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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ゴブリン族の略奪

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ゴブリン族の隠れ家

 ひとまず、トーリの村で一夜の宿を借りるとして、狼族たちは目立ちすぎる。村はずれで別れて、明日朝、再度集合ということにした。そのあたりで狩りでもして夕食とするのだろう。


 近隣の村はゴブリン族の襲撃を受けて大きな被害を被っていたが、この村だけは無傷。今は雪に閉ざされた農閑期の平和な農村といった感じだ。ずる賢く見えても、ゴブリン族は抜けている。なぜか、この村だけが不自然に被害を免れている点を不審に感じたリリスによって、隠れ家が発見されたということでもある。


 村に一軒しかない宿屋に入った。農家が経営している民宿のような木造家屋だ。客室は二部屋しなかく、一部屋に先客がいたため、ちょっと狭いがツインの部屋にエクストラベッドを入れてもらうことにした。


 夕食はクレープといえばいいだろうか。ブリヌイだった。北の海で獲れるイクラやサーモン、スメタナを添えて。魚好きの私にはありがたいメニューだ。


 私は例によって炭酸水だが、リリスとミチコはウオッカを飲み出した。リリスはかなりの酒豪だから問題ないと思うが、ミチコ、飲みすぎないでね。部屋に戻ると、酔いがきたのだろう、二人とも爆睡してしまっている。


 うへぇぇー。いびきが煩いんですけど。布団に潜り込んで眠ることにした。


 翌朝、二人はずいぶんとすっきりした顔をしている。私は寝不足気味だが、こちらの冬の日の出は九時近い。少しゆっくりベッドに潜っていることにした。


 黒パンとミルクの軽い朝食を食べて、狼族たちとの合流点へ向かう。そういえば、今まで見たことがない武器。リリスがベルトに短剣を挿していた。


「ああ、これ、気になるわよね?」


 彼女が見せてくれた短剣は、モルスブリンガーという伝説とも呼べる名剣だ。漆黒の刀身のその短剣に刺された者は魂を吸われ即死する。その名の通り死を運ぶ剣なのだ。


 柄のところに陰陽マーク、太陰太極図が描かれており、黒い部分の白い丸のところに、光の魔導結晶が嵌っている。すなわち、これは、陰陽を逆転させたモルスブリンガー。本来、闇属性魔法が無効な魔族専用の殺人剣ということだ。


「私の家系はね。狩人なのよ。これは伝家の宝刀ってことで、唯一の生き残りの私が引き継いだ」


 「狩人」とは魔族に恨みを持つ者が結成した結社のようなものだった。過去形で話すのは、先の大戦の余波でもう生き残りはいないとされているからだ。リリスは密かに命脈をつないだ一族の末裔。そうであるのなら、なおのこと、両親はロミジュリみたいな恋をしたということなのだろうか?


「普段は、目立つし、持って歩かないけど、今日は特別。ミチコがいて回復は心配ないしね」


 そんな話をしながら、待ち合わせ場所まで行くと、すでに狼さん二人は待機していた。あっ、ちょっと血の臭いがするのは、朝食を済ませた後だからだろう。狼族たちは二人を乗せ、私は飛んで山道に向かう。


 ゴブリン族の隠れ家は、ここから山沿いに登ったところの洞穴だそうだ。雪の中、モミ、トウヒなどの常緑針葉樹林を登っていくと、なにやら怪しげな洞穴を見つけた。


 入り口の高さは百五十センチくらい。短躯のゴブリン族専用。人が立って通れるような洞穴ではないようだ。同様の入り口が全部で三箇所あるとのことだ。


 冬季の襲撃頻度はめっきり減ったようで、ゴブリンたちは洞窟の中で寒さをしのいでいるのだろう。それを見越した私たちの作戦はシンプルだ。まず二箇所に催涙ガスを噴出する魔道具を入れ、私の魔法で入り口を塞ぐ。然る後、三つ目の入り口で待ち伏せする。どこかのゴブリン専門ハンターみたいなやり口だ。


 一つの入り口は山向こうなので、こちらに仕掛けたら、私が飛んで、残りのメンバーは待ち伏せポイントまで移動する。ということにしていた。まず、魔道具を入り口の奥に放り入れて、私がPKで入り口を塞ぐ。力加減が適当でいいのはありがたい。


ドン!


 大きな音がして一箇所目の天井が崩れ落ちた。


 私が二箇所目に飛ぶ間に二人を乗せた狼族たちが走り出す。山道をものともしないスピードだ。略地図を頼りにもう一箇所を探す。


 それなりにカムフラージュされているらしいが、一箇所目との類似点、妙に木が密集している場所を探すことで、何とか穴を見つけた。


 大きさも同じくらいなので、間違いないだろう。同じように魔道具を入れ、入り口を塞ぎ、合流地点へ急ぐ。合流地点は穴の前が広場になっている場所とのことで、少し上空に上がるとすぐに見つかった。ゆっくりと下降する。


「随分、早かったわね。すぐ見つかって良かった」


「気を付けろ。そろそろ来るぞ!」


 洞窟の奥から何やら声がする。ゴブリン族は最弱の魔族ともいわれているが、集団で行動し、その数も多い。甘く見ていると数の暴力にやられてしまう。今回も百人はいると予想されていた。ゴブリン族が近づいて来た時、皆に異変が生じた。


「あ、頭が……!!!」


 ミチコは東洋人だし、あまりお酒に強い方ではないと思う。だけど、アセトアルデヒド分解酵素は、十分活性化しているようね。二日酔いはみたことないわ。でも、酔っ払い二人に囲まれて寝るのは、ちょっとぉ〜。


 ということは、さておき、リリスのご両親ってツッコんで聞くのも憚られるけど、本当に「ロミオとジュリエット」みたい、だったのかもしれないわね。


 ゴブスレ風、ゴブリン撃退ですが、魔法の結界の影響が出て来てしまいます。ま、でも、ルナは大丈夫なので。


 ブリヌイはクレープやパンケーキのようなロシア料理です。そのまま、あるいは、具を巻いて食べたりします。スメタナは発酵乳の一種です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 135/135 ・酔っ払い〜w やっぱり発想が違いますね。 [気になる点] おや、頭痛……低気圧の魔法かな? [一言] 奴らはバカだが間抜けではない。なるほどいい感じにゴブリンしてますね…
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