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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
冒険者の始まり

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ギルドの本部長

 リリスは、用もあったのだろう、明日、冒険者ギルドにてということで、夕刻、自宅に引き揚げた。さて。さて。これから本格的な夕食を作るのは手間がかかり過ぎる。手軽な何かを?


 まぁ、私が作るんじゃないんだけどね。って。みんな、私がサンドイッチくらいしか作れないのは女子力が足りないと思ってない? 実は、違うのよ。


 強過ぎる魔力、自分で言うのもなんだけど、天才的な理解力、そうかもしれない。だけど、こんな力をもってしまっては、それなりの代償、対価が必要ということ。私の体がひ弱というのもその一つ。だけど、それ以外にも弱点はある。言ってなかったけどね。


 サンドイッチくらいなら大丈夫なのだけど、複雑な調理のプロセスを覚えることができない。要は直感が働く分野については、異常ともいえる能力が発揮できるのだが、そうでないものについては、全く手が出ないということ。


 覚えられないという言い方をしたが、レシピは簡単に(そらん)じられる。だが、作るとなると、アレを忘れ、同じことを二度やってしまい、片付けもできず、となる。お菓子は、私が諳じたレシピをミチコに伝えつつ、手伝ってもらってやっと完成する。


 人族的にいえば発達障害ということになるのだが、私はエルフなのだ。何ができるのか? という点で人と大きく異なっている、と考えてもらった方がいいかもしれない。


 同様に、私に友達がいなかったということは、いろいろ特殊な私が、恐れられたという面もあるが、そもそも私のコミュニケーション能力不足という点も否めない。


 ミチコやリベカ、私の周りに集まってくれた仲間は皆、人格者で、私が変わり者である点は横に置いて、数少ない美点だけを見てくれている、ということなのだと思う。


 なので、シャアハウスの共同生活で私が分担可能な家事は、朝食の準備とお風呂掃除くらいなのではないかと思っている。という点は改めて話しておくわね。


 で、お話を戻そう。そろそろ、みんなお腹も空いたので、エドムとジャムが近所で、パンとソーセージ、私用のオイルサーディンなどを買って来てくれた。さすがに生はねぇ〜となって。炒め物くらいなら。


 片付いてはいないが、何とか使える台所。フライパンでソーセージを炒め、オイルサーディンもキャベツと炒める。……って、作ったのはジャムだけどね。まだ、テーブルがないので、しょうがない。皆で車座になって夕食とすることにした。私以外は瓶詰めのエールを飲んでいるが、気が利く兄弟、私用に炭酸水も準備してくれていた。


 疲れたし、今夜は早めに寝ることにしよう。だいたいの家具は持って来たのだが、例のベッドは、大きすぎるかなと思って置いて来てしまった。こんなに部屋が広いなら、余裕だったのだが。今夜は、床に寝袋を敷いて寝ることにしよう。


 ちなみに、ベッドの処分方法を学園長に聞きに行ったら、次の学生のため、部屋に置いておくとのこと。すわ。「百合カップル募集」かと思ったのだが、学園の新入生が徐々に減っているので、あそこは一人部屋になるらしい。




 で、翌朝、リリスの案内で、早々にギルド本部に向かう。ギルドは大きな街にある大規模なブランチを本部、小さなものは支部と呼び習わしている。


 ここ、ドルム領は面積も広く、経済的な中心地ということもあって本部が二つもある。こちらは、ミュルムバード本部。大きなギルド事務所だ。造りはRPGのそれとだいだい同じ。ミッション掲示板や受付が並んでいる。受付に名を告げると。


 「どうぞ、こちらへ」


 奥に通されてしまった。いきなり本部長のお出ましのようだ。


「お初にお目にかかります。私はミュルムバード本部の長をしております。アロンと申します。以後、お見知りおきを」


 年のころなら五十歳過ぎか、金髪に白髪が混じるが、堂々した体躯は彼が元冒険者であったことを物語っている。よく見ると彼もプラチナの認識票を下げているが、年齢からいって、既に現役は引退済みだろう。冒険者はとてもハードな職業だ。だいたい五十歳で定年ということがほとんどだろう。


 ちなみに、というか、もちろん、冒険者にも年金というものが存在する。冒険者が引退する際のランクによって、その額は異なるが、下位のランクで定年となっても、生活に困るということはないくらい支給されるわけで、プラチナランクともなれば、悠々自適。いや、豪勢な余生を送れるはずだが、彼は、長としての現役続行を選んだようだ。


 ついでに言うと、冒険者は給料制ではないが、ミッションの報酬の一部はギルドの収益となり、さらに、その一部が源泉徴収という形で、ギルドのある国への税金として納められる。


 もちろんギルド自体も法人税を納めているので、自由民の立場の冒険者もギルド自体もその国の公共サービスを享受できるようになっている、ということだ。


「はじめまして。アロン本部長様、私はルナと申します。こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」


 メンバーがそれぞれ挨拶する。冒険者としては駆け出しの私たちなのに、この待遇。ギルドマスターから何か指示が来ているのだろうか。

 そうなのよ。人という基準で考えれば「障害」という言い方になるのかもしれない。だけど、私は、人ではないの。できること、できないことは、それぞれ違うということよ。そもそも、人の間のこととしても、程度差によるだろうけど、「個性」である側面もあるわよね。


 ああ、ルナ、変わり者ではあるものの、それほどコミュ障じゃないと思いますけどね。これは当人の弁です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 102/102 ・直感力ですか。料理ができない。これにはびっくり。自分と似てます。 [気になる点] 年金かぁ。たしかに年とると一気にきつくなりそうですから。 [一言] まじでみんないい人…
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