学園の「制服」
ごめん。「制服」ってタイトルはちょっと違ったかもしれない。セーラー服がいいなぁ〜 とか。ブレザータイプの方がぁ〜 とか思ったでしょ? 前世でいう制服とは少し違うのよねぇ〜。
制服という言い方をしたが、単なる衣類ではない。RPG風にいうところの防具という位置付けだ。これもゲームと同じで、お値段により性能は上下するが、物理攻撃から身を守ってくれたり、魔法攻撃への耐性もある。
魔法学園では、実技の際に使用するものということだ。ああ、その方向で考えるのなら体操服と言った方がよかったかな? いずれにしても、それぞれ個人が持つ魔法に適した防具となるため、性能もデザインも人それぞれで制服のように統一されてはいない。
だけど。ランドセル的な入学祝いの意味もあり、高価な装備を親族がプレゼントするのが常になっている。
私は、マリアに付き添われて、街の防具屋を尋ねた。防具といっても縫って作るものではない。イメージを具現化する指輪に自らの魔力を込め衣服を作る。まぁ、前世的に言うと、魔法少女の「へ・ん・し・ん!!」といったところだ。もっとも、今の衣服を脱いで全裸になった後に装備されるものなのだが。
なに? なによ? 光消しとかないわよ。でも。いいこと、そこのド変態さんには、決して見せてあげないからね。
「これは。これは。ルナ様。今、よい指輪がございます。お嬢様の魔力は大変高いと聞いております。さぞや素晴らしい装備ができることでしょう」
私は指輪を受け取った。私の瞳の色をイメージして店主が選んだのだろうか、小さなエメラルドが嵌った指輪だ。試着室に入り服を脱いだ後。ああ、そうよ。パンツも脱がないとダメなの。
指輪を左手の中指に嵌め、私は指輪に魔力を込めた。あっ! しまった。ちょっとヤバイ!! コレ! 前世で好きだったアニメキャラのイメージが頭をよぎってしまった。
私の変身は、ううううーーー。まぁ、可愛いといえばとても可愛い。でも、考え様によってはかなりエロい。白百合色でミニ丈のサロペット型ワンピが出て来てしまった。両肩にある長方形でライトグリーンのバックルがアクセント。
前身頃と後身頃は分離しており、腰の上下にあるレモン色のリボンで繋がっている。手には肘までのグローブ、足は膝丈のブーツ。いずれもワンピと同色で肘と膝にレモン色のアクセントラインが入っている。グローブ、ブーツとも皮素材のように見えるが、何らかの魔法がかかっている。濡れても問題はないようだ。
足元はピンヒールで十センチくらいあるが、これも魔法の力で全速力で走っても転ぶことはないだろう。何のことはない。裸エプロンなわけだ。
だが、外からは見えないが、ちゃんとパンツは履いており上にはスパッツ。胸にはパット付きでストラップレスのショートビスチェが装備されている。大事なところが丸見えになることのない仕様だ。
露出の多いスタイルだが、気温調整の強力な魔法も付いていて、これ一つで、サハラ砂漠から北極まで対応できてしまうだろう。ああ、これも前世の比喩ね。
超高性能だし、コレって、冒険者になっても継続して使うよね。うわぁぁ〜。まぁ、私、エルフの血が濃いことに違いはないのだから、長期間、この衣服に違和感のない若い姿のままだろう。ま、いいかぁ〜。
前世の記憶は別として、今生の女の子としての感性では、結構気に入ってしまった。コレがどいうアイコンであるのかは、この世界の人々は知り得ないはずだし。
「あら。お嬢様、不思議な装備になりましたね。でも、とてもお似合いですよ」
とマリア。
「あああ、ちょっとね。前世の記憶の影響らしいのだけど」
「そうですか。でも、とても可愛くできていますね。ああ、これ、見たこともない留め具が」
幼いころから一緒にいたマリアだ。何の遠慮もなく肩のベルトを外したり、ビスチェの背中のファスナーを下ろして呟いている。ちなみに、装備するのは魔法少女変身的だが、普通に脱ぎ着もできる。清浄の魔法がかかっているので汚れることもないが、普段、着ているものでもない。魔法学園なら魔法実習や魔獣狩りの訓練の際、変身するというイメージだ。
今回の装備はかなり特殊なものだが、そもそも、この世界にはクリーニング店や洗濯といった概念はない。下着も含め、全ての衣装には魔法がかかっているため、着た切り雀で暮らす人も多い。
貴族ですら普段着はTPOに応じて数着程度しか所持しておらず、解れたり破れたら捨てて、新しい物を買うという感じだ。もっとも貴族やお金持ちは、とても高価な防寒機能魔法付きの衣料品を着ていることが多いのだが。
私の住むノルデンラードの中心都市モスコは、冬季では零下になる日も珍しくないが、普段着の半袖衣服でも平気で出歩けてしまうくらいだ。まぁ、冬に半袖では、体裁が悪いので、一応、コートは羽織るのが通例となってはいる。
前世の記憶になるアニメで登場キャラクターは、いつも同じ服を着ていたように思うが、アレは、こうした魔法の存在がバックにあったのだろう。なぜか、無用であるハズの洗濯物を干すシーンがが出てきたりするのは不思議だ。
いずれにしても、再び試着室で普段着、白のシンプルなワンピだ、に着替え、装備を指輪に「しまい」家路についた。お勘定はマリアが済ませてくれていた。金貨十枚という「入学祝い」にしては、かなり値が張る物ではあったが、領主の一人娘だしその程度の散財は問題ないだろう。
アニメヒロインって分かるかな? えと。私は良く知らないけど、自己紹介とか感想の返答とかに、ヒントがあるそうよ。でも、な・い・しょ。
ルナは人外の美麗ですが、まだ幼い外見というイメージです。ですので、変身装備も可愛い目。こういう物語を書いていてよく思うのですが、旅をする時、衣類どうするの? みたいな。戦闘とかで破れたりするでしょうし、ちゃんと着替えないと、臭うかも。ということを解決する「変身」です。RPGでも、装備が劣化していって修理が必要みたいなのもありますが……。




