはほとんど不要なようだ。


 ものの十分で、広場にはゴブリン族の遺骸が百体横たわっていた。


「ダメだったわ。マスターが死ぬと部下は制御を失うということね。できれば、殺したくなかったのだけど」


「そうね。私もガーディアン以外を殺すのは初めてだけど、あまりいい気はしないものね。でも、仕方がないことよ。殺さなければ、もっとたくさんの罪もない人が死んでいた」


「リリスの言う通りよ。いいこと。ルナ、気にし過ぎはダメ!」


 ミチコが続けてフォローしてくれた。

 魔法ウイルスの結界が、魔法障壁で何とかなると分かったのは収穫ね。だけど、このウイルス、単純に人を狂わせるのではなく、人の心に潜む悪魔を顕現させる? イヤラシイにも程があるわ。


 えと、またしても、さらに昔、昔のお話。ルナの決闘シーンは、黒澤明監督の「椿三十郎」をイメージしています。西部劇を思わせる迫力ある一瞬。ああ、逆か。西部劇がクロサワを真似たのか。さすが世界のクロサワ! なのですが、アレ、モノクロだからいいよね。カラーだったらグロいかも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 136/136 ・一閃のシーンいいですね。血がついてないのナイス [気になる点] 殺傷能力ありますね。でも数の暴力はメンドイ、と。 [一言] 暴走ほんと面倒ですね。ゲームでもありますけど…
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