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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ゴブリン族の略奪

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魔法の狼

 翌朝、母は睡眠薬が効き過ぎて、まだ寝ているようだったが、その方がいいだろう。軽い朝食をご馳走になって、弟とマリアに見送られ、私たち三人はモスコ本部に向かった。今日は雪。吹雪にならなければいいのだが。


 本部の前には、うわ! とんでもない助っ人? が座っていた。


 魔獣と呼ばれる存在だが、人族とは例によって不可侵条約があり、平和理に暮らしている。狼族だ。青味を帯びた灰色の毛並みに黄金に光る目。通常の狼と外形は同じだが、魔獣と呼ばれる由縁はその大きさだ。


 体高は二メートル近く、体長は五メートルにも及ぶ。どこかのアニメで真っ白なのが出てきたが、こっちは灰色狼だ。しかも二人もいる。


 この種の生き物は龍王と同じテレパシーで話すのだろう。心の中で、話しかけた。


「少し体に触らせてもらえるかしら?」


 二人が首を縦に振る。肯定ということだろう。二人の毛に軽く触れ、私は念じた。


「allow」


「これで、いいわ。貴方達の声が聞こえる」


「なんと、ルナは魔法完全防御のアビリティーを持っておるのか?」


 右側のリーダー格? 二頭の区別はつきずらい、が話しかけた。


「ルナは、龍王をも上回る魔力を持っているとか。隠しておるようだが、感じるぞ巨大な力を。我ら、最大限の敬意をもって接すると誓おう」


 なんだか狼って。ずいぶん格式ばっているようだ。本部長が言っていた移動手段というのは、彼らのことだった。本来、誇り高い狼族、人など乗せないのだろうが、今回の事態を聞き、相応しい魔力を持つものならという条件で、特別に受諾してくれたようだ。


 彼らも冒険者連中と同じ、魔力の強さ、純粋な力に対してはリスペクトしてくれる、ということだろう。


「村々が襲われ、無益な殺戮、女性の前では言いにくいことが行われている。我らとて、このような事態を放置はできぬ。協力は惜しまんのは当然だ」


 ゴブリン族の習性ということになるが、彼らの男は人族を襲うだけではなく、女とみれば陵辱する。本能的な行動ではあるものの、人族からすれば当然だが、許されざる行為だ。


 表立ってはいないが、魔族と人族の和平が結ばれた後、人造血液の提供以外に、商才のある人族が始めて大繁盛しているビジネスがある。


 ラブドール娼館だ。ゴブリン族は陵辱の後、対象を殺してしまうというトンデモな「習性」も持っているので、娼婦というわけにはいかない。魔法でできた精巧なお人形が相手をする施設ということだ。


 いずれにせよ、四角四面に建前を述べ合わず、お互い知恵を絞ってなんとか平和を維持してきたのだが、今回の魔法ウイルスは、それを破壊してしまうようなものなのだろう。


 本来、犬族というのはその骨格の形状から、背中に物を乗せるのは不得意だ。だが、これだけの大きさ。ミチコとリリスの体重くらいなら問題ないだろう。ただ、彼らは首輪や鞍を置くことには難色を示しているようで、二人は背中に抱きつくようにするしかない。


 私は一緒に飛ぶことになるのだが、彼らの移動速度がとても速く、次の街まで当日中に到着できるらしい。今回は、野宿の道具は持たず、非常用の食料と医薬品のみを私が背負うということになった。


 三人とも防寒のポンチョを被る。もちろん、魔法が込められた衣類で、凍傷からも身を守ってくれる。これがあれば少々吹雪いても問題ないだろう。


 ひとまず、この地方を荒らしているゴブリン族の拠点、リリスの丹念な調査により判明した巣穴、を私たちと狼族二人で殲滅するということから始める。


 元々、ゴブリン族についても、ノルデンラード軍が鎮圧にあたっていた。もぐらたたき状態が続いていたが、最後の大規模な巣穴が見つかったということだ。ノルデンラード軍は、ゴブリン族の対応は私たちに任せ、全ての兵力を北に進軍させることを優先した。


「紹介が遅れたわ。私はミチコ」


「リリスよ」


「おう、名乗り忘れたな。我は、青き牙、こちらは、白き風と申す」


 リーダー格が青き牙、もう一人、よく見ると耳のところに白い毛が混じっている、命名の由来だろう。ミチコとリリスは馬に乗る要領で彼らの背中に跨がり、前傾姿勢をとって捕まった。ああ、あのモフモフ、とても気落ち良さそうだ。だけど、私は飛んでついて行くしかない。


「では。本部長、いってきます!」


「ご武運を」


 ええええ〜! マジこれ、戦争ってことじゃない?


 狼族の走る速度は想像以上だった。雪原を矢のように飛んでいく。しかも、疲れを知らぬというような疾走ぶりだ。時速にすると五十キロ以上は出ているだろう。瞬く間に一行は、ゴブリン族の隠れ家近くの村。トーリに到着した。


 ゴブリンはなかなかずる賢い。隠れ家近くの村は敢えて襲っていない。拠点がなかなか見つからなかった所以だ。魔法ウイルスに侵されても、それなりに理性的判断ができているということにも繋がるだろう。

 この世界でも狼族は孤高の存在よ。だけど、人属の窮状、見るに見かねて助けてくれたってことかしら。なんだか、私、気に入られたみたいなのだけど。


 中の人は昔、昔のウルフガイシリーズ(平井和正著)が好きで、前作は狼獣人まで出しました。そもそも狼って、異世界物の定番と言えばそうかな。今月から2期が始まった「転スラ」にも出て来ますよね。


 あっ、それから。狼族に限らず、助数詞は全て「人」に統一しています。これは、この世界の魔法的な生物は人から進化したという設定によるものです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 134/134 ・もっふもふがー、  飛びまくれる事が仇となるとは [気になる点] おおー、なんとなくゴブスレ感。 [一言] 重力使う時は飛べないんですよね。地味にきつい。
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