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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
ハーピィの異変

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仲間の癒し

 旅程初日の一泊は野宿となった。今回、リベカは、私に気を使い夕食は植物系のメニューにしてくれていた。自分は干し肉で動物性タンパク質を摂取するようにしたようだ。


「気を使ってもらって、ごめんね」


「いちいち、狩をせんでもええから楽やわ。豆のスープでも十分お腹にたまるし」


「久々に、ジャンと再会できるね」


「そうやなぁ〜 この(かん)、手紙のやりとりがあったわけでもなし。どうかなぁ〜。私の中では、ちょっと先の話というか。ルナみたいに運命の人、ババーーン。とは、全然違うかなぁ〜」


「何? それ? うーーん。確かに、私のは一般的な恋愛とは違うかもね」


「それは。それとして、ルナ。自分の『使命』とか、妙に思い詰めるのはやめときや。ふざけたことを言いながら、ルナはどこか、真面目に考え過ぎているように見える。言うてる冗談が、時々芝居くさい。本気で楽しんでないようにも見えるんや」


「そこまで、四角四面に考えていると、意識してはないのだけれど」


「私らの出会いは、運命的なもんやろ。導かれたというか。そやから、私に割り振られた役回りもあるはずや。何を請け負えるかは、分からんけど、分担して行こうや。私らのことを仲間やと、ホンマに思うんやったら、つまらん抱え込みはやめてや」


「ありがとうリベカ。私たちが導かれ、出会ったことも、水臭いことを言ってしまうのは、仲間とし信頼していないことになるという点も、十分に理解しているつもり。でも、じゃぁ、具体的にどうやって? となると……」


「アホやなぁ。ルナは。こうしたら、ええだけや」


 リベカは、後ろに回って私を抱きしめた。野宿でシャワーを浴びていない彼女の体は少し汗臭い。でも、ミチコに抱きしめられるのとは、また違う安心感のようなものが胸に湧き上がってきた。また、涙目になってしまったが、気づかれてはいないだろう。


 ああ、なるほど、私は考え過ぎなのだろう。仲間に求めるものって? そう、ちょっと甘えさせてもらえるだけでも、こんなに心が安らぐ。


 それから、宿に二泊、野宿で一泊して、ハーピィの森直近の村、シャルムに到着した。ここでジャンと待ち合わせる予定だ。


 村で一軒しかない宿屋は、木造二階建てのログハウスのような建物だ。中に入り、食堂を覗くと、すでにジャンは夕食を食べながら一杯始めているようだ。


「やぁ! お二人さん、お久しぶり!」


「久しぶりやなぁ〜 ちょっと待ってな」


「ああ、ごゆっくり。俺はここで飲んでるから」


 私たちはチェックインをして部屋に荷物を置き、シャワーを浴びてから食堂に向かった。夕食は卵のパスタを中心に、私は煮豆とサラダ、リベカはソーセージといったメニューだ。飲み物はリベカがエール、私は炭酸水で。すでにジャンはエールから赤ワインに切り替えているようだ。


 食事をしながら、私はジャンに。


「今回の件は、ジャンが最初に知ったと聞いたけど?」


「ああ、実は、ハーピィたちとは放浪の旅の時に知り合ったんだが、今では大切なビジネスパートナーでね」


「ビジネス?」


「ああ、このあたりで採れる珍しい山菜や木の実を仕入れさせてもらっている。俺が高く売り捌いて、彼らにとっては貴重な現金収入。ウインウインの関係さ」


「なるほど!!」


「そうしたら、いきなり、金を貸してくれと。妙だと思ったので詳しく聞いたら、結界を維持するために、風の魔導石が大量に必要なのだとか。ますます奇妙に思って、問いただしたら。実は……ということになってね」


「龍王様から聞いたけれど、あの『病気』は治療不可能だとか」


「ああ、彼らも分かってはいるさ。でも、争いを好まぬ種族である彼らのこと、問答無用で殺してしまうことだけは避けたいようなのだ。ま、できるだけ力を貸してやるしかないだろう」


「そうやなぁ〜。やれることをやるしかないなぁ」


「ああ、それはそうと、ルナ、忘れぬうちに。スターアニスって何に使うんだ?」


 私はサラトガクーラーについて説明した。


「おお、旨そうだな。ノンアルというのが少々物足りないが」


「で、リ、リベカにはこれを。魔法とは関係のないただの飾りだけどな」


「うん?」


 彼が差し出したのはディジーを象ったピアス。魔法がこもっていないと言うが、陶器と金属を組み合わせた精巧な作りのものだ。リベカの褐色の肌に白は映えるだろう。


 でも、彼に似合わない「可愛い」チョイス。必死でいつものチャラさを演じてはいるが、さすがに、微妙は動揺は隠せないようだ。アレ。この雰囲気、なんかいい感じ? 私も少しは恋愛というものを学習できたのだろうか。


「ありがとう! 早々、付けてさせてもらうわ」


 リベカは今していたゴールドのシンプルなピアスを外して付け替えた。


「うん! 似合ってる。ねぇ、ジャン、なんだか『可愛い』プレゼントじゃない。私にはスターアニスで、リベカにはコレ?」


「ルナはリクエストがあったからだろが!」

 友人と恋人というのは、担当するパートが違うというか。癒してもらえる心の部分が違う気がするわ。少ない仲間だったけど、私は、幸せ者だったのだと思う。今でも、この時の思い出があるから生きて行ける気がするもの。


 でもね。この時のジャンの微妙な狼狽ぶりは、今で笑えるわ。プレゼントのチョイスは、なかなかだと思うけどね。


 関西弁キャラ、好評なんでしょうか? 次回作でも出そう、絶対。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 116/116 ・恋人と友人って違うんですね。ふむふむ [気になる点] 関西弁っつーか、妙なパワー?ワイルドさ?を感じるんですよ。強そうで安心感あるというか…? [一言] ハーピィ書いて…
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