41話 寒すぎる現場
『ヴァジュラ』
魔王に向けて切り込んだセイクリッドから赤雷が放出され、回避行動をとる魔王に向けて降り注ぐ。
奴に直撃したかと一瞬思ったが、奴の目の前に透明な氷の幕が形成され、阻まれたことに気付いた。
魔王はガードに使った氷を拳で割り、氷刃をこちらに降り注がせる。
『フリーズバース』
氷刃を打ち落とし対処すると地に落ちた氷のかけらから、地が凍え、こちらに迫って来る。
『アヴェンジグリード』
「アーツ展開中にもう一つのアーツを並列して展開するだと……!?」
こちらが目の前で行われているふざけた芸当に思わず驚きの声を上げると、獣の咆哮のような怪音を上げながら紅蓮の雷が迫って来る。
回避に移ろうとすると、自分の足に冷えた感触が伝わり、足に凍結が掛かり始めていることに気付いた。
アーツの並列展開に意識を奪われ、足元をおろそかにしていたのが悪かったようだ。
『我ここにありて、ここにあらず』
沌神の赤いオーラが体に生じると体が透化して、足の凍結をすり抜け、赤雷はこちらをすり抜けて後方に飛んでいく。
こちらを守るように自動で発動されたそれは、相手の攻撃を無力化する一方でSPを大きく消耗させた。
「ハア、ハア、ハア……」
自分の荒くなった息遣いを聞くとともに後方に下がる。
「SPを大きく消費した。回復するまで相手をしてくれると助かる」
「言わずともそのつもりです」
ハーデスは魔力で無理やり迫りくる氷刃、凍結を吹き飛ばすと距離を詰めて、魔王と五節根と拳の応酬を始める。
武神は魔王の背面から攻撃を仕掛け始め、魔王の背中から炎の腕と氷の腕が生じるのが見えた。
私はSPが回復するのを確認すると大技を叩きこむことに決めた。
青いオーラが体に生じるとセイクリッドが放電を始め、高まりを感じるとそれを打ち下ろす。
「避けろ! 『紫電雷光斬』」
こちらがそう警告すると、二人は魔王の足に一太刀入れるとその場から離脱した。
棒立ちの魔王を雷電が飲み込む。
光が晴れると魔王は全身に傷を負った姿が見えた。
だが傷はすぐに回復して、まるで考えるに値しないというように無表情な顔をこちらに向けてきた。
『シェイド・アーク」
「第二拘束を外した。陰に気をつけろ」
魔王のアーツ発動と共に武神の警告が聞こえると思うと、月光によって生じた影が不気味に振らめき始めた。




