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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ゴブリン族の略奪

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魔族の蠢動

 食事を終え、シャワーを浴びて部屋に戻る。ああ、こういう平穏な日々がずっと続くといいなぁ〜 と、また、思ってしまったのがいけなかった。何度やれば気が済む?


 サラが着信を知らせた。


「ルナ様 魔王様から(incoming)(call)です。お繋ぎしますか?」


「え? 魔王? 龍王じゃなくて?」


「はい。魔王様です」


「ま、いいわ。繋いで」


「やぁ、未来の我が妻。久しいのう」


「ちょっと、なんで、魔王から直接連絡が?」


「ああ、龍王に教えてもらったのだよ。いいではないか。些細なことは」


「あのねぇ、個人情報というものを、なんと心得ているのかしら? でも、急いで連絡してきたということは、ノルデンラード絡みなのかな?」


「ああ、その通りだ。明日、アロン本部長から正式に要請があると思うが、至急行って欲しい」


「やはり、北での変事は世界の異変と関係している?」


「うむ。なんらの関係があるという点までは、リリス君の調査で明らかになったようだ。だが、獅子身中の虫」


「自分で獅子というヤツ!」


「厳しいことを言うのう。さすが余が見込んだ女じゃ」


「魔族の中には先の和睦を潔しとせぬ者も多い。ルナに指摘されるまでもなく、余への忠誠心も時とともに薄れてきている、と認めざるを得ない」


「どこまでが感染者で、どこまでが魔王への反乱分子かが分からないと?」


「ノルデンラードの北部で起きているゴブリン族の略奪行為は、おそらく世界の異変絡み。しかし、これを奇貨として、内乱、クーデターの火種が燻り始めてしまった」


「魔王といえども、背中のナイフが気になってきたということね。そんな、内部事情まで、私に話して大丈夫なの?」


「未来の妻を信用しないわけがなかろう」


「妻は別として、信頼いただけて光栄だわ。でも、疑心暗鬼になる必要もないけど、過信は禁物。側近も含め注意してね」


「おお、余の身を案じてくれるのか?」


「ええ。世界平和のためにね」


 翌朝、アロン本部長から呼び出しがあった。本部長室には、セム、テラを始め冒険者が十名ほど集合していた。


「かねてから憂慮していた北の変事。やはり世界の異変が関わっていることが、リリス君の調査で明らかになった。魔族の略奪行為については、ノルデンラード軍を中心に鎮圧にあたっているが、異変関連と明らかになった以上、ギルドとしても応援を出すことにした」


 なるほど、魔道士系の冒険者が多いのは軍への支援ということか。


「ルナ、ミチコ二名は旅の渦を使いリリスと合流、モスコ経由で北に向かってくれ」


「他の者は北の海経由で、ペルテへ」


「ペルテ?」


 ペルテは、魔族との境界に位置する人族の要塞都市。先の大戦では激しい市街戦が行われ、双方多数の死傷者を出したらしい。


「モスコ北部でのゴブリン族の略奪行為は、魔族不満分子の反乱を誘発しているようだ。ペルテ周辺の魔族にも不穏な動きがあるということだ」


「反乱と仰いましたね。略奪行為などという生易しいものではなくなっていると? 世界の異変が引き起こす最悪のシナリオが、起きつつあるということでしょうか?」


「その通りだ。魔王も反乱分子に対しては、断固たる対応をするとのことだが、魔族軍本隊を動かすには、少し時間がかかるのだろう。当面はノルデンラード軍に冒険者が協力し、ゴブリン族の鎮圧と北部の防衛ということになる」


 反乱という言い方は正確ではないだろう。ゴブリン族の行為は、不満分子が三百年溜め続けたフラストレーションに火をつけ爆発させた。そして彼らは、魔王に直接反旗を翻すのではなく、魔王と人族の盟約を(ないがし)ろにし、人界への侵攻を企んでいるということだろう。


 反乱分子の中核には感染者がいるのだろうが、魔王の言葉からも、その規模は、感染者と二次感染者では収まらない。略奪行為というより暴動だ。いや、戦争という表現の方が相応しいかもしれない。


 それは、通常の冒険者ミッションの域を超えている。ここに集合したのが十数名と少ないのは、このような事態に対して傭兵となることも厭わず、という者に限り招集をかけたということらしい。思わず、リベカとエドム、ジャムの顔を見た。


「何、不安な顔してるんや。私らは一心同体やろ?」


「そうですよ。ルナさん」


「ペルテでお会いしましょう」


「うむ。全てのミッションと同様に、これを受ける受けないは各自の自由意志ではある。だが、本部長としての責任において、君らにお願いするという点を外すつもりはない。もちろん強制はせぬが、自由意志という言葉で責任逃れする気もないと解釈してくれたまえ」


 魔導石採取でもそれなりに危険が伴うが、これは限りなく戦争に近いわけで、そのリスクは格段に高いはずだ。だが、辞退を申し出る者は一人もいなかった。

 魔王、クーデターというから、彼の身に危険が……とも思ったけど、そうじゃなかった。というか、その程度では収まらなかったということかしら。ペルテ周辺にもおそらく感染者はいるだろけど、それに反乱分子が加担して、大規模になってるわね。


 それはそうと、アロン本部長、さすがだと思うわ。前世の記憶からだけど「判断は任せる」という上司は民主的に見えて、実はソレ、責任逃れじゃない? 失敗したら「お前らが勝手にやった」って言うバカが多いのよね。「責任はとる」と明言できる人は、人の上に立つ資格があるってこと。


 略奪から暴動へ、だんだん大規模になってきます。少しネタバレすると、後日、ルナの予想をも超える規模であることが判明します。もちろん、ルナが本気出せば、敵が何人いようとも問題ないわけですが、倫理に悖る大量殺戮、果たして?


 本部長の方は、この一言大事です。もちろん、後でちゃんと責任をとる前提ですけどね。なに、リーマンの責任なんて、命のやり取りじゃないですから。なのに、何故に、逃げる?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 131/131 ・あー、ゴブリンかぁ。また面倒なことになりそうですね [気になる点] これ絶対死者多数ですよね。そんな未来…というか既に現状でも [一言] 「責任はオレが取る!」と言って…
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