クロスサーペントのミッション
翌朝、エドムとジャムは休養してもらうとして、私たち三人はギルド本部に向かった。もう冬かな。曇り空で雪もちらついている。
「やぁ! ルナ。久しぶり! しばらく顔を見れなくて寂しかったぜ」
時が経ち、誤解や認識違いも緩和されたということだろう。ギルドの冒険者たちは、私たちのことを仲間と認識してくれるようになっていた。妙に怖れられることもなく、フランクに挨拶してくれる。
「お、みんな久しぶり! 休暇だったんだってな。エドムとジャムはまだ?」
セムとテラが声をかけてきた。私の留守中、リリスパーティとのアライアンスをしていた関係上、彼らはミチコの方が話しやすいようだ。
「帰ってはきてるけど、彼らにもお休みが必要よ」
「ああ、なら、ちょうど三人だとむしろ好都合。リリスがいないと、ちょっとキツイかなと思うミッションがあって、一緒にどうだい?」
「ああ、コレね。私たちも休暇明けの体慣らしに、ちょうどいいかも」
「片道一泊二日ぐらいやから。兄弟の休暇中にピッタリやな」
「こいつが、準備体操かいっ! ま、君らならそういうことか。いずれにせよ、魔導石ザックザクで、かなり儲かりそうだからな」
近場の炎の洞窟ミッションとのことだった。ボスのクロスサーペントが巨大化し、上級冒険者も手を焼いているようだ。しばらく放置された関係もあって雑魚も多いようだが、リリスに代わってテネブスをばら撒いておけば、前衛の被害は最小限、ミチコの負担も少ないだろう。
その分、魔導石の埋蔵量も相当あるようで、いいお金になりそうだ。受付で受注すると同時にマイニングクラスの手配もお願いした。
「火属性かぁ〜。ちょっと嬉しいな。スザクをグレードアップしたんや。水属性の矢も使えるデェ」
うっ、スザクのネーミングとずれてくる改造だが、まぁ、黙っておくことにした。
「それはそうと。そのボスガーディアン、今度は首を落とせば大丈夫なんでしょうね?」
「ああ、ゴルゴンは例外中の例外。大丈夫だと思う」
とセム。
「リリスからも話は聞いている。俺たちがとやかく言う筋合いでもないが、いろいろ大変みたいだな。ルナ」
テラはあの一件からなのだろうか。随分と私に優しい。
「まぁ、ちょっとね。嫌な事件が続いたから」
「のんきにガーディアン狩ってるわけにもいかんだろうけど。ま、俺たちで手助けできることがあるなら、いつでも言ってくれ」
「手助けというかなぁ〜。テラ。世界の異変はどうやらとんでもない大事になりそうだ。ルナたちをサポートするのは当然だが、嫌でも巻き込まれるさ」と、セム。
冒険者の間の情報共有はかなり進んでいる。異変に関しての共通認識はお互い持てていると思っていいのだろう。
このあたりの降雪量はさほどでもないが、既に雪中の野宿。だが、これは、いろいろな魔道具もあるのでそれほど苦にならない。お花が見つからないのが玉に瑕だ。炎の洞窟は暖かく、とても快適だった。
問題のクロスサーペントだが、最大級の蛇の倍見当。その名の通り、口が四つ、十字に開く二十メートルほどの巨大なもので、火も吐くようだ。だが、正面からのタゲを私がとれば、みんなの連携で特に問題はない。念のためテネブスを入れたが、必要なかったかも。巻きつかれることだけ注意してサクッと片付け、年末に向けたボーナスをゲットさせてもらった。
ベルフラワーハウスに戻り、エドムとジャムの休暇も明け、またパーティとしてミシンション、夜は時々、海豚亭というなんとなく馴染んだ日常が戻ってきた。
ミチコとのHも通常の頻度に戻っていた。週何回とかは教えてあげないわよ! 当たり前でしょ?
なんとなく落ち着いてきたのかな。冬が深まり、私とミチコの誕生日が来た。十二月二十五日。
古代ユダヤの一日は日没から始まる。だから、クリスマスがいつなのか? というのはあまり意味がない議論らしいし、そもそもイエスの生誕は聖書から推測すると、どうやら別の日のようなのだ。
十二月二十五日はイエスの生誕を祝う日であって、誕生日ではない。私たちの数奇な運命を決めたヤツは、教養がなかったのではないか? と思ったりする。
いずれにしても、学園時代からパーティメンバーの誕生日は、五人で夕食を共にし、ケーキを焼いて祝うというのが私たちのやり方だ。今夜はリベカが焼いてくれたケーキを五人で分け合っていた。
さて、さて。北の異変は気にはなるけど、ひとまず、冒険者としての平穏な日々。このままが、いいなぁ〜と、ついつい考えてしまう。だけど、それって??
えーーっと、次回から、後半の山場? 事件が、連続で起こる展開となります!




