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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ハーピィの里

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麻酔の矢

 作戦を確認した後、リベカが(おさ)に問う。


「ハーピィ族の心臓も左ですか?」


「ええ。そうです。右の羽を狙っていただいた方が安全でしょう」


「よっしゃ。分かった!」


 って、戻ってるし、リベカ。


 打ち合わせを終え、私は上空に上がった。聖域とは森の最深部、円形状の木々に囲まれた領域だ。中心部に木はなく大きな円錐形の天然石? 人工的なものだろうか、高さ十メートルほど、黒く光沢のある巨石が空に向かって鎮座している。


 彼らの伝承では、ハーピィ族は天より降臨したということらしい。その歴史を示すモニュメントということなのだが、あの黒さ。もしやモノリスではないか? と、思えるくらい真っ黒だ。ああ、板状じゃないし、真っ黒なのは映画の方。小説版だと透明との記述もあるんだけけどね。


  ハーピィは宇宙から来た鳥? それは違うだろう。エルフと同じ、魔法の影響で人、もしくは、鳥から進化したものだと思うが。


 少し高めの上空から下を見る。先日は雨が降っていたが、今日は快晴。目標を視認しやすい。いた。深い緑の針葉樹の中に、ひときわ輝く鮮緑色の翼。


 よし!!!


 私は笛で合図を吹いた。思った通り、とても高い音だ。人では、若者にしか聞こえないくらいの可聴限界だろう。でも、私にとっては森全体に響き渡るような音色だ。


 ヨナも音に気づいたようで、警戒しながら周りを見回すが、下、森の方を見ている。さすがにこんな高空に人がいるとは思っていないようだ。


 高度を下げて魔法射程に入るのを確認した。試しにテネブスを詠唱する。しかし、レジスト。うーーん。予想はしていたが、物理攻撃力、魔力に異常値を示すこの魔法ウイルス感染、弱体系魔法にも強い耐性ができてしまうようだ。


 ドルミを使わないのは、パレモ島のガーディアンと違い、ハーピィは本当の飛んでいるからよ。万一、効いたら、落ちて大怪我じゃない? いずれにしても、弱体魔法はレジスト、ガーディアン相手のようにはいかないわね。


 ヨナも私を視認したようだ。もちろん、テネブスは作為的に私を見つけさせる意味合いも含んでいる。急降下してオベロンを抜く。ヨナはいきなり強力な風属性攻撃魔法、ヴィールを撃って来た。いわゆる、かまいたち、なのだが、この威力。常人、もちろんハーピィでも、致命傷となってしまうような一撃だ。


 だが、魔法である以上、エルフの守りのある私には無効。剣で威嚇しながら距離を詰める。うん? 魔法が効かないことが不思議なのか? 何か戸惑った顔をしている。あれ? もしかして話し合える?


「ヨナ。ヨナよね。お願い、私の話を聞いて! どうして、こんなことをするの?」


 ヨナは憎悪に光る目を私に向けた。でも、私の言葉は理解している?


「俺たちは、この森、そう、全ての森の支配者だった。なのに、辺鄙な奥に閉じ込められて生活している。こんな仕打ちをした人族を俺は許さない。誇りを捨てた仲間も同罪だ!」


「貴方の気持ちは分からないではないわ。でも、人族と争って多くの犠牲を出すことと、少しの不自由で妥協すること。当然、後者が賢い選択。ハーピィ族の先立が苦難の末に作ってくれた平穏な日々。分かるでしょ?」


「うるさい! そ。そうじゃない。違う。俺は、俺は。うわわわぁぁあ」


 彼は再び錯乱状態になり、滅多やたらとヴィールを打ち込んでくる。こんな状態でも、攻撃と受けの本能は残っているようだ。私はジリジリと彼を「罠」に追い込んで行った。


 急に彼の高度が下がる。おそらくジャンの幻体を見つけたのだろう。ジャン本人は森の中? どこにいるのか全く見えない。まさに忍術の技だ。


 二人の連携。というか、私の動きを見ながら、どこにいるとも知れぬジャンが合わせてくれているという感じだ。まもなく、リベカの射程と決めてあった、杉の巨木だ。よし!


シュッ!!!!


 と音がしたように思ったが、リベカの姿もこちらからは見えない。麻酔の矢は正確にヨナの右の羽の付け根に刺さっていた。


 ヨナが急に失速し落下して行く。


バサッ!!!


 さして大きな音でもないのだろうが、静な森では反響するように聞こえる。みごとなタイミングの射撃だった。ヨナはハーピィたちがあらかじめ準備しておいた、網の上の落ちた。


「ふぅ」


 私が地上に降りると。ジャン、リベカ、ヨブが迎えてくれた。


「うまくいったようだな」


 気を失ったヨナは、ハーピィの若者たちに高手小手に縛り上げられ、運ばれて行った。


「恩にきます。本当にありがとうございました。彼が意識を取り戻すまでしばらくかかります。申し訳ありませんが、話し合いは私たちに任せてください」


「ああ、そうだな。後はあんた方に任せた方がいいだろう。だが、ギルドマスターからの指示で、今夜は泊まって行く予定だし、何か危険があったらいつでも言ってくれ」


「何から何までありがとうございます。私どもと同じ食事で物足りないとは思いますが、まずは昼食などを。こちらも申し訳ないのですが、我々の家は皆さんには小さすぎます。外にテーブルを準備させますので」


「そんなこと気にするな。ちゃんとテントは準備してるさ」


「そうや。今回はギルドマスター直々のミッション。これも私たち冒険者の仕事やからな」

 精度の高い射撃はもちろん、力加減、タイミング、どれをとっても、リベカの技は超一流だわ。ジャンの忍者技にもかなり驚いたけど。


 精度の高い射撃という意味で、精射って言葉あるかな? と調べたら、想定外のアレが出て来ちゃいました;; モノリスは「2001年宇宙の旅」ネタですが、どうしても映画版の真っ黒が印象的ですよね。それから、少しネタバレを。弱体魔法が効かないという設定は、後々、悲劇を生む要因の一つとなります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 118/118 ・おおー、普通に勝った。魔法無効は便利ですね [気になる点] ハーピィの食事はなんでしょうか [一言] やっぱり弓は地味だった。
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