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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ハーピィの里

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悪魔の作為

 今度は下りになるので、行程は少し楽になった。野宿二泊、宿に二泊。五日目の夕刻、私たちは、ベルフラワーハウスに到着。ミチコ、セドム、ジャムが迎えに出てくれている。中に入ると、アロン本部長とリリスが来ていた。早々に報告会を開けということらしい。もう! 疲れてるんだから。でも、仕方がないかぁ〜。


 荷物の片付けを手早く行って、私とリベカはお茶が準備された食堂の円卓に座った。すでに、サラとセラを使ってミチコ経由で簡単に説明はしているが、本日は、本部長直々、龍王をオンラインで招いての会議となった。


「うーーむ。なるほど。ガニメデの遺産によると、魔法ウイルス、正確な表現ではないがこう呼ぶことにしよう、は、心、魂に影響を与える可能性があるという点は確かなようだ。よくない変異が起きるとすると、ジャンの推測は、正鵠を射ているかもしれんな。辻褄は合う」


 奇しくも龍王も「魔法ウイルス」と表現したが、おそらくこれは、魔法そのものを生み出した「元」なのではないか。ウイルスが進化に干渉し、魔法的な生き物や魔法を使える人を生み出した。だが、魔法というものは、人の心、魂と深く関連している。少しその方向性を変えてやれば、人の心を狂わせるパンデミックさえ引き起こせるのだろう。


「ねぇ、龍王様。魔法ウイルスが、何をしたか? は、ジャンの推測として、じゃぁ、それは誰が仕組んだことなのか? という点」


「悪魔の仕業だと?」


「ええ。私の前世の記憶による突然変異、今回は魔法ウイルスの変異、は全く偶発的、偶然の積み重ねという説が有力。進化論の定説では、偶然の産物である突然変異と淘汰によって、生物は進化したと」


「うむ。遺産のデータでも、外来民族はそのようなことを定説と考えていたようだ。だから、魔法ウイルスは変異するが、どのように変わるかは予想できず、必ずしも悪い方向に変わるとは限らぬと、だからあの設備も万一のための備えという位置付けだったのだろう」


「なるほど。あのね。進化論ってとっても不思議なの。私の前世では進化論以前、人は神が創ったものであるという説が主流で、進化論はその古くからの考え方を百八十度変えるものだったわ。神の事を記した書、聖書を真っ向否定する科学だった」


「うむ。聞いたことがある。ルナの前世には宗教というものが存在したのだと」


「そう。でもね。進化論を考えれば考えるほど、人という不思議な生き物、とても複雑な精神構造を持ち、とてつもない文明を築いた者が、全くの偶然で生まれたというのが不自然に思えるようになってくる」


「ふむ。偶然ではなく必然。何者かの意思、誘導があったと?」


「ええ。偶然の中の必然という言い方がいいかしら? 少なくとも今回の事件は偶然なんかじゃない。パレモ島やゴルゴンのボスは、ランダムな突然変異の結果に見える。多分、あれはフェイク。偶然の中に、悪魔の作為、必然が巧妙に隠されているんじゃないかしら?」


「そうか。魔法ウイルス自体は自然に存在し、突然変異を遂げていく。だが、悪魔、ディアボロスか?、がそれを作為的に誘導して今回の異変を起こす引き金を引いたと」


「そう。今回の件、いかにもぉ〜な感じでしょ? 人の心を弄ぶ、反吐が出そうなストーリーじゃない? 悪魔が喜びそうな、彼らの嘲笑が聞こえてきそうな事件だわ。この事態、早く止めないと、どんどん、悪い方向に世界が向かうと思うの。龍王様、観測機の解析を急いで。時間との勝負じゃないかしら?」


「そうだな」


「龍王様。ミュルムバード本部本部長アロンです。諸所、了解いたしました。我々もギルドを挙げてこの危機に対処する所存であります。どうか、人族への支援引き続きよろしくお願いいたします」


「改まって言われれるまでもないが、一つだけ。我は、人、魔族に対して中立ということを忘れてくれては困る。よいな。今回は人族の危機ではなく、世界の危機と認識しておるということだ。それを踏まえて、ルナ君始め、ギルドの協力には感謝している」


「かしこまりました」


 うん? なんか龍王ってこんなに偉かったんだ。タメ口ごめんねぇ。


 オンライン会議終了。さて。さて。ひとまずお土産を広げて夕食だ! リリス、アロン本部長も招待することにした。今回はシャルムで仕入れてきたチーズ。フォンジュ用のものだ。


 ミチコに準備してもらっていた、お肉、お魚、エビ、じゃがいも、そしてパンも! 大きな鍋二つをテーブルに置き、魔法のコンロでグツグツと。もう肌寒い秋の夜にはぴったりの料理だ。


 翌日、疲れてしまったのだろう。目が覚めたらもう昼前だった。ミチコにブランチを作ってもらった。リベカも遅い朝だったようで二人、食堂でスクランブルエッグとサラダとパンをいただく。


 午後もベッドでゴロゴロしながら読書をして過ごした。午後の気怠(けだるい)い日は、立原●秋「海岸●路」。「お・ふ・り・ん」物は、今の気分にピッタリかも。

 ちょっと説明が長くなったけど、分かったかしら? じゃ、魔法ウイルスは誰が? ということだけど。偶発的な事象に隠された必然、意図、企み、そんな感じかしら。手が混んでいるのは、あのディアボロスだからかな。転生の時に聞いた、ヤツの意図の一端が分かった気がするわ。


 「星を継ぐもの」の中でも、ルナと似たような見解を持つ人が登場しますが、これは、私も同意です。人類という稀有な知的生命体が存在していること。それは、本当に偶然だけの積み重ねだけでしょうか? という問いです。キリスト教を信じる方からすると「神は自らに似せて人を創った」な訳で。人は特別な存在ですし、聖書と進化論が無理無理、整合していくことにもなるでしょう。人だけ特別というのは、少々、気になりますが……。


 創るのではなく、進化を誘導したという意味での造物主。上位の知的生命体と言った方がいいかもしれません。アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」や「幼年期の終り」も、オーバーロードの存在と考えると近い感じな気もします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 122/122 ・悪魔的なようで、裏がありそうな。いやーこわいですね。 [気になる点] >午後もベッドでゴロゴロしながら読書をして過ごした。  ぐぬぬ、まさか被るとは。風邪で寝込んでこ…
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