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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ハーピィの里

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シャームの里

 そんな冗談を言い合っていたら、リベカが、突然、大きな声で。


「忘れてた。そうや、そうや!!」


「リベカ、どうしたの??」


「あのな。ジャン、ルナのペンダントにサインしてやってや」


 リベカは、リリスが私の葉っぱのペンダントに呪文を書いた時、他の人のサインにも魂が宿るかも? という話を覚えていてくれたのだ。


「ちょっと、部屋に戻ってペン持ってくるから」


 リベカが部屋に戻っている間。


「ねぇ。ジャン、私、結構、上達したと思うの」


「うん? 剣も魔法も、前会った時から相当なものだったが、それ以上になったと?」


「そっちはそっちで頑張ってるけどね。恋愛についてよ♪」


「げっ!」


「あのね。リベカは私の大切な友達。だから、いいわね、いい加減なことしたらコ・ロ・ス」


「うはは。これは。これは」


「でも、正直に言うと、貴方は彼女に相応しい男だと思うわ。頑張って」


「お褒めに預かり光栄ですな。ま、慌てずゆっくりと、と思ってる」


 戻ってきたリベカからペンを受けったジャンは私のペンダントに「& J」の文字を付け加えてくれた。


「うん。うん。導かれし人全員集合やないかな? これで完璧な気がするわ。きっと、コレ、すごい効果を生むに違いない」


「まぁ、身代わりペンダントなのだから、役に立つ場面が来ないことを祈りましょう」


「そら、そうや」


「よし。じゃ、明日の事について」


 ジャンから明日の「作戦」についての解説があった。ハーピィの里、自治区は、ここから山道を歩いて二時間ほど。広大な森を領地としている。「狂った」ハーピィは若い男、ヨナという名のようだ。この狂気、魔法ウイルス感染の共通点として力が尋常ではなくなり、火事場の馬鹿力というようなことだろう、魔力も異常な強さを示す。


 強い被害妄想? なんでも「こんな森の中に閉じ込められて、我らの誇りはどこへ?」というようなことを叫びながら、周りの同族を風魔法で攻撃しだしたらしい。彼ら、武器は所持しないが、風魔法の使い手が多く、攻撃魔法タイプなら、かまいたちのように相手を切り裂くことができる。


 相当数のけが人が出たらしいのだが、なんとか森の奥に追い込んだ。彼らが聖域としていた場所だ。他種族からその場を守るための結界だったようだが、今は、平和に暮らしている彼ら。閉店休業だった結界を緊急に稼働させ、ヨナを閉じ込めたのだという。


 翌朝、朝食を済ませて徒歩で登山にかかる。冒険者になった今も地道なトレーニングは欠かしていない。テントなどの重い荷物はジャンが背負ってくれていることもあるが、この程度なら息が上がることはなくなってきた。マツ、スギなどの針葉樹の森が深くなってくる。


 一時間ほど進むとハーピィ三人が迎えに来てくれていた。噂通り、身長は低い。やはり、一メートルくらいだろう。顔と腕は人のよう。背中には大きな翼があり足は鳥状で靴は履いていない。足の指は三前趾足。一本が後ろ、残り三本が前を向く一般的な鳥類の形だ。今は飛ばずに歩いている。光沢のある群青色の翼が美しい、(おさ)らしき者が進み出て。


「ジャン、すまない。いろいろと迷惑をかけるな」


「ルナさん、と、リベカさんですね。初めまして。私はハーピィの里シャームの長、ヨブと申します。この度は、当方の身勝手な願いをお聞き届けいただき、大変、感謝しております」


「ルナと申します。いえいえ。私は世界の異変に宿命付けられた者。自らの役目を果たすために来たまでです。どうかお気になさらずに」


「リベカです。私の弓でお役に立てるのかどうか不安ですが、皆さんのお気持ち、十分に理解しているつもりです」


 やっぱり、こういう時のリベカは標準語だ。


「では。村の者も準備しておりますので、早々に結界まで」


 森を一時間ほど歩くと、集落が見えてきた。これは立派だ。鳥の巣箱みたいなものを想像していたのだが、失礼した。断崖に立つ建物は円筒形の尖塔が美しい小さなお城のよう。村の家々も白い石造りだ。彼らの身長に合わせてサイズが小さいということもあり、村というより、おとぎの国の妖精城とその城下町といった風情だ。


 村の若者数名が網や縄を準備してくれていた。私たちの作戦はとてもシンプルだ。エルフの守りで結界に全く影響を受けない私が中に入り、ヨナを探す。見つけたら、ヨブにもらった笛で合図を送る。これは、犬笛のようなものだろうか、特殊な高い波長の音が出る笛で、数キロ先まで聞こえるのだという。


 一般に鳥類は人に比べて高い音は聞き取りにくいようだが、ズアオアトリのような例外もいる。ハーピィも20kHz程度の音は十分聞こえるのだろう。


 私の笛の合図を受けたら結界を解く。私は空中から、ジャンが幻体の魔法を使って地上から、ヨナをリベカの矢の射程まで追い込む。


 リベカは細身の矢を用いる。(やじり)は半球状になっており、真ん中に針を差し込む穴が開いている。ここに麻酔薬を塗った針を入れて使う、特製な矢だ。


 大怪我をしないよう羽の付け根あたりを射抜くということらしい。間違っても動脈を傷付けぬよう微妙な力加減と正確な射撃が必要だろう。

 リベカとジャン、ちょっといい感じかしら。先々どうなるのかは、内緒よ。それと、もう一つ、ネタバレしておくわ。ジャンが最後の導かれし人って、リベカが言ってるけど、違うのよ。それは、ずっと先でね。


 その人物は、後半〜外伝に向けて重要な役割を担います! 1ヶ月後くらいに登場です。


 ハーピィ族の使う魔法ですが、どうしても「かまいたち」しか思いつきません。「ダンまち3」もそうでした。ただ、この物語のハーピィは「異種族レビュアーズ」のメイドリーみたいに腕があります。ないと、いろいろ困る気がしたので。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 117/117 ・いい感じですねぇ。 ・ルナさんの「コ・ロ・ス」がすごく個性的 [気になる点] 被害妄想ってのがまた。お互い正義感で戦うのがすごい [一言] ハーピィの魔法ですかー。適当…
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