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シュウマツの窓辺に白百合を〜異世界に「あたし最強!」で転生したのだけど、前世のヨメがいた  作者: 里井雪
卒業へのあれこれ

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伝説のロックバンド

 二人の人工妖精を加えて、さらに賑やかになった私たちだが、とうとう、卒業式の日になってしまった。


 卒業式はどの世界でもやることに大差はない。あの演奏会を別にすれば。ね♪


 学園長からの挨拶があって、卒業証明の授与があるくらい。答辞はないみたい。ホッ。卒業証明は証書ではなく、机上に飾るような写真立て大のプレートだ。一人一人名前を呼ばれて学園長から渡される。


「ルナさん。短い間でしたが、本当によく頑張ってくれました。貴女方は私たちの誇りです。冒険者としてのご活躍、期待しております」


「過分なるお言葉、ありがとうございます」


 みたいな感じで進んで行く。卒業生は五十人ほどしかいないので、通常の授業を行う教室で式は行われた。五人連れ立って教室を出た、その時。あ、ルツとナオミ?


「なんや。お二人揃って。お似合いやなぁ〜」


 いつもリベカは遠慮がない。


「いや、べ、別にお付き合いしているわけではなく」


 ちょっとルツが慌てている。「ごめんなさい」から何か心境の変化があったのだろうか?


「ルツ君と二人で、みなさんに何かをと思いまして」


 ナオミが花束を差し出した。


 私とミチコ用には百合。当然のチョイスだろう。リベカ用にはミモザ、エドムとジャム用にスイレンをアレンジしたもの。それぞれ各自を象徴する花ということだろうが、花期がそれぞれ違うはず。咲いている状態の花を光の魔導石で「もたせた」花束だろう。何気なく見えるが、とても高価なものだと思われる。


「ありがとう」


「ありがとう。百合の香りも素敵ね」


「ありがとな。私の花は押し花にできそうやから、後で、みんなに配るわ」


「ありがとうございます!」×2


 皆、口々に礼を述べる。


「いえいえ。ほんと、お世話になったっすから。僕も、冒険者になって、皆さんを追いかけますよ。引き続きよろしく願いします」


「ええ。待ってるわ。それに、ナオミ、本当に何から何までありがとう」


「いえ。そんな」


 実は、ナオミは、あの後、私たちに一つ提案してくれた。ミュルムバードで彼女の知り合いが所有していた家が空き家になっていると。少々古い物件のようだが、五人のシェアハウスにするには十分過ぎる広さで、お値段も格安だった。


 このところのミッションでの報酬、特に龍王様からはびっくりするくらいのお金を貰った。それぞれの実家からも援助があるだろうし、この程度なら買い取って、リフォームするくらいは余裕だろう。ということもあり、お言葉に甘えることにしていたのだ。


 花束贈呈サプライズもあった卒業式。そしてその夜。いよいよ演奏会。見てろ! みんな! 驚かせてやるからな!


 魔力を持つものは飲み込みも早いといったが、楽器の扱いもその例に洩れずだった。私たちの部屋にサイレント楽器を持ち込んで、ミチコが遮音魔法を使い、練習していたのだが、この数ヶ月、週に数時間練習しただけで、皆、一流のミュージシャンレベルに達していた。まぁ、前世のあるバントのコピーといえばそうなんだけど。


 で、各自への割り振りなのだが、やっぱりボーカルをやりたいなと思ったし、そこそこ慣れているので、私はリードギター。澄んだ声が美しく、琵琶の経験があるというので、ミチコは、ちと難易度高いベースに加えてボーカルも。


 打楽器経験があるリベカはドラムス。木管楽器程度の経験しかないと言われたが、エドムとジャムはキーボード連弾をお願いしたら、軽くこなしていた。


 分かるわよね? そう、ロックバンドを組んでみたわけ。曲は。なんだと思う? かなりマニアックなヤツにしてみた。「Sunshine ●f Y●ur L●ve」。ちなみにコレは著作権が存続しているぞ。はてさて、この世界でロックはただの騒音としか聞こえないのか? ってのも興味があったしね。


 でも、いい意味で、私の予想は裏切られる。魔法を持つ人は理解力もとんでもなく高いということを思い知らされた。観衆が戸惑った顔をしたのは三小節くらい。前世でロックが一般に認知されるまで、何年もの歳月が必要だったのに、この学園ではそれが数秒でなされたということだ。


 あっという間に、会場は興奮の坩堝と化した。もちろん、ミチコ親衛隊にはサイリュームを持たせておいたのだけど。ええええええ! 無意識の行動なのだろうが、ヘドバンやってる人がいたりする。驚きだ。


 私の声はハスキーだと前に言ったと思うのだけれど。だから、私はエリ●ク・クラプ●ン 。ただし、スローではない。加速の魔法を上手く使った超絶テクニックを。この魔法、こういう使い方もあるのよ!


 ミチコの澄んだソプラノは、ベースでは珍しい、ボーカル、ジャ●ク・ブル●ス……といったところだ。演奏時間の関係で一曲しか披露できなかったが、ちょっと意外な結末は、とても楽しかった。


「私らも最初は戸惑ったけど、すぐ慣れたし、すごかったな!」


「リベカのリズム感は驚きよ! ミチコのベース、ある意味、一番難しいのに弾きこなしてた。それに、エドムとジャム、似たような楽器の経験もないのに完璧。みんなすごいわ」


「確かに、リズムという概念も音階も、私の知るものとは大きく違ったけど」


「ミュルムバードでも、時々、みんなで歌いたいですね!」


「ですねぇ〜」


「そやな!」


 こうして、楽しい、人生で始めて本当の「楽しさ」を知った。長い私の生涯からすれば、刹那の眩しい光りに(まばた)きをしたような時。私の、私たちの学園生活が終わった。

 前世の国名で説明すると分かりやすいかしら、ワルト=ミモザはオーストラリア、ロータス=睡蓮はエジプトの国花なのよ。知ってた?


 ロックバンドはクリームです。マニアックなので知る人は少ないかな。何度か復活していますが、初期活動期間はわずか三年。ですが、ジャック・ブルース、エリック・クラプトンという、歴史に残る名ベーシスト&ギタリストを擁していました。


 実は三人のバンドでキーボードはいませんが、演奏には、いても大丈夫でしょう。ベース、ギター二人がボーカルというもの同じで、エリック・クラプトンは、ちょっとハスキーな歌声だったりします。


 ということで。ルナにとっては最良の日々。学園編は今回で終わり。意図した訳でないですが、ちょうど100部分でした。明日からは冒険者編となり、物語のトーンも少しずつ(最初の方は日常?かな)変わって行きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 100/100 ・100話の大台おめでとうございます。 ・そして終わってしまった学園。さてどうなる? [気になる点] 著作権〜、危険ですね。地雷には気をつけないと [一言] ルツさんが一…
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